第4話 シドラ湾に置き忘れたもの
第4話 シドラ湾に置き忘れたもの
東地中海を進んでいた米艦隊は、スエズ運河を目の前にして針路を変えた。揚陸強襲艦も巡洋艦も駆逐艦も、救援用の物資を積んだままリビア沖へ戻る。司令部はナポリにあり、旗艦も指揮通信を維持していたが、海上の実動部隊のほとんどが同じ方向へ向きを変えた。
「日本の救援は?」
若い士官が問いかけると、隣の士官は命令文を示した。航空基地、レーダーサイト。新しい攻撃目標の欄にはその2語が並んでいた。
英国とスペインが戦力提供を見送ったため、米国は空母を含む追加戦力まで地中海へ投入していた。太平洋側では自国民も被災し、日本からも救援要請が続いている。その現実を知ったまま、軍は出された命令を準備しなければならなかった。
空母の飛行甲板では、搭載機の牽引が行われていた。カタパルト要員が配置につき、機関科では蒸気の供給系統を確認していた。攻撃命令の受領から間もなく、機関科の警報盤に異常が出た。
一次冷却系の漏えい。最初の報告を処理しきらないうちに、別の原子炉でも同じ異常が出た。
「配管です。亀裂が確認されました」
「どちらの炉だ」
「両方です」
艦の原子炉はすべて、安全確保のため停止へ向かった。通常は互いに独立しているはずの系統で同時に起きた事故に、担当者は原因を推測できなかった。しかも、一次系から漏れた冷却材が二次側へ移行した兆候があり、蒸気設備をそのまま使うことは許されなかった。
飛行甲板には、整然と並んだままの艦載機が残った。蒸気カタパルトが使用できず、攻撃隊は発艦できない。やがて艦そのものの推進も維持できなくなった。
艦長が受け取ったのは、作戦継続の是非を問う余裕のない報告書だった。原子炉の冷却は維持する。安全状態を監視する。曳航を手配する。冷却に必要な補助電源と人員は艦内に残し、危険な作業を無理に進めない。
「フランスの港へ入れませんか」
「汚染の可能性がある原子力艦です。本国の受け入れ施設と調整します」
戦闘中に受けた被害ではなかった。燃料も弾薬も残っている。ところが、空母としての仕事は何一つできなくなった。
曳航計画を立てる者は、大西洋の海図を広げた。救難曳船だけでなく、揚陸強襲艦などにも航空支援、補給、医療、曳航の補助が割り当てられた。救援へ向かうはずだった艦が、故障した自国の空母を本国へ戻すために使われる。
「航海の目的を書いてください」
当直士官が尋ねた。
艦長は長い間、書類を見つめた。
「帰港だ。曳航による帰港」
後方で、海面に太い曳航索が沈んだ。空母はゆっくりと西を向いた。艦載機が飛ぶはずだった空を、何も飛ばなかった。
*
原子炉の状態を監視する技術要員が、故障した全系統の状況を繰り返し報告した。艦隊の揚陸艦や支援艦も救援任務から外れ、曳航する空母の安全確保に割り当てられた。救助を待っているのは日本にもハワイにもいた。新しい命令が、救助に使えたはずの艦艇の時間を奪っていた。
米空母の曳航が始まったころ、米海軍の後方支援部門には膨大な手続きが押し寄せていた。原子炉を搭載した大型艦は、故障した貨物船のように最寄りの港へ入れれば済むものではない。艦の安全状態を維持する人員と電力の供給、航海中の連絡、受け入れ施設の準備、海象予報の更新を続ける必要がある。
空母にいた若い航空士官は、自分の飛行記録を整理した。今回の航海で予定していた出撃は、すべて白紙になった。
「帰国したら、飛べますか」
整備担当者は答えに迷った。
「別の航空部隊へ移れば飛べるでしょう。少なくともこの艦からは、当分、無理です」
航空士官は窓の外を見た。曳航のために艦の動きは遅く、海面の同じ模様が長い時間、視界を横切った。
「日本に行くはずだったんですよね、私たちは」
整備担当者はうなずいた。
