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《ゲームの向こうにいる君へ》 ――世界で一番強い小学生と、ゲームの中に生きる友達の話――  作者: 亀


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第110章 休むことも選択肢

月曜日の朝、悠真はいつもより少し早く目を覚ました。


週末にゲームを長く遊んだせいか、まだ少し眠気が残っている。


朝食を済ませ、学校へ行く準備をしていると、母親が声をかけた。


「昨日は楽しそうだったけど、夜はちゃんと眠れた?」


「うん。でも、少しだけ眠いかも」


「今日は学校があるんだから、帰ってきたら先に宿題を済ませて、疲れていたら早めに休みなさいね」


「分かった」


悠真は鞄を持ち、家を出た。


学校では、週末の出来事を思い返すこともあったが、授業中はノートを取り、先生の話を聞いた。休み時間には友達と話し、昼休みには外で少し体を動かした。


午後の授業が終わるころには、朝の眠気はだいぶ薄れていた。


それでも、帰宅すると、いつもより体が重く感じられた。


悠真は机に向かい、宿題を始めた。


途中で一度休憩を挟み、残りを終わらせる。


それから、母親に声をかけた。


「宿題は終わったよ。今日は少しだけゲームをしてもいい?」


母親は悠真の顔を見た。


「自分では、まだ遊べそうだと思う?」


「少しなら大丈夫だと思う。でも、長くはやらないよ」


「分かったわ。眠くなったら、途中でもやめるのよ」


「うん」


悠真は端末を起動した。


⸻


《クロスギア》のロビーには、平日の午後らしい人数のプレイヤーが集まっていた。


悠真は任務掲示板を開いた。


高難度任務や長時間の探索依頼も表示されていたが、今日は短時間で終わる任務を選ぶことにした。


【任務:整備拠点の部品確認】

【内容:交換部品の数量照合および搬送】

【推奨人数:二名】

【想定時間:短時間】


KAIに連絡すると、すぐに返事が届いた。


【KAI:参加できる。今日は何をするんだ?】


【YUMA:部品の確認と搬送。短い任務にしようと思う】


【KAI:了解】


二人は編成を組み、整備拠点へ向かった。


⸻


整備拠点では、NPCの整備担当者が交換部品を整理していた。


「今回の任務では、指定された部品を確認して、隣の保管区画へ運んでほしい。似た形の部品があるから、番号をよく確認してくれ」


悠真は表示された一覧を開いた。


部品にはそれぞれ番号が付いている。外見が似ていても、取り付ける機体や用途が異なるものがあった。


KAIが部品を運び、悠真が番号と保管場所を確認する。


最初の数点は問題なく進んだ。


ところが、最後の箱を開けたとき、一覧に記された番号と、部品本体の刻印が一致しなかった。


「これ、違う番号が付いている」


悠真が言った。


KAIは箱の中を確認した。


「別の部品が混ざっているのか?」


「まだ分からない。箱の表示が間違っている可能性もあるよ」


二人は箱をそのままにして、整備担当者へ報告した。


担当者は刻印を調べ、別の記録と照合した。


「これは部品そのものが違うわけではない。保管場所を変更した際に、箱の表示が更新されていなかったようだ」


担当者は新しい表示を用意し、部品の番号と保管先を修正した。


「確認してくれて助かった。間違った場所へ運んでいたら、次に必要になったときに探すことになっていた」


悠真は頷いた。


「外側の表示だけじゃなくて、部品そのものも確認してよかったです」


すべての部品を指定された区画へ運び終えると、任務完了の通知が表示された。


【部品照合:完了】

【搬送:完了】

【任務評価:A】


⸻


ロビーへ戻ると、KAIが別の任務を探し始めた。


【KAI:もう一つくらい行けそうか?】


悠真は少し考えた。


画面には、短い討伐任務も表示されている。


普段なら、もう一つくらい参加していただろう。


しかし、今日は学校から帰ったときから、いつもより疲れていた。


【YUMA:今日はここまでにするよ。少し眠いし】


【KAI:分かった。また明日な】


【YUMA:うん。またね】


悠真はログアウトした。


端末を終了すると、部屋の中が静かになった。


もう少し遊びたい気持ちが、まったくなかったわけではない。


ただ、今日はここで終わりにしてもいいと思った。


⸻


運営側では、悠真の接続記録が更新されていた。


【接続:開始】

【任務参加:1】

【任務完了:1】

【接続時間:短時間】

【終了理由:通常ログアウト】


今回の記録には、特別な異常はなかった。


任務を一つ完了し、プレイヤーは自分の判断でログアウトした。


運営側は、接続時間だけでなく、任務の種類や直近の接続履歴も保存していた。


ただし、今回のログアウトが疲労によるものか、単に遊ぶ予定が終わったためなのか、記録だけで断定することはできなかった。


⸻


悠真は水を飲み、少し休んでから、明日の学校の準備を確認した。


母親が部屋を覗いた。


「もう終わったの?」


「うん。今日は一つだけ任務をやって、終わりにしたよ」


「もっと遊びたくならなかった?」


「少しはね。でも、今日は眠かったから」


母親は頷いた。


「自分で終わりにできたなら、それでいいと思うわ」


悠真は椅子から立ち上がった。


「明日は、元気だったらまた遊ぶよ」


「そうね。明日のことは、明日の体調を見て決めればいいわ」


夕食のあと、悠真は翌日の持ち物を準備し、いつもより少し早く布団に入った。


⸻


翌日。


悠真は普段どおりに起き、朝食を済ませた。


前日の眠気はほとんど残っていなかった。


学校から帰り、宿題を終えたあと、《クロスギア》のロビーを開く。


KAIからメッセージが届いていた。


【KAI:今日はどうする?】


悠真は任務掲示板を見ながら返事をした。


【YUMA:今日は普通に遊べそう。何か一緒にやろう】


昨日は一つの任務だけで終わった。


今日は、もう少し遊べそうだった。


それだけの違いだった。


ゲームを続けることも、途中で休むことも、悠真にとっては同じように自分で選べる行動の一つになりつつあった。


悠真は新しい任務の詳細を開いた。

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