16+話 レディースチームリーダー。
16+話 レディースチームリーダー。
総会が終わり、人の波が引いていく廊下。
蝉原は心の奥に引っ込んで、今は僕が主導権を握っている。
さぁ帰ろうか、と歩いていると、背後から声がかかった。
「お疲れ様です! 総長!」
振り返ると、小柄な女の子が深々と頭を下げていた。
茶髪のボブ。
服の上からでも分かる、スポーツや武道で鍛え抜かれた体。
童顔だけど、目だけが妙に鋭い。
セフィアさんほどじゃないけど、彼女も胸部になかなかのものをお持ち。
彼女の後ろには、20人ぐらいの気合いの入ったレディースが並んでいる。
「えっと、君は……確か……」
顔は見た事あるけど、名前は思い出せない。
蝉原の配下はたくさんいるから……
(蝉原……彼女、誰だっけ)
(朱鷺野凪。レディースチーム羅虎のリーダー。で、後ろに並んでいる20人は彼女のチームのメンバー。全員の名前を教えようか?)
(ぃ、いや、いいよ)
よく覚えていられるよね。
蝉原はシンプルに頭がいい……
「あなたは、たしか……朱鷺野さん……だよね」
「はい! 名前と顔を覚えていただき光栄です!」
凪は顔を上げ、嬉しそうに目を輝かせた。
(トップに立つ者としての当然の素養だからね)
「と、トップに立つ者としての当然の素養だからね」
蝉原の言葉をそのまま口にした。
凪はますます感動した顔になる。
「ああ! 総長は本当に完璧です! あなた様こそ至高!」
凪は熱のこもった目でまっすぐ僕を見ている。
「そりゃ、どうも……」
「特に、時折、今のように温厚になられるところが最高です! ただ怖いだけではなく、温かみのある仏のような優しさで皆を包み込もうとする!」
仏のような優しさ……本当に、バイアスというのは凄いな……
ただヘタレなだけの僕を、温厚で優しいと表現するなんて……
アバタもエクボという慣用句はよく聞くけど……
僕なんて、蝉原と比較すれば『人格的にまだまとも』というだけなのに……
「あなた様は理想の王です! 強く賢く暖かい! あなた様は、あなた様であるというだけで、既にパーフェクト!!」
凪は深々ともう一度頭を下げた。
純粋な崇拝。
そのしょうもない勘違いに呆れていると、
彼女は、熱っぽい、とろけるような目で僕を見て、
「ボク、中学までは死ぬ気でバスケをやっていました。でも身長が伸びなくて……運命を呪って……グレて不良になりました……」
いきなり身の上話を聞かされてもなぁ……
相談事は総会の時にしてくれないかな……
「色々なものを恨みましたけど……でも、良かった。おかげで総長に出会えた! あなた様こそボクの運命!」
「はい……そうっすか。はい、おっけーでーす」
言うまでもなく、蝉原はバチクソモテるし、配下たちから死ぬほど崇拝されている。
だから、こうしてファンアピールされることも多い。
正直、いちいち付き合ってられない。
「総長! ボク、総長のためなら命を張れます! いつでも命令してください! 本当になんでもしますから! 『警視総監を殺してこい』って命令にだって従いますよ!」
僕を何だと思っているんだ……と言いたいところだけど、
蝉原なら、『それが必要』となれば、躊躇なくやりそうとも思ってしまう……
ただ、もし反社が警視総監を殺したりしたら……
警察は怒り狂って、日本中の反社を駆逐するような気がする……
「総長! お気をつけて!」
深々と頭を下げた凪は、次の瞬間、
顔をバっとあげて、別人のように表情を切り替えた。
さっきまでのとろけるような目が消えて、鋭い光が戻ってくる。
「いくよ、あんたら!」
「「「イエス、マム!!」」」
返事と同時に、20人が一糸乱れず動き出した。
彼女のチームメンバーはみんな『ルールなんてクソくらえ』みたいな顔をしているのに、軍隊より統率が取れている。
そんな彼女たちを尻目に、僕は帰路についた。
あー、しんど……