「日本にも、ハワイにも、行き先はいくらでもあった」
どちらも、艦をリビア沖へ戻す判断をした人物ではなかった。自分に与えられた仕事だけをしている。それでも、もう行けなくなった場所のことは覚えていた。
*
フランスの本土では、参戦できない英国とスペインに対する苛立ちが増していた。空軍機は本国の基地から発進できる。海軍には原子力空母シャルル・ド・ゴールがある。自国だけでも主導権を維持できると、政治家は考えた。
トゥーロンから出港したシャルル・ド・ゴールでは、2基の原子炉について、予定された起動試験の応答が設計・製造記録と一致しなかった。運転員は安全を確認できる条件が揃わないため運転を認めず、燃料仕様に関する重大な疑義を報告した。原子炉を正常に使用できないまま、艦は航空作戦の続行を断念した。
燃料の製造記録に記された値と、実際の燃料の特性が一致しない。調査では、製造記録から外れた濃縮度2〜2.5%程度の燃料が混在していたことが分かった。運転員は、この燃料構成について設計上の安全余裕を保証できなかった。
「制御棒をさらに動かす許可は出せません」
当直責任者は落ち着いて述べた。数値を見ながら臨界まで進めることが可能か、という議論をする段階ではない。仕様から外れた炉心で、必要な安全余裕が証明できていないのだった。
結局、原子炉の運転は認められなかった。空母は作戦を断念し、トゥーロンへの帰投を決めた。
燃料の問題がどこで生じたのか、艦内には分からなかった。製造施設で働いた技術者の中には、以前からリビアの情報組織に協力している者がいた。原子炉用燃料の製造に関する身元審査は、その人物を見抜けなかった。フランス海軍はまだ、その事実を知らなかった。
帰投のために飛行甲板の整理が進んでいたとき、短い異音がした。
甲板上の航空機からロケット弾が誤発射された。次の瞬間、火と黒煙が上がる。燃料を積んだ機体のそばへ火が走り、兵装を積んだ区画にも延焼した。
「消火班を前へ」
最初の命令はそうだった。しかし、爆発が重なり、熱と破片で接近経路が失われた。消火管にも損傷が出る。航空燃料と弾薬が燃え始めれば、艦内の人間が耐えられる場所は限られてくる。
艦長は全艦の状況を確認した。原子炉は正常に使えない。艦には帰港するための問題がすでに山積している。いま無理に消火班を送り込めば、艦を救える見込みも立たないまま人を失う。
「総員退艦。随伴艦は乗員の収容をお願いします」
無線は同じ命令を繰り返した。救命艇が降ろされ、近くの艦艇が人を拾った。艦内の消防員も退避した。人が離れたのを確認してから、随伴艦は距離を取って外部から放水した。
炎は下がらなかった。艦載機の燃料が燃え、弾薬の爆発で飛行甲板の形が変わっていく。夜の海に、炎だけが艦の輪郭を描いた。
しばらくして、船体が傾き始めた。シャルル・ド・ゴールは、リビアが長く自国の海だと主張してきたシドラ湾の北緯32度30分の線より南、いわゆる「死の線」の内側で沈んだ。
随伴艦の艦橋では、測位担当者が沈没位置を繰り返し読み上げた。艦長は数字を記録させ、救助された乗員の人数を確認した。
ニュースがフランスに届いたとき、最初に報じられたのは乗組員の救助だった。沈没位置が公表されると、リビア政府からはすぐに声明が出た。
*
シャルル・ド・ゴールが沈んだ夜、フランスの艦隊司令部では、犠牲者数の報告が何度も修正された。艦載機、弾薬、原子炉、海上への流出物。別々の担当部署が、同じ事故について異なる表を作った。
海上で乗組員を拾い上げた艦長は、部下に命じて全員の名前を照合させた。最初の名簿には同じ名前が2回載っていた。まだ確認できない人もいる。救命艇と艦載ヘリの積載記録を見直し、夜明けまで集計を続けた。
