17話 悪魔の成長日記。
17話 悪魔の成長日記。
その夜、自室のベッドに寝転がっていると、不意に蝉原が身体を奪った。
といっても、何か特別なことをしたわけじゃない。
ただ、天井を見上げたまま、静かに言った。
「魂魄処理機構へのアクセスに成功……」
(……何言ってんの?)
「理解しなくていいよ。俺も別に詳しいわけじゃないからね。スマホの仕組みは知らなくても、みんなアプリを使えるだろう? それと一緒さ」
蝉原はそう言いながら、右手をゆっくりと持ち上げた。
「とにかく、これでレベルを上げられるようになった。……ただし、人を殺して命を回収しないと経験値は稼げないけどね」
(……うわぁ)
あまりにも物騒すぎる発言。
まさか、ここから人狩りを始めたりしないよね……
いや、流石にそんなことしないか……
仮にしそうになったらストップをかければいいだけだし。
(しかし、レベルってリアルで普通にあるんだね。ゲームの中だけの概念だと思ってた。……ちなみに、僕って何レベル?)
「もちろん1だよ。凄まじい弱さだ。初めて会った時も言ったけど……敬服に値する脆弱さ」
(……褒めてもらえて、とてもうれしいよ)
「いい感じの嫌味が言えるようになってきたね」
(ずっと蝉原の側にいたから)
僕の言葉に、蝉原は笑った。
楽しんでもらえてうれしいよ。
蝉原はおもむろに起き上がり、机の前に座った。
夜の静けさの中で、右手をゆっくりと開く。
「……カンファレンスコール」
そうつぶやいた次の瞬間、手のひらの上に、小さな黒い球が一つ、ぽつんと現れた。
(え……なに、それ)
「魔法だよ。神秘的だろう?」
(神秘的っていうか……邪悪な感じかな)
蝉原は球を眺めながら、
「本来は無数の黒い球を出現させて、その一つ一つから不規則な高火力レーザーを放つ魔法なんだけどね。……今の俺には、これが限界らしい」
そう言いながら、球に意識を集中させる。
しばらくして、細い光の線が、球の表面からぴっと伸びた。
壁に当たる。
レーザーポインターくらいの、頼りない赤い線。
当たった箇所だけが、じわりと黒く焦げた。
煙も出ない。
音もない。
壁に、小さな黒いシミが残るだけ。
「……ふふ」
蝉原は笑った。
いつものニヤリとした笑みじゃなく、もう少し力の抜けた、自嘲に近い笑い方だった。
「泣けてくるね」
(ハンカチ貸そうか?)
「いい嫌味だ。グっとくるね」
黒い球は、しばらくして静かに消えた。
蝉原は右手をぱたりと膝に下ろす。
部屋の中が、また、ただの夜に戻る。
(でも、これって……すごいことだよね。魔法が使えるって)
「こんなカスみたいな魔法じゃ、虫も殺せないよ」
(それでも、ゼロよりはましじゃない?)
「……ゼロの方がマシなことだってあるさ」
【自己鑑定結果】
名前:蝉原勇吾
種族:人間
レベル:1
HP:27/27
MP:0/9
筋力:5
耐久:5
敏捷:7
魔力:7
知性:D(A)
悪意:E(S)
根性:F(SS)
IT:F(A)
商才:F(A)
戦力:F(極SS)
心理:E(A)
話術:E(A)
人望:D(B)
謀略:G(極SS)
悪運:超SS(C)
称号:『元いじめられっ子』『宇宙一のヤクザ』
魔法:『自己鑑定』『カンファレンスコール』『霊体回収』
スペシャル:『皇気』
『威圧覇気』




