↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《ゲームの向こうにいる君へ》 ――世界で一番強い小学生と、ゲームの中に生きる友達の話――  作者: 亀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
101/341

第101章 週末の選択

土曜日の朝。


悠真が《クロスギア》に接続すると、ロビーのオンライン人数は平日より増えていた。


週末になり、しばらくログインしていなかったプレイヤーも戻ってきているらしい。掲示板には、ランキング戦の募集だけでなく、探索任務や装備研究の参加者を募る書き込みも並んでいた。


悠真は昨日の試合記録をもう一度確認した。


中央の目標地点を離れ、KAIを援護した場面。


あのときの選択が間違いだったと、今でも断定はできない。だが、援護したあとに中央を取り返す手順まで考えていなかったことは、次に改善できる部分だった。


悠真は記録を閉じた。


今日は同じ失敗を避けるために、別の動きも試してみよう。


【YUMA:今日はランキング戦をもう一度やろう。その前に、少し探索任務をしたい】


【KAI:昨日の続きか】


【RION:いいね。まずは普通の任務で調子を確認しよう】


三人は探索任務の一覧を開いた。


⸻


今回の任務は、北側の旧市街にある倉庫群の調査だった。


長い間使われていなかった倉庫の一部で、保管設備が正常に動作していないという。プレイヤーの目的は、指定された倉庫を巡回し、異常のある設備を記録することだった。


「また古い設備か」


KAIが任務説明を読みながら言った。


「でも、こっちは別の地域だよ。前に調べた通信設備や管理路とは関係ないみたい」


悠真は地図を確認した。


任務には、設備の修理も復旧も含まれていない。異常を見つけて記録することが主な目的だった。


三人は倉庫群へ向かった。


建物の内部には、古い搬送装置や保管棚が残されていた。動いている装置もあれば、停止したままのものもある。


最初の倉庫では、搬送装置の警告灯が点滅していた。


悠真が近づくと、端末に情報が表示された。


【設備状態:動作不安定】

【異常内容:搬送位置のずれ】

【対応:記録を保存し、管理班へ報告】


「これ、直せそうじゃない?」


KAIが装置を見た。


「動いてはいるけど、位置がずれているんだよね。ここで勝手に調整すると、ほかの部分まで変わるかもしれない」


悠真は任務内容を確認した。


今回求められているのは、設備の修理ではなく異常の記録だ。


三人は表示された情報を保存し、次の倉庫へ進んだ。


二つ目の倉庫では、保管棚の一部が空になっていた。


【保管記録:一部欠損】

【現物確認:可能】

【移動履歴:未確認】


「何かがなくなっているみたいだね」


RIONが棚を調べた。


しかし、現物がないことだけでは、盗難なのか、別の場所へ移されたのか、それとも記録が更新されていないだけなのかは分からない。


悠真は、確認できた内容だけを記録した。


【確認事項:指定棚に物品なし】

【原因:不明】


「これなら、少なくとも分かっていることと、分かっていないことは分けられるね」


「そうだな」


KAIが答えた。


三人は残りの倉庫も巡回し、すべての記録を管理班へ送信した。


【探索任務:完了】

【記録項目:達成】

【任務評価:A】


大きな発見はなかった。


それでも、設備の異常と物品の欠落を、原因まで決めつけずに報告することはできた。


⸻


ロビーへ戻った悠真たちは、ランキング戦に参加した。


今回の対戦相手は、前回とは異なるチームだった。


試合開始後、相手は三人で一気に中央へ進まず、一人が目標地点を狙い、残り二人が左右から味方の動きを制限してきた。


悠真は昨日の試合を思い出した。


目標地点を守ることと、味方を援護すること。


どちらか一方だけを考えていては、相手の動きに対応できない。


「KAI、中央を維持して。RIONは右側の敵を見てくれ。俺は左の動きを確認する」


三人は役割を分けた。


悠真は左側の敵が前へ出た瞬間に攻撃を仕掛けたが、相手はすぐに後退した。


昨日なら、そのまま追いかけていたかもしれない。


しかし、悠真は敵の後方を確認した。


もう一人が遮蔽物の向こうに待機している。


追撃すれば、二人に挟まれる可能性があった。


悠真は追わず、中央へ戻った。


