↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《ゲームの向こうにいる君へ》 ――世界で一番強い小学生と、ゲームの中に生きる友達の話――  作者: 亀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
150/350

第百五十章 いつもと違う誘い

 日曜日。


 悠真が《クロスギア》にログインすると、KAIからメッセージが届いていた。


『今日、RIONも来る。三人で何かやらないか?』


 悠真はロビーの掲示板を確認した。


 週末の共同任務がいくつか掲載されている。


 東部岩山の設備防衛。


 北部輸送路の護衛。


 森林区域の探索。


 どれも以前に経験したことがある任務だった。


『何でもいいよ』


 悠真が返事をすると、KAIからすぐに返信が来た。


『じゃあ、今日は任務じゃなくて探索にしよう』


『探索?』


『中央市街の外側に、新しい通行区域が追加されたらしい。掲示板に案内が出てる』


 悠真は告知を開いた。


 対象は中央市街の東側にある旧工業区域。


 以前から存在していた区域だが、今回、一部の道路が通行可能になり、プレイヤーも指定された範囲まで入れるようになったらしい。


 危険度は低い。


 戦闘を目的とした任務ではなく、通行可能区域と施設の状態を確認するためのものだった。


 悠真は参加を選んだ。


 集合地点には、すでにKAIとRIONがいた。


「おはよう」


『おう』


『おはよう。今日は何を調べるんだ?』


 RIONが地図を開いた。


『この道路から入って、指定地点を三つ確認する。施設の状態と通行状況を記録すればいいらしい』


「敵は出るのかな?」


『可能性はあるみたいだけど、戦闘任務ではないから、無理に進む必要はないって書いてある』


 悠真は地図を確認した。


 旧工業区域は、中央市街から東へ伸びる道路の先にあった。


 以前は車両整備や資材運搬に使われていたらしい。


 しかし、長い間使われていなかった場所も多く、現在もすべての施設が稼働しているわけではない。


 三人は出発した。


 最初の道路は、思っていたよりも整備されていた。


 舗装面には補修の跡があり、道の端には新しい案内標識が設置されている。


 道路脇では、NPC作業員が古い資材を運び出していた。


『ここ、前からこんなに人がいたか?』


 KAIが周囲を見た。


「僕が来た時は、あまり見なかったと思う」


『区域が開放されたから、作業員も入れるようになったのかもしれないな』


 RIONが答えた。


 ただし、今回の更新で作業員が新たに配置されたのか、以前から作業していたのかは分からなかった。


 三人は最初の指定地点に到着した。


 そこには、古い輸送設備が残っていた。


 大きな荷物を移動させるための機械らしい。


 外装には傷があり、一部の部品も取り外されている。


 しかし、周辺には新しい資材が置かれ、設備の前には点検用の端末が設置されていた。


「今も使う予定があるのかな」


 悠真が尋ねた。


『点検しているなら、何かしら確認しているんだろうな』


 KAIはそう答えたが、すぐに付け加えた。


『ただ、再稼働させるのか、撤去するために調べているのかは分からない』


「そうだね」


 三人は設備の状態を記録した。


 第二地点へ向かう途中、道路が二つに分かれていた。


 左側は広い道路だが、途中に柵が設置されている。


 右側は狭く、先の様子が見えない。


 地図には右側の道路も表示されていたが、通行可能かどうかは明記されていなかった。


『右へ行ってみるか?』


 KAIが尋ねた。


「少し先まで確認して、通れなさそうなら戻ろう」


 悠真が答えると、RIONも頷いた。


『それでいいと思う。地図に載っていることと、実際に通れることは別だからな』


 三人は右側の道へ進んだ。


 しばらく進むと、道路の先に資材が積み重なっていた。


 完全に塞がれているわけではない。


 しかし、通路は狭く、向こう側へ抜けられるかどうかは確認できなかった。


 近くに作業員の姿もない。


「今日はここまでにしよう」


 悠真が言った。


『無理に通る必要もないしな』


 KAIは地図に現在地を記録した。


 三人は来た道を戻り、広い道路の入口まで戻った。


 そこには、柵の前で作業しているNPCがいた。


「この先は通れないんですか?」


 悠真が尋ねると、作業員は手を止めた。


「現在、路面と周辺設備を確認している。安全確認が終わるまでは、柵の向こうへは進めない」


「いつ頃通れるようになりますか?」


「まだ決まっていない。確認が終わってからだな」


 作業員はそれ以上の説明をしなかった。


 三人は通行できない区域として記録し、第二地点へ向かった。


 そこは小さな倉庫だった。


 入口は閉じられていたが、外側の設備に目立った損傷はない。


 壁面には古い施設番号が残っていた。


 RIONが端末を確認した。


『施設番号は記録されている。ただ、現在の用途は表示されないな』


「使われていないのかな?」


『外から見ただけじゃ分からない。中に資材が残っているかもしれないし、すでに空なのかもしれない』


 悠真は倉庫の外観を記録した。


 最後の地点は、区域の東端にある小さな広場だった。


 そこには、運搬車両が一台停車していた。


 NPC作業員が荷物を積み込み、別の作業員が端末で数量を確認している。


 道路は広く、車両の通行にも問題はなさそうだった。


 悠真たちは指定された確認を終え、任務を終了した。


【通行区域の確認:完了】


【施設状態の記録:完了】


【未確認区域:あり】


【評価:A】


 ロビーへ戻ると、RIONが記録を見直していた。


『今日の範囲だけでも、使われている場所と、まだ確認中の場所が分かれたな』


「うん。でも、使われていないように見える場所も、実際には何かの作業をしているかもしれない」


『そうだな。外から見ただけでは、用途までは分からない』


 KAIは地図を閉じた。


『また通れる場所が増えたら、見に来てもいいな』


「そうだね」


 三人は別れる前に、次に一緒に遊べる日を確認した。


 KAIは明日、少し遅い時間ならログインできるらしい。


 RIONは学校の課題があるため、まだ分からないと言った。


 予定は決まらなかったが、三人とも急いで決める必要はないと思っていた。


 悠真はログアウトした。


 現実の部屋では、母親が洗濯物を取り込んでいた。


「今日は友達と遊んでいたの?」


「うん。ゲームの中で、前からあった区域を調べてきたんだ」


「新しい場所だったの?」


「区域自体は前からあったみたい。でも、通れる道路が増えたらしいよ」


「そうなんだ。何か見つかった?」


「古い設備や倉庫があった。まだ使っているのかどうか、分からない場所もあったけど」


 母親は洗濯物を畳みながら答えた。


「使っているかどうかは、見ただけでは分からないこともあるのね」


「うん。調べている途中の場所もあったよ」


 悠真は自分の机を片づけた。


 ゲームの世界では、以前から存在していた場所でも、通れる範囲が変われば見えるものが変わる。


 そこに何があるのか。


 誰が使っているのか。


 何のために残されているのか。


 すぐには分からないこともある。


 それでも、実際に行って確認すれば、少なくとも今の状態は記録できる。


 悠真は明日の予定を考えた。


 KAIとは遊べるかもしれない。


 RIONはまだ分からない。


 もし二人が来られなくても、一人でできる任務はある。


 その時に、やりたいことを選べばいい。


 悠真は机の上に置いていた本を開いた。


 ゲームの中で確認できる場所が増えていく一方、現実の生活にも、明日やることが残っている。


 今日はその続きを、少しずつ進めていくつもりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。