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オフステージ(惣堀高校演劇部)  作者: 大橋むつお
151/156

151・シカゴを離れる

REオフステージ (惣堀高校演劇部)


151・シカゴを離れる ミリー 




 お葬式まで居りたかったけど、前夜式の明くる朝にはシカゴを後にした。


 前夜式いうのは日本でいうお通夜。


 さすがに式を取り仕切ったのはクラークのお父さんやったけども、クラークも助祭として立派に役目を果たしてた。


 遺品の整理とかはお葬式が終わってからやねんけど、一足先に日本に帰るわたしのためにミチコさんは一つの写真をくれた。


「ああ、これ……!?」


 それは、生まれて間もないわたしを抱いて笑顔いっぱいのお婆ちゃんの写真。


「身内やご近所で赤ちゃんが生まれると抱っこさせてもらうのが楽しみだったのよ」


 フレームの下には、わたしの生まれた二日後の日付。


「病院から戻って来るのを待ち受けてね、家の前で撮ったのよ」


 お婆ちゃんとの写真は、家にもお婆ちゃんとこにもいっぱいあるけど、これを見るのは初めてや。


 

 その写真を膝に置いて飛行機に乗ってる。



 正面のモニターには遠ざかるシカゴの街、背景には子供のころから馴染んだミシガン湖が朝日を照り返して輝いてる。


 小学校のころ、お婆ちゃんは『キャンディーキャンディー』のコミックを貸してくれた。キャンディス・ホワイトいう孤児の女の子が成長していくビルドゥングスロマン。そのキャンディーがいた孤児院がミシガン湖の畔にあるという設定で、キャンディーと同じツィンテールにしてお婆ちゃんと湖の畔を歩いた。めちゃめちゃええストーリーやねんけど、日本に来て知ってる子ぉはおらへんかった。


「あ、オレ知ってるで!」


 啓介は、お母さんの愛読書やったいうのんで覚えとった。


「え、ほんま!? もっぺん読みたいわぁ、貸してもらわれへん!?」


「あ、ごめん、前のオカンのやから(^_^;)」


「え、あ、ごめん……」


 啓介の家庭事情を知った瞬間やった。


 もう、この街に戻ってくることは無い。


 うちの家も空港まで送ってくれた伯父さんもテキサスに引っ越してしまう。


 前夜式に来た人も何人かはシカゴを離れる予定やという。


 こんど戻ってくるときはテキサス。


 シカゴよりはうんと安全なんやろうけど、南部訛の母国語は大阪弁よりも遠い言葉や。


 ……もうこのまま日本に住み着こうか。


 惣堀を卒業したら留学ビザが切れてしまう。


「大学の留学も調べておくよ」


 車の中で伯父さんが言ってくれた。


 でも、大学へいっても最大四年や。


 いずれは日本で異邦人になってしまう。


 いっそ、日本に帰化する……言うほど簡単なことやない。


 なんか仕事を見つけて……わたしになにが出来んのやろかぁ?


 

――だれか、ええ人はおらんのんかいな――



 お婆ちゃんの言葉が蘇る。


――え、あ、それは……――


 あの時、頭に浮かんだのは啓介……あかんあかん、なんちゅう短絡!


 飛行機が水平飛行になって、そのまま寝てしもた。





☆彡 主な登場人物とあれこれ


小山内啓介       演劇部部長

沢村千歳        車いすの一年生  

沢村留美        千歳の姉

ミリー         交換留学生 渡辺家に下宿

松井須磨        停学6年目の留年生 甲府の旧家にルーツがある

瀬戸内美春       生徒会副会長

ミッキー・ドナルド   サンフランシスコの高校生

シンディ―       サンフランシスコの高校生

生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口 織田信中 伊藤香里菜

先生たち        姫ちゃん 八重桜(敷島) 松平(生徒会顧問) 朝倉美乃梨(須磨の元同級生) 大久保(生指部長)

惣堀商店街       ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘)

 

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