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「恋人のフリだけですから♡」と言った学校一のお嬢様が、毎日俺を本気で落としにくる。  作者: リディア


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20/38

第20話 恋人なら、一番に見つけますよね?

「終わったーーーーっ!!」


 文化祭の終了を告げる放送が鳴り響いた瞬間、教室中に歓声が爆発した。


「紅茶もクッキーも全部売り切れたよ!!」

「やったー!!」

「あーもう最高! 青春! 打ち上げ行こー!」

「まだ片付け残ってるから。教室元に戻すまでが文化祭」

「葵ひどい! 少しは夢くらい見させてよー!」


 教室中がどっと沸く。俺も、その輪の中で小さく笑っていた。


 片付けが始まった。


 装飾を外して、机を戻して、ゴミをまとめる。みんな疲れ切っているはずなのに、どこかハイテンションで笑い声が絶えない。


 俺はゴミ袋の口を縛りながら、ふと顔を上げた。


 ……あれ。


 いつもなら視界のどこかにいるはずの白鷺さんの姿がない。

 最初は、ただの疑問だった。トイレにでも行ったのだろう。すぐ戻ってくる。そう思っていた。

 でも、五分経っても、十分経っても、戻ってこなかった。

 気づけば俺は、自分の作業を止めて、彼女の姿を探していた。


「え?」


 横から声がした。西園寺さんが丸めた模造紙を持ったまま、ニヤニヤと俺を見ている。


「こ・う・さ・か・く〜ん。……さっきから白鷺さん探してない?」

「探してません!!」

「はいはい」


 西園寺さんは満足そうに笑って、それ以上は何も言わずに去っていった。

 否定したはずなのに、俺の足は自然と教室の外へ向かっていた。




 夕暮れの校舎裏。

 祭りの喧騒から遠く離れた、人気のないベンチ。

 私は、そこに一人で座っていました。

 少しだけ、疲れが出てしまったのかもしれません。


 目を閉じると。

 結弦くんの声が、聞こえる気がしました。


 『俺がいる』


 あの時の声が、まだ耳の奥に残っています。

 風が吹くたびに、この数日間のことが少しずつ蘇ってきます。


 一緒にポスターを描いたこと。

 雨の中、手を引いてくれたこと。

 ほうじ茶を差し出してくれたこと。


 そして。


 言ってしまったこと。


 顔を上げると、空が茜色に染まっていました。

 綺麗だなって思いました。

 ……結弦くんにも、見せたいな。

 気づけば。

 また、探してしまいました。





 校舎裏そこに、彼女はいた。

 ベンチに座り、夕空を見上げている。


「……ここにいたのか」


 白鷺さんはビクッと肩を震わせ、振り返った。

 俺の姿を認めた瞬間、大きく目を見開いて——花が綻ぶような、柔らかな笑顔を浮かべた。


「どうして、ここが?」


 俺は少しだけ考えた。

 本当に、自分でもわからない。体育館でも、中庭でもなく、なぜか足がここに向かっていた。


「……わからない」


 沈黙。


 夏の風が、木々を揺らした。


「でも」


 もう一度、間があった。


「……探してた」


 ぽつりと、口からこぼれた。

 白鷺さんが、一瞬だけ固まった。

 少し笑って、それから、泣きそうに瞳を潤ませて。でも、泣かなかった。


「……楽しかったですね」

「そうだな」


 俺は彼女の隣に腰を下ろした。


「疲れました」

「頑張りすぎなんだよ、白鷺さんは…」

「結弦くんもですよ」


 それ以上、言葉は続かなかった。

 風の音。静かな夕暮れ。何も言わなくても、隣にいるだけでいい、そんな時間だった。


「あーーーっ!! いたーー!! 恋人コンビ発見!!」


 後夜祭のキャンプファイヤーを囲む人だかりの中で、西園寺さんの大声が響いた。


「もう、だから放っとけって言ったのに……」


 朝比奈さんが呆れてため息をつき、クラスメイトたちがどっと笑う。

 燃え上がる炎。オレンジ色に照らされる笑顔。

 その喧騒の中で。

 白鷺さんが、俺の袖をそっと引いた。


「恋人ですから♡」


 クラスのみんなには聞こえない、小さな声。

 俺は少しだけ笑って。


「……だな」


 白鷺さんが、ぴたりと止まった。

 一瞬だけ、固まって。

 それから、耳まで赤くなって、困ったように俯いた。

 自分で言ったくせに。

 俺がそれに気づいて小さく吹き出すと、白鷺さんがむっとしたように顔を上げた。


「……もう! 笑わないでください」

「笑ってないよ」

「笑ってます」


 むすっとしたまま、でも——袖を掴む手は、離さなかった。

 俺はそれに気づいて、もう一度だけ笑いそうになるのを、どうにか堪えた。


「……わかった。笑わない」

「……ならいいです」


 白鷺さんは、まだ少し頬を膨らませたまま、前を向いた。

 それでも、袖は離さなかった。

 二人で、少しだけ笑った。

 揺れる炎の向こうで、火の粉が夜空に舞い上がっていく。

 それを、並んで見上げた。

 白鷺さんが、そっと俺の隣に寄ってきた。

 肩と肩が、触れた。

 俺は、離れなかった。




第20話をお読みいただき、本当にありがとうございました!


これにて、文化祭編は完結です。


結弦と白鷺さんが少しずつ距離を縮め、ここまで歩いてきました。

この二人の変化を、少しでも楽しんでいただけていたら嬉しいです。


「結弦、もう恋してるじゃん!」

「白鷺さん、可愛すぎる……!」

「文化祭編、最高だった!」


と思っていただけましたら、ぜひ★やフォローで応援していただけると励みになります!


文化祭が終わり、いつもの日常が戻ってきます。

でも、二人はもう文化祭前の二人ではありません。


「恋人のフリ」は、これからどんな形へ変わっていくのか。


引き続き、結弦と白鷺さんの物語を楽しんでいただけたら嬉しいです!


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