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9話 世界一位。


 9話 世界一位。


 その日の夜。

 自室のベッドに寝転がりながら、僕は天井を見上げていた。


 今日一日の出来事を思い返す余裕もない。

 身体は痛いし、精神的にも色々と疲れていた。


 そんな中、不意に僕の体を奪った蝉原が何かを呟いた。

 

「――自己鑑定――」


 次の瞬間、視界の端に淡い光のようなものが浮かび上がる。

 何かを確認するように、蝉原はしばらく黙り込んだ。


(え、なにしてるの? なんで光ったの? え、え?)


「脆弱な君の中で色々と頑張った結果、ちょっとだけ魔力が戻った。大した魔法は使えないけれどね」


(ま……まほう……? え、蝉原って、魔法使いなの?)


「魔法なんて技術の一つだよ。キャッチボールやドリブルと変わらない。才能の差はあれど、理屈を理解して適切に鍛えれば誰でも扱える」


(そ、そうなんだ……)


 そう言われても全然納得できない。

 けれど、蝉原は本気で言っているっぽい。


 そこで僕は、ふと考える。

 今の時点でも蝉原は十分に化け物だ。

 常識外れの力を持っている。


 そんな男が、まだ本調子ではないという。


(さっき、ちょっとだけ戻ったって言っていたけど……本来の君は……その……今より、もっとえぐい感じなの?)


 すでに誰も勝てないと確信できるほどの怪物。

 これ以上強くなるなど、正直想像したくない。


「どうだろうね、ふふ」


 蝉原は笑った。

 いつものように。


 結局のところ、僕は蝉原のことを何も知らない。


(君は本当に……何者なの?)


「ただのヤクザさ。宇宙一になりたかったけれど、そんなものはどうでもよくなるぐらい……たくさん負け続けてきた、ただの弱いヤクザ」


(……君が負けることなんて……ないだろ?)


 僕には信じられなかった。

 蝉原は最強だ。

 それは絶対に間違いない。


 この男が負ける姿なんて想像できない。


「世の中、上には上がいるものさ」


 その言葉だけは、妙に実感がこもっていた。

 冗談でも自慢でもない。

 本当にそう思っている声だった。


「負け続けてきたからこそ……少しは強くなれた。敗北の記録は俺の誇りさ」


 どこか少しだよ……

 ぶっちぎりの最強としか思えないけど……


(……あ、ところで、自己鑑定の結果はどうだったの? 名前から察するに、ステータスオープン的なことだよね?)


「結果を簡単に言うと……君という男が、間違いなく、この世で一番弱い人間だということがわかったよ」


(……い、いやいや、確かに強くはないよ。けど、一番じゃなくない?)


 さすがにナンバーワンではないと思う。

 世の中には僕より弱い人だっているはずだ。

 世界は広いんだから。


「君より弱い人間はすでに自殺してこの世にいない。そう考えるとどうだい?」


(あー……いや、まあ、そう言われると、まあ、そのぉ……)


 言葉に詰まる。


 僕は本気で自殺するつもりだった。

 蝉原が現れなければ、間違いなく死んでいた。


 それだけは断言できる。

 だから、

 ――僕より弱い人間は、みんな先に死んでいる。


 そんな理屈を言われると、

 なんとも言い返せなかった。


【自己鑑定結果】


 名前:蝉原勇吾

 種族:人間ヤクザ

 レベル:1

 

 HP:18/18

 MP:3/6

 

 筋力:3

 耐久:3

 敏捷:5

 魔力:3

 知性:E(A)

 悪意:F(S)

 根性:G(SS)

 IT:F(A)

 商才:F(A)

 戦力:F(極SS)

 心理:F(A)

 話術:F(A)

 人望:E(B)

 謀略:G(極SS)

 悪運:超SS(C)


 称号:『世界最弱のいじめられっ子』『宇宙一のヤクザ』

 魔法:『自己鑑定』

 スペシャル:『気弱』『威圧覇気』


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― 新着の感想 ―
第9話、蝉原最高に熱かったです! 最強に見える彼が「たくさん負け続けてきた」と語るシーンの静けさに、ゾクッとさせられました。
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