その間に、KAIが目標地点を守り、RIONが右側の敵を牽制した。


相手は攻めるタイミングを失い、いったん後方へ下がった。


「今なら前へ出られる!」


悠真たちは三人で進み、目標地点を確保した。


しかし、相手も簡単には崩れなかった。


終盤には中央を奪い返され、ポイント差が縮まった。


悠真は焦って敵を追わず、KAIとRIONの位置を確認した。三人が合流してから攻撃を仕掛け、相手の防御を崩した。


制限時間終了。


【試合結果:勝利】

【目標地点の確保:成功】

【チーム連携:良好】


「勝てたね」


RIONが言った。


悠真はリザルト画面を見た。


昨日と今日では、相手の動きも試合の状況も違っていた。


だから、昨日の失敗をそのまま当てはめることはできない。


ただ、敵を追うかどうかを決める前に、味方の位置と目標地点の状態を確認する。その習慣は、今日の試合でも役に立った。


「昨日よりは、少し考えられた気がする」


悠真が言うと、KAIは笑った。


「なら、次はまた別の問題が出てくるな」


「うん。たぶんね」


悠真は勝利記録を保存した。


一度勝ったからといって、すべての状況に対応できるようになったわけではない。


それでも、昨日と同じところで迷うだけではなくなっていた。


⸻


昼過ぎ、悠真は旧設備管理路の情報を確認した。


表示には、昨日までと異なる通知が追加されていた。


【旧設備管理路・東側区画】

【補強範囲:算定完了】

【必要資材:確認済み】

【資材手配:一部確保】

【搬入予定:調整中】

【作業開始:未定】


「一部だけ、確保できたんだ」


悠真はKAIとRIONに連絡し、現地へ向かった。


入口では、補修班の作業員が新しい搬入計画を確認していた。


「資材が少し集まったんですね」


悠真が尋ねると、責任者は頷いた。


「補強に使う資材の一部は確保できた。ただし、残りがそろうまで、どこから作業を始めるかはまだ決められない」


「先に確保できた資材は、どうするんですか?」


「保管場所へ移す。必要なときにすぐ使えるよう、種類ごとに分けておく」


作業員たちは、搬入済みの資材を保管区画へ運び始めていた。


悠真たちは、資材を置くための区画が整理されていることを確認した。


だが、通路の奥へ続く封鎖線は、そのままだった。


「少しずつ進んではいるんだね」


RIONが言った。


「でも、まだ作業を始められるとは限らない」


悠真は頷いた。


資材が一部届いたことは、確かな進展だった。


しかし、残りの資材がいつそろうのか、補修をどこから始めるのか、作業が何日かかるのかは、まだ決まっていない。


三人は、搬入作業の邪魔にならないように現地を離れた。


⸻


運営側では、旧設備管理路の資材確保状況が更新されていた。


【補修資材:一部確保】

【保管処理:開始】

【不足資材:調整中】

【通路開放:未定】


別の記録では、倉庫群の探索任務で報告された設備異常と保管記録の欠落が、管理班へ引き継がれていた。


いずれも、それぞれの任務で発生した記録として処理されている。


旧設備管理路の調査については、通信設備との関連を示す新しい情報は確認されなかった。


⸻


夕方、悠真はゲームからログアウトした。


母親は、夕食の準備をしながら尋ねた。


「今日はどうだった?」


「ランキング戦で勝ったよ。昨日と似た状況もあったけど、今日は敵を追いかける前に、味方の位置を確認したんだ」


「昨日のことが役に立ったのね」


「うん。でも、相手が違えば、同じやり方で勝てるとは限らないと思う」


母親は微笑んだ。


「一度うまくいったことを、どこでもそのまま使えるわけじゃないものね」


悠真は頷いた。


「だから、前に覚えたことを使いながら、今の状況も見るんだと思う」


夕食のあと、悠真は少しだけ明日の予定を確認した。


旧設備管理路では、補修資材の一部が確保された。


倉庫群では、異常の記録が管理班へ引き継がれた。


ランキング戦では、昨日とは違う選択が結果につながった。


それぞれの出来事に、すぐに大きな答えが出たわけではない。


それでも、世界のあちこちで、誰かが次の作業を進めていた。


悠真は端末を片づけた。


明日もログインするかどうかは、朝になってから決めればいい。


今日は、今日できることをやった。


それで十分だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。