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15話 コミュニティ総会。


 15話 コミュニティ総会。


 ディアブロコミュニティの定例集会は、毎週金曜日の夜に行われる。

 元は暴走族やチンピラの寄り合いだった組織だが、今では規模が違った。

 正式構成員は千名を超えている。

 言うまでもなく、その千名は、それぞれが自分の縄張りや舎弟を抱えている顔役ばかり。


 現状、僕の号令一つで動く人数は、すでに万の単位へ到達している。


 名のあるチンピラの大半は傘下に下った。

 レディースチームも吸収済み。

 現在、構成員の一割ほどは女性。

 蝉原いわく、組織に女性がいるとよく回る、とのこと。


 そんな巨大組織の本部は、郊外にある大型商業施設だった。

 数年前に経営破綻したショッピングモールを、

 ディアブロコミュニティが丸ごと買い取ったのである。

 総額12億。

 今の僕らにとっては大した額じゃない。


 広大な駐車場。

 吹き抜けの中央ホール。

 営業を終えたフードコート。

 今では、その全てがディアブロコミュニティの縄張りだった。

 一階は表向きの事業を行う企業区画。

 二階は構成員たちの活動拠点。

 三階は幹部専用フロア。

 そして、かつて映画館だった巨大シアターホールが、総会会場として利用されている。


 皮肉なことに、かつてヒーロー映画をたくさん上映していた場所が、

 今では『悪党たちが未来を語るための場所』になっていた。


 そのステージ中央に置かれた椅子に、僕……『蝉原』はゆったりと腰を下ろしていた。

 膝の上には黒い子猫。

 ――幽霊猫のアベル。


「蝉原……その猫は?」


 隣にいる愛羅が尋ねた。

 色々あって、現在、彼女は、レディース部門のまとめ役を担っている。


 蝉原はアベルの喉を撫でながら、


「ドンには猫が良く似合う。そう思わないか?」


「?」


「まったくピンときていないね。……映画は見ないのかな?」


「……そんなものを見ている時間はなかった。ガキの頃からずっと、朝から晩まで稽古していたから」


「最後に見た映画は?」


「5歳ぐらいの時に見たアンパ〇マンの映画」


「……悪党やるなら最低限の教養も必要だよ。ただのバカには何もできない」


「あたしは、ただのバカじゃないし、生きる上での最低限の教養は持っている」


 愛羅はムっとした顔でそう言った。


 ちなみに幽霊猫アベルは本来、一般人には見えない。

 現状は、魔力を込めて実体化させているから見えているだけ。

 蝉原にとっては魔力訓練の一環。

 同時にアベルを育てるための餌でもあった。


 蝉原の膝の上でアベルは満足そうに、


「にゃ」


 と鳴いた。

 かわいい。


 ★


 集会の後半。


 ディアブロコミュニティ恒例の時間が始まる。

 配下が願いを口にし、

 蝉原がそれを裁定する。

 代わりに絶対の忠誠を誓わせる。

 そんな儀式だった。


 最初に前へ出てきた男は、


「妹がホストに騙されているんです」


 そう言って頭を下げた。


「惚れ切っていて、俺が何を言っても聞きやしない。助けてください総長」


「色恋か」


 蝉原は露骨に嫌そうな顔をして、


「吐くほど面倒だな」


「どうか……どうか、お願いします!」


「まあいいだろう。あの店は龍星会のシマだ。話はすぐにつく」


「ありがとうございます!」


 男は泣きそうな顔で頭を下げた。

 家族がホス狂って……まあ、確かに嫌だね……想像するだけでゾっとするレベル。


 ――そのまま間を置かず、次の男が前へ出る。


「うちのヘッドが事故りまして」


「ほう」


「バイクレースで大ケガを。義手や義眼が必要なんですが金が足りなくて……」


「いくらだ?」


「200万ほどです」


「500万出そう」


「……え?」


「どうせなら良いものを買ってやれ」


「そ、総長……!」


 男は感極まったように膝をついた。


 隣にいる愛羅が、


「金遣いが荒いな。トップに立つ人間は金銭感覚も丁寧であるべきでは?」


「分かっていないな、愛羅。……あいつのチームはヘッドふくめて全部で23人。俺はたった500万で23人分の人生(労働力)を買ったんだ。恐ろしくお買い得じゃないか?」


 最近、蝉原のモノの考え方というのが、ちょっとだけ分かってきた。

 悪党の親玉のくせに、蝉原は『人』を大事にする。

 こんなことを言ったら蝉原は怒るだろうから、直接は言わないけど……蝉原は、そこらの政治家なんかより、よっぽど『民』のことを考えていると思う。



 ――その後も願いは続いた。


 借金問題。

 シノギ問題。

 縄張り問題。


 蝉原は次々と裁定していく。

 素早く、的確に、最善を。


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