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《ゲームの向こうにいる君へ》 ――世界で一番強い小学生と、ゲームの中に生きる友達の話――  作者: 亀


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112/341

第112章 攻略された場所

水曜日の放課後。


悠真は宿題を終えてから、《クロスギア》に接続した。


ロビーを開くと、昨日参加を見送った高難度防衛任務の表示が目に入った。


【任務名:南部動力施設防衛】

【任務状態:攻略済み】

【最終評価:S】

【記録更新:本日】


悠真は詳細を開いた。


複数のプレイヤーが参加し、動力施設と補助電源設備を守り切ったらしい。攻略記録には、敵の出現位置や攻撃の傾向、参加者の役割分担が掲載されていた。


「もう終わっていたんだ」


少しだけ残念だった。


昨日は時間を考えて参加しなかった。今日なら挑戦できると思っていたが、任務はすでに攻略されている。


もっとも、攻略済みになったからといって、任務そのものが消えたわけではない。通常の再挑戦が可能になるかどうかは、別の条件によって決まる。


悠真は再挑戦の表示を確認した。


【再挑戦:可能】

【報酬:初回攻略報酬を除き通常報酬】

【記録:個人別に保存】


「なるほど。初回報酬はなくても、普通に遊べるんだ」


悠真は攻略記録を読み始めた。


⸻


攻略したチームは、最初から全員で敵を攻撃する方法を取っていなかった。


前半は施設の防衛を優先し、補助電源設備の近くに敵が集まったときだけ、攻撃役が移動して対応している。


敵の耐久値を削ることよりも、施設が破壊されないようにすることを重視した戦い方だった。


悠真は記録を読み終え、KAIに連絡した。


【YUMA:昨日の動力施設防衛、攻略されていたよ】

【KAI:見た。S評価らしいな】

【YUMA:再挑戦はできるみたい。やってみる?】

【KAI:いいぞ。攻略記録があるなら、実際に試してみよう】


RIONにも声をかけると、参加できるという返事が届いた。


三人は募集に参加し、必要人数が集まるまでロビーで待機した。


やがて、別のプレイヤーが二人加わり、任務が開始された。


⸻


南部動力施設の内部には、複数の設備が並んでいた。


中央の動力施設と、その周囲に設置された補助電源設備。


任務開始と同時に、敵の出現地点と防衛対象が表示された。


【主目標:動力施設を防衛】

【副目標:補助電源設備を維持】

【制限時間:45分】


攻略記録を読んでいた悠真は、最初の敵が現れたとき、すぐには攻撃しなかった。


敵は正面から施設へ進んでくる。


KAIが前方へ出て、敵の注意を引きつけた。


RIONは後方から射撃し、悠真は施設の状態を確認する。


ところが、最初の波が終わる前に、別の方向から小型の敵が現れた。


「右側にも出た!」


別のプレイヤーが叫んだ。


悠真は中央の敵を攻撃しようとしていたが、すぐに動きを止めた。


KAIが前方を押さえている。RIONも射撃を続けている。


ここで自分まで正面へ出る必要はない。


「右側を見てくる。施設の近くに入られる前に止めよう」


悠真は側面へ移動し、小型の敵を迎え撃った。


敵を倒し終えるころ、正面の敵も処理されていた。


【第一波:撃退】

【動力施設:損傷軽微】

【補助電源設備:正常】


「今のところ、順調だな」


KAIが言った。


悠真は攻略記録を思い出した。


敵を倒すことだけに集中せず、施設へ向かう敵を優先して止める。


単純なようで、戦闘中に判断し続ける必要があった。


⸻


第二波では、敵の数が増えた。


正面から進む大型機械獣に加え、遠距離から施設を狙う敵も現れた。


RIONが遠距離攻撃を仕掛けたが、大型機械獣の動きに阻まれ、射線が通らなくなった。


「大型が邪魔で、奥を狙えない!」


悠真は周囲を確認した。


大型を正面から押し返すには時間がかかる。しかし、遠距離の敵を放置すれば、補助電源設備が攻撃され続ける。


「KAI、大型を少しだけ右へ誘導できる?」


【KAI:やってみる】


KAIは大型機械獣の攻撃を受け止めながら、施設から離れる方向へ移動した。


大型が動いたことで、RIONの射線が開いた。


RIONは遠距離の敵を攻撃し、悠真も別の角度から援護する。


大型機械獣がKAIを追いかけたため、悠真は攻撃の隙を見て合流し、二人で撃退した。


【第二波:撃退】

【動力施設:損傷あり】

【補助電源設備:正常】


しかし、動力施設には少しずつ損傷が蓄積していた。


「このままだと、最後まで持つか分からないな」


KAIが言った。


悠真は施設の耐久値と、残り時間を確認した。


まだ余裕はある。


ただし、同じ戦い方を続ければいいとは限らなかった。


⸻


第三波が始まる前、チームは短い確認を行った。