救助された整備兵は、毛布にくるまり、甲板の端に座っていた。彼の手には煤がつき、洗ってもすぐには落ちなかった。
「艦は助けられたと思いますか」
聞かれた医務官は、しばらく返事を選んだ。
「君はここにいる。今はそれを確認しよう」
整備兵は、まだ海の向こうに炎があったころのことを思い出した。最初は消せると思った。次の爆発で、その考えは変わった。何人かの消防員が戻ろうとしたが、指揮官はもう艦内へ入るなと言った。彼らは命令に従った。
地中海で任務を続けていた別のフランス艦では、艦内放送が沈没を告げた。乗組員は整列し、黙って聞いた。誰も、原子力空母が数日前まで無事にトゥーロンを出たという事実を理解しきれなかった。
翌日、サルベージと環境調査の連絡窓口を決める会議が始まった。フランス海軍は艦を失い、外交当局はリビア政府から『引き揚げて持ち帰れ』と告げられた。技術担当者には、どう引き揚げるかを検討する仕事だけが残った。
*
カダフィーは演壇へ出て、用意された原稿を机に置いた。ライスは隣の席にいたが、発言は夫に任せた。
「フランス政府へ申し上げます。空母の乗員が救助されたことは、まず喜ばしい。負傷者の治療に必要ならリビアも協力する」
少し間を置いた。
「そして、サルベージ作業は直ちに許可する。必要な船と人員を派遣し、沈んだ空母を引き揚げて持ち帰っていただきたい」
記者席でペンが動いた。
「稼働させていた原子炉と核燃料を積む艦を、人の国の海へ沈めて放置するな。私はリビアの海を、フランス海軍の原子力艦艇の置き場所にした覚えはない」
「撤去期限は設けますか」と記者。
「フランスも大きな艦を失った。準備には時間が要るだろう。こちらから期限は切らない。ただし、引き揚げの費用はフランスが持つ」
「リビア政府が作業を妨害する可能性は」
「今、許可すると言った。記者は私の話を聞いていなかったのか」
ライスは目元を伏せた。笑いをこらえているのが、夫には分かっていた。
声明を聞いたイタリアの外務当局者は、地図の北側を指でたたいた。
「うちは、すぐ近くなんですけどね」
マルタも、チュニジアも、エジプトも、放射性物質の海洋環境への影響を懸念した。各国はフランスに対し、作業計画の提出と期限を切った撤去を要求した。中国政府もリビアの声明を支持し、事故の責任はフランスにあるとする文書を発表した。
ロンドンの新聞は、英国海軍が持てなかった原子力空母をフランスが海底に置いてしまった、と皮肉った。英国政府は表向き同情を示し、海軍関係者の私的なコメントだけが新聞をにぎわせた。
フランス政府は、撤去期限を設けなかったカダフィーの声明を繰り返し読み返した。いちばん近い国だけが、待つと言っている。しかし、あとの国々が待ってくれない。
ライスは夜の書斎で夫に尋ねた。
「本当に期限を切らないの?」
「重い船だ。急げと言って浮くものではない」
「ほかの国は急げと言っているわ」
「私が頼んだ覚えはない」
「頼まなくても言ってくれる、という顔ね」
カダフィーは少し笑った。
「私はサルベージの許可を出した。それ以上のことはフランスの仕事だ」
彼女は新聞を閉じた。夫はこうして、最も強い交渉材料を、握りしめたまま静かに置いておくことがある。
*
沈没から数日後、フランスの海軍省では、サルベージの責任をどこが持つかという会議が続いていた。まず沈没地点の環境調査を行い、艦内に残るものを把握し、船体をどう扱うか決めなければならない。報告書には潜水作業、専門の引き揚げ船、放射性物質の監視、周辺海域での航行制限が並んだ。政治家は費用の総額を知りたがったが、技術者はまだ計算を始めるための調査条件が足りないと答えた。
「リビアは何と言っているのですか」
外務省の担当者が議事録をめくった。
