最悪の日~終焉
こんにちは。
63歳のサラリーマンをしながら執筆しております、関俊彦です。
第5話「最悪の日~終焉」をお届けします。
ここまで読んでくださった方は感じておられると思いますが、本作はこの回から大きく動き始めます。
これまで蟻人との戦いを続けてきた征人たち。
しかし、“災厄の使徒”という存在は、それまでの武具亜とは次元の違う敵でした。
今回、征人、制人、神子の三人は、「悲しみの使徒 グリーフ・ミラー」と本格的に激突します。
そして――
ルミナス・マニフェスターズにとって、“最悪の日”が訪れます。
自分でもかなり気持ちを込めて書いた回です。
少しでも楽しんでいただければ嬉しいです。
「大丈夫か!」
白・黒・紫の光が弾ける。
征人、制人、神子――三人のルミナス・マニフェスターズが現場へ到着する。
救援要請を受けた者だけが使用できる緊急転送。
バトルネットワークが、現場の情報を強制的に共有する。
視界に流れ込む戦闘ログ。
沈黙した三人。
反応ゼロ。
そして――
蒼。
「あれが……グリーフ・ミラー」
征人が、無意識に息を飲む。
神子が駆け寄る。
「ねえ、大丈夫……?」
触れる。
だが。
反応はない。
「……生きてる。でも……」
神子の声が震える。
「感情が……ない」
「当然だ」
静かな声。
グリーフ・ミラー。
「哀しみしか存在しない領域で、“哀しみすら削除した”」
蒼い涙が流れる。
「今の彼らは、ただの殻だ」
制人が一歩前に出る。
「元に戻せるのか」
「私を消せば、あるいは」
淡々とした声。
「だが、成功例はない」
――沈黙。
グリーフ・ミラーが、空間を見上げる。
「このネットワーク……」
蒼い影が伸びる。
「ここに流せば、世界中から感情を消せる」
その瞬間。
黒い盾が立ちはだかった。
「――させるか!」
制人。
影を受け止める。
空間が軋む。
「……なるほど」
グリーフ・ミラーがわずかに揺れる。
「防げるか」
「征人! 神子!」
制人が叫ぶ。
「俺が止める! 削れ! コアを露出させろ!」
「了解!」
神子が銃を構える。
「紫焔連星バラージ!」
紫の弾幕が蒼を削る。
征人が踏み込む。
「白煌終断ディバインブレイカー!」
光刃が、体積を削り取る。
「効いてる!」
制人が歯を食いしばる。
だが。
グリーフ・ミラーが静かに呟いた。
「――つまらない」
空間が歪む。
「幻影涙界領域――」
蒼が跳ねる。
「グリーフ・ファントム」
“影”が出現した。
神子の真上に。
「え――」
包み込まれる。
「ぁ……あああああ!!」
絶叫。
ルミナスギアが砕ける。
胸を押さえ、倒れ込む。
服が裂ける。
そこに――
黒いノイズ。
広がる。
侵食する。
「まずは、その女から」
二度目の影。
叩き込まれる。
声にならない悲鳴。
ノイズが、拡張する。
「神子!!」
制人が駆け寄る。
抱き起こす。
黒が、広がっている。
止まらない。
「征人!」
振り返る。
「影を切れ! 近づけさせるな!」
「……ああ!」
征人が走る。
影を斬る。
斬る。
斬る。
だが。
追いつかない。
「神子……」
制人が呟く。
その目が、決まる。
「……やるしかない」
拳を構える。
鉄城腕甲フォートレスナックル。
「ロストプログラム――」
空間が歪む。
「リープ、起動」
装甲が“揺れる”。
存在が、崩れ始める。
「待て、制人――!」
征人の声。
届かない。
「神子を……頼む」
最後の言葉。
踏み込む。
「俺と一緒に――消えろ!!」
拳が叩き込まれる。
瞬間。
空間が“切り取られる”。
制人とグリーフ・ミラーの半身が、黒に染まる。
そして。
消える。
跡形もなく。
「制人……?」
征人が、呆然と立つ。
神子は、倒れている。
動かない。
「なぜだ……!」
半身を失ったグリーフ・ミラーが揺らぐ。
「なぜ、消える……!」
そのとき。
征人の中で、何かが“切れた”。
(――許さない)
激昂。だが、その熱は一瞬で極限の「冷気」へと変わる。
視界の端で、バトルネットワークのクロック(時間)が狂い始めた。
世界が止まったのではない。
征人の「存在密度」が、この世界の演算速度を追い抜いたのだ。
「来るな……!」
グリーフ・ミラーが後退る。
その動きは、征人の目には静止画の連続にしか見えない。
「……消えろ」
征人が踏み出した一歩は、中間のプロセスを「切断」し、一足飛びにミラーの懐へと到達する。
――閃光。
直剣『ルクス・ディバイダー』が、時間を置き去りにして振り抜かれた。
ミラーの悲鳴さえ、斬られた後に遅れて空間に響く。
「ア……アア……ガ……!」
何十、何百という斬撃が、刹那の間に「同時」に発生する。
時間の断片を食いつぶされた使徒の身体は、再生の機会すら与えられず、蒼い塵へと分解されていった。
静寂。
残ったのは。
深蒼のクリスタル。
征人は、それを拾う。
そして。
神子の元へ。
抱き上げる。
温もりは、ある。
だが。
弱い。
「……帰ろう」
声は、静かだった。
「神子」
――最悪の日は、終わった。
だが。
失ったものは、あまりにも大きかった。
第5話「最悪の日~終焉」を読んでいただき、ありがとうございました。
今回は、これまでの日常が完全に壊れる回となりました。
グリーフ・ミラーという存在は、単純に「強い敵」ではなく、戦う意思そのものを奪う敵として描いています。
どうすればこんな相手に立ち向かえるのかを考えながら書いていました。
また、制人、神子、征人、それぞれの想いも大きく動き始めます。
特に制人については、今後の物語に深く関わっていくことになります。
63歳になってから小説を書き始めるとは思っていませんでしたが、こうして続きを書けているのは、読んでくださる皆様のおかげです。
感想やコメントをいただけると、本当に励みになります。
「続きが気になる」「このキャラが好き」など、一言でもいただけると嬉しいです。
なお、本作は毎週日曜日に更新予定です。
これからも、征人たちの戦いを見届けていただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。