一人のプレイヤーが、施設の損傷を抑えるため、敵をもっと早く倒すべきだと提案した。


別のプレイヤーは、防衛対象から離れすぎない方がいいと主張した。


どちらにも理由があった。


悠真は攻略記録を開き、敵の出現位置を確認した。


「次の波で遠距離の敵が出るなら、先にそっちを止めたい。でも、全員が移動すると大型が施設に近づくかもしれない」


RIONが答えた。


「僕が遠距離の敵を狙う。KAIは大型を引きつけて、悠真は状況を見ながら援護してくれる?」


「分かった」


チームは役割を決め、第三波に備えた。


敵が出現すると、予想どおり、遠距離の敵が後方に現れた。


RIONが射撃を始める。


KAIは大型の進路を施設から逸らし、悠真は側面から接近する小型の敵を迎え撃った。


すべてが予定どおりに進んだわけではない。


大型が急に方向を変え、KAIが一度押し戻される場面もあった。


しかし、悠真たちは互いの位置を確認しながら対応した。


最後の敵が倒れたとき、動力施設の耐久値は残っていた。


【第三波:撃退】

【動力施設:防衛成功】

【補助電源設備:維持】


その後も、チームは施設の状態を確認しながら戦闘を続けた。


制限時間が終了すると、任務完了の通知が表示された。


【任務完了】

【主目標:達成】

【副目標:達成】

【最終評価:A】


⸻


ロビーへ戻ると、KAIが記録を確認した。


「攻略記録を読んでいたから、もっと簡単にいくと思ったんだけどな」


「相手の動きが完全に同じとは限らないからね」


悠真は今回の戦闘記録を開いた。


攻略済みの任務でも、敵の出現位置や動きが毎回完全に同じとは限らない。さらに、参加するプレイヤーの装備や判断も異なる。


今回のチームは施設を守り切ったが、動力施設には損傷が残り、初回攻略チームと同じS評価には届かなかった。


「でも、攻略記録は役に立ったよ。何を守るべきか、先に考えられたから」


RIONが言った。


「うん。全部をそのまま真似するんじゃなくて、状況に合わせて使うんだね」


悠真は記録を保存した。


昨日、任務に参加しなかったことは、今日の挑戦を妨げなかった。


初回攻略報酬は得られなかったが、任務そのものは残っていた。


そして、一度攻略された場所であっても、自分たちが同じ結果を出せるとは限らなかった。


⸻


その後、三人はロビーで少し休憩した。


KAIは別の戦闘任務を探し、RIONは装備の調整を始めた。


悠真はランキングを確認した。


順位に変化はなかった。


一位のKAIは近接戦闘で安定した記録を残し、二位のRIONは遠距離戦闘で高い成果を維持している。


悠真は二人と違う任務にも参加し、さまざまな状況を経験していた。


自分に足りないものが何なのか、まだ明確に説明できるわけではない。


ただ、今回の任務では、攻略記録を読むことと、実際の戦場で判断することが別だと感じた。


「次は、別の任務もやってみようかな」


悠真が言うと、KAIは頷いた。


「やりたいものを選べばいい。全部を同じように攻略する必要はないだろ」


三人はそれぞれ、次に参加する任務を探し始めた。


⸻


運営側では、南部動力施設防衛の再挑戦記録が保存されていた。


初回攻略チームはS評価を獲得していたが、悠真たちのチームはA評価だった。


悠真は攻略記録を参照し、敵の出現位置と施設の損傷状況を確認しながら戦闘していた。


一方、実際の戦闘では、敵の移動や味方の配置に応じて、当初の予定を変更している。


攻略済みの任務に参加したことと、攻略済みの手順をそのまま再現したことは、同じではなかった。


旧設備管理路の進捗に、新しい通知はなかった。


現地の補強作業は、引き続き準備段階にある。


⸻


夜、悠真は母親に今日の任務について話した。


「昨日参加しなかった高難度任務、今日やってみたよ。もう攻略されていたけどね」


「それでも、遊べたの?」


「うん。再挑戦はできた。でも、最初に攻略した人たちと同じ評価にはならなかった」


「どうして?」


「敵の動きも違うし、参加する人たちも違うから。攻略記録を読んでも、実際に同じようにできるとは限らないんだ」


母親は頷いた。


「前に誰かがうまくできた方法でも、自分が同じ結果を出せるとは限らないのね」


「そう。でも、記録があると、何を考えればいいか分かりやすくなるよ」


母親は夕食の準備をしながら言った。


「それなら、記録を参考にしながら、自分で考えることも必要なのね」


「うん。今日はそれが少し分かった気がする」


悠真は翌日の準備を済ませた。


攻略された任務は、もう新しいものではない。


それでも、参加する人が違えば、戦い方も結果も変わる。


同じ場所に戻っても、同じ経験になるとは限らない。


悠真は端末を充電器につなぎ、明日の予定を確認した。


明日はまた、別の任務を選ぶことになるだろう。

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