「サルベージは許可する。期限は設けない。艦と核燃料を引き揚げてフランスへ持ち帰ること。言葉は多少荒いですが、条件はむしろ簡潔です。難しいのは、近隣諸国が求めている期限にどう答えるかです」
技術担当の将校は、自分たちの準備が整う前に期限だけ約束しても、引き揚げ作業は早くならないと話した。外交担当者は頷いたが、リビアと周辺国から求められる環境監視には直ちに協力すべきだと言った。誰もが、地中海の海底へ沈んだ原子力空母が翌朝には消えてくれないことを知っていた。
一方、リビアの外務当局へは、イタリア、チュニジア、エジプト、マルタから次々に連絡が来ていた。近い国ほど、海水と漁業への影響を心配する。カダフィーはリビアの担当省庁に、イタリア、チュニジア、エジプト、マルタへ各国の環境監視要望を出すよう命じた。調査船が安全に近づくための通航手続きも整え、フランスから作業計画が届き次第、同時に周辺国へ渡すことを決めた。フランスへの撤去期限は、設定しなかった。
ライスはその様子を見ていた。夫は、フランスを困らせることそのものより、フランスが自分で責任を引き受けざるを得ない状況を作る方が得意だった。今度の件でも、期限を切らないという一見穏やかな判断が、交渉の余地を広げていた。
「フランスに時間を与えるのね。あなたが期限を切れば、相手はその期限が短すぎると言って交渉を始められる。でも今は、周辺国それぞれの要求を説明しなければならない」
「私は原子力空母を欲しがっているわけではない。あんな大きな船を海底に抱えておくのは迷惑だ。彼らが自国へ持って帰るなら、作業の邪魔をする理由がない。それにフランスには、これから私と別の話もしてもらうことになる。こちらから出口を全部塞ぐ必要はない」
ライスは、その別の話が何かをすぐ尋ねなかった。フランスがリビアで進めている航空機整備契約と、将来の産業協力を彼がどう扱うか、まだ判断が固まっていないのだろう。彼女はまず、海洋環境調査へリビアの技術者を参加させる書類に署名した。
*
フランスはそれでも、本国から航空機を飛ばした。空母を失い、中国大使館の被害について説明を求められても、作戦の中止を口にしたくない者がいた。
攻撃機はフランスの航空基地を離陸した。地中海上で空中給油を受け、リビアの目標へ進む予定だった。ところが、給油機のエンジンから破裂音が響いた。タービンブレードが粉砕し、破片はエンジン周囲の構造を破って胴体にまで損傷を広げた。機体は姿勢を保てたものの、長距離飛行の継続は危険だった。
機長は給油を中止し、最寄りで安全に着陸できる滑走路を探した。地中海の向こう側にはリビアの空軍基地があった。
「着陸を許可願います。エンジンを損傷しています」
リビア側の管制官は無線で機体の状態を確認し、滑走路を空けた。攻撃しようとしていた国の基地へ、フランス軍の空中給油機が緊急着陸した。
同行していた攻撃機は、予定していた給油を受けられなかった。攻撃を続ければ帰路の燃料が足りない。編隊長は任務を中止し、帰投を命じた。
機体から降りたフランス軍乗員には、リビア軍の医療担当者が水と椅子を用意した。身分を確認し、負傷がないことを確かめ、武装を預かった。尋問の前に医療を受けさせたことで、現場では必要以上の緊張が生じなかった。
翌日、カダフィーの声明が流れた。
「今度は壊れた飛行機を棄てていったぞ。乗員は返すから取りに来い。機体もな。」
フランス側は、乗員の早期帰国と機体の回収を申し入れた。リビアは応じた。機体を没収するつもりも、乗員を交渉材料として閉じ込めるつもりもなかった。ただ、滑走路を塞ぐ大きな故障機は、早く片づけたい。
そこでウクライナが協力を申し出た。アントノフAn-225『ムリーヤ』を使えば、通常の輸送機では運べない大きな荷物を運べる。
