21話 朝の習慣。
21話 朝の習慣。
翌朝、蝉原は、施設の周囲を走っていた。
実は、憑りつかれて以降、毎朝、走っている。
初日は2キロでバテていた体も、今では10キロぐらい平気で走れるようになっている。
山道を、淡々と。
華やかさも派手さもない。
ただ、黙々と、足を動かし続けている蝉原。
僕の身体の細胞がどんどん入れ替わっていく。
一昨日よりも昨日。
昨日よりも今日。
毎日、僕の肉が、より優れたタンパク質になっていく。
ちなみに、凪が横についている。
一緒に走りたいという要求を蝉原が飲んだ。
……滝本は、施設の入り口近くに腰かけて、蝉原をずっと見ていた。
蝉原が朝起きて、ランニングのための準備をしている間からずっと。
セフィアさん?
言うまでもなく、滝本の隣に立っているよ。
彼女が僕を見つめないわけがないだろう。
ナメないでもらいたいね。
★
――走り終えて戻ってきた蝉原。
凪は少し息を切らしながらも、余裕で最後まで付いてきた。
元バスケ選手の肺活量は流石。
そこで、滝本は持っていたものを蝉原に差し出す。
「はい、タオル。あと、アクエリ」
蝉原はタオルとペットボトルを受け取りながら、
「ずっと俺を監視しているその感じ……ストーカーじみてきたね」
「変なこと言わないでくれる? 彼氏の朝練を見るのは彼女にとって普通だから」
「彼女ねぇ」
肯定も否定もせず、蝉原はアクエリのキャップを開けた。
ごくごくと飲む。
朝の光が横から差し込んでいた。
滝本も凪も、蝉原の横顔から目を離せない様子。
ちなみに蝉原がストーカーという単語を口にした際、
僕は、セフィアさんの反応を確認したのだけど、微動だにしていなかった。
もしかしたら、『自身になじみ深い単語』に反応してピクっとするかなぁ、と思ったけど、プロはやはり格が違うらしい。
蝉原は途中で、凪に向けて、
「飲むかい?」
とそう言いながらアクエリを差し出す。
「めめ滅相も――」
と、遠慮する彼女に、
「命令だ。飲め」
腹の底に響くような重低音でそう言った。
どうやって、僕の声帯でそんな渋い声を出せるんだ。
「ひゃ、ひゃい!」
勢いよく返事をすると、そのまま、ごくごくと飲み干した。
真っ赤になって慌てている凪を尻目に、
滝本が、呆れ口調で、
「蝉原……あんたってさ」
「なにかな?」
「人のことを好きになったりするの?」
「するよ、もちろん」
「へぇ」
滝本は少し意外そうな顔をした。
「どういうのがタイプ? 美人系? 可愛い系? それとも、案外優しい系とか? 人って、自分とは真反対の人種を好きになるっていうから――」
「俺を殺せる系」
「……」
一瞬、滝本の顔が止まった。
鳩が豆鉄砲を食ったような顔。
凪も、目を見開いて蝉原を見ている。
「いい顔だね」
蝉原は笑った。
「そういう顔を、俺は愛している」
「……変態じゃない」
「ヤクザってのはだいたい変態だよ」
蝉原はタオルを肩にかけて、施設の中へ歩き出した。
そんな蝉原を、滝本と凪はうっとりしたような顔で見つめている。
すごい状況だ……
ちなみに、セフィアさんは、さっきのビビッドな様子を、ずっとガン見していた。
そして、今も蝉原の後ろについてきている。
僕はもう、いつ、彼女が切れて、包丁をふりまわしてもおかしくないと思ってひやひやしている。
【自己鑑定結果】
名前:蝉原勇吾
種族:人間
レベル:1
HP:30/30
MP:10/10
筋力:7
耐久:6
敏捷:8
魔力:7
知性:D(A)
悪意:E(S)
根性:E(SS)
IT:F(A)
商才:F(A)
戦力:F(極SS)
心理:E(A)
話術:E(A)
人望:D(B)
謀略:G(極SS)
悪運:超SS(C)
称号:『元いじめられっ子』『宇宙一のヤクザ』
魔法:『自己鑑定』『カンファレンスコール』『霊体回収』
スペシャル:『皇気』
『威圧覇気』