機体にはタービンブレードによる破孔があり、元どおり飛ばすための解体整備を現地で行う価値は乏しかった。空中給油機なので、翼と胴体には燃料配管や燃料タンクが広がっている。リビア側は燃料と可燃性蒸気の危険を考え、管理された水中の作業区画で、グラインダーを使って切断する方法を選んだ。切断した主翼は長い部材として胴体に添わせ、搬送用ベルトでまとめる。尾翼も積載寸法に合わせた処置が必要だった。
作業の様子を見たウクライナの技術者は、記録用紙を片手に首を傾げた。
「フランスは、これを修理するのですか」
「それはフランスに聞いてください。われわれの仕事は、持ち帰れる形にすることです」
作業場には油を含む水とスラッジが残った。リビアの石油産業では、油田や製油所の排水、タンク底部の油泥を処理する設備と経験がある。作業で発生した廃液も回収され、油水分離と廃棄物処理の工程へ送られた。
ムリーヤの機首が持ち上がり、巨大な貨物室への積載準備が始まった。フランス軍機の残骸は、空中給油機らしい優美な翼の形を失っていた。機体を見送りに来たリビア軍将校は、手帳に『回収完了』と記した。
「また来ますかね、フランス軍は」
若い整備員が言った。
将校は飛行場の端を見た。救援物資を積んだリビアの輸送機が、その少し先で出発準備をしている。
「今度は無事な機体で来てほしいな。空港も修理工場も、そう暇ではない」
やがてAn-225は重い貨物を抱えて滑走し、地中海の上へ上がっていった。
*
中国の情報機関による報復は、兵器ではなかった。各国の通信社へ、同じ日の同じ時刻に資料が送られた。
米国のCIA関係者とフランス側当局者が交わしたとされる命令書。石油権益と介入後の契約を議論する会議の映像。会話の録音と、その場にいた者の証言。大量破壊兵器の存在を裏付ける証拠がないと評価していた内部文書も含まれていた。
中国は、文書の出所だけを秘密にした。公開した資料には日時と会議参加者、相互に照合できる記録が付いていた。記者は文書を読み、別の記者が録音を聞き、各社の技術者が映像の編集痕を調べた。
この時間線の米仏政府が公には住民保護を訴えながら、内部では石油利権を優先していたことを示す資料だった。史実の事件を説明する文書ではなく、この歴史で実際に交わされた命令と会話である。
スーザン・ライスは、ニューヨークで公開資料を読んだ。会議で自分が述べた言葉まで、別の文書と並べて引用されている。秘書が報道各社からの質問を渡した。
「どこまで否定しますか」
「住民保護の必要性は変わりません」
「石油契約の文書については」
「確認中です」
彼女は電話を取った。相手が誰であっても、これまでと同じ強い口調で話そうとした。しかし、今度は相手が質問を終えるまで待たなければならなかった。
フロリダのコンドリーザも資料を読んでいた。彼女は自分が以前勤めた政府の文書様式を知っている。文書の形式だけで真偽を決めつけず、署名欄と配布先、会議記録の時刻を照合した。資料の一部には彼女の知らない名前があり、知っている名前もあった。
「どう思う」とカダフィー。
「これだけ揃うと、否定する側が説明しなければならないわ」
「中国はよい仕事をした」
「中国大使館を壊されたからよ。あなたのために動いたわけではないの」
「理由は問わない。結果がよければよい」
ライスは夫を見た。
「そう言うと思った。でも、この先の交渉は私にも任せて。あなたが喜びすぎると、また別の戦いを始めるでしょう」
彼は笑った。彼女が書類を整理する間、珍しく口を挟まなかった。
翌朝、イタリア、チュニジア、エジプト、マルタからの共同協議の申し入れが届いた。海底の原子力空母の撤去計画について、フランス政府から説明を受けたいという。リビアは立ち会いを申し出た。カダフィーは日付を決めるよう外交当局へ指示し、フランス側には会議の席を用意しておいた。




