最悪の日~闘い
こんにちは。
63歳のサラリーマンをしながら、本作を書いております、関俊彦です。
ありがたいことに、声優の関俊彦さんと同姓同名、さらに年齢まで同じという不思議な偶然がありまして、執筆中はつい、あの渋く深みのある声を想像しながらナレーションを脳内再生しています。
さて、第4話では、NEXT社の風間迅、赤城剛士、黄瀬悠真の3人が、災厄の使徒「グリーフ・ミラー」と本格的に激突します。
これまでの“蟻人”とはまったく異なる存在。
武具亜の本当の恐ろしさが、少しずつ姿を現し始めます。
NEXT社の3人はどこまで通用するのか。
そして、悲しみそのものを具現化した使徒の力とは――。
あなたは、この戦いの“目撃者”となる。
少しでも楽しんでいただければ嬉しいです。
三人は、じりじりと後退しながら、同時に手首の銀色のリング――ルミナス・シンクロリングを重ねた。
「戦装リンク――ルミナスギア!」
次の瞬間、バトルネットワークから光が降りる。
緑。橙。黄色。
三色の光がそれぞれの身体を包み、粒子が装甲へと再構築される。
「――翠嵐ヴァンガード!」
「――橙熱タイタン!」
「――黄閃ブリッツ!」
名を叫ぶことで、意志を奮い立たせる。
震えていた心が、ルミナスギアの補正によって無理やり“戦闘状態”へ引き戻される。
風間迅は、槍を構えた。
「……お前は何者だ」
蒼い存在――グリーフ・ミラーは、静かに答える。
「私は、悲しみ」
その声は、頭ではなく“心”に直接染み込んでくる。
「人類というウィルスに侵された、この世界の哀しみが実体化したもの」
涙が、その体表を流れる。
「ゆえに――人類を消去する」
次の瞬間。
体表から“涙の鎖”が無数に伸びた。
「来るぞ!」
迅が叫ぶ。
だが――
「ぼっとしてんじゃねぇ!」
雷光が閃く。
黄閃双刃ライトニングダガーで鎖を弾き飛ばした悠真が笑う。
「こいつ、ただのデカブツじゃねぇ。だが――」
ニヤリと口角を上げる。
「コア、高く売れそうだな」
「ははっ、言うじゃねぇか!」
橙熱重槌フレイムインパクターを振り上げ、剛士が突進する。
「ぶっ壊してやる!」
轟音。
一撃が、グリーフ・ミラーの身体に叩き込まれる。
蒼い表面が波紋のように歪む。
「効いてる!」
「続ける!」
迅が踏み込み、翠嵐槍ヴェントスピアを振るう。
風圧が空間ごと切り裂き、蒼い体表に“裂け目”を作る。
だが――
“閉じる”。
まるで最初から何もなかったかのように。
「……再生?」
迅の声がわずかに揺れる。
「不愉快ですね」
グリーフ・ミラーの表面が脈打つ。
次の瞬間、無数の鎖が一斉に襲いかかる。
「一気に決める!」
迅が叫ぶ。
「トライアド・ルミナスバースト!」
風が渦を巻き、敵を拘束する。
剛士が跳び、ハンマーを振り上げる。
その背を、雷が押す。
「行けぇぇぇ!!」
「――橙熱爆砕インフェルノコラプス!!」
叩き込まれる――その直前。
グリーフ・ミラーの目が、わずかに細まった。
「――涙界領域」
世界が、沈む。
「グリーフ・ドメイン」
蒼い影が、広がった。
音が消える。
色が薄れる。
感情が――沈む。
「……は?」
剛士の手から、ハンマーが落ちた。
カラン、と乾いた音。
悠真のダガーも、力なく滑り落ちる。
「なんだ……これ……」
膝が、崩れる。
理由もなく。
ただ、心が“空っぽ”になる。
そして、残るのは――
「……つらい」
「……やめたい」
涙があふれる。
戦う意味も、理由も、全部どうでもよくなる。
「剛士! 悠真!」
迅が叫ぶ。
だが――
その声さえ、遠い。
(……どうでもいい)
心が、沈む。
抗う理由が、消える。
「救難要請!」
必死にリングへ叫ぶ。
「近くのルミナス・マニフェスターズは――」
その言葉は、途中で途切れた。
蒼い影が、迅も包み込む。
「……ああ……」
膝がつく。
槍が落ちる。
(もう、いい)
戦う必要なんて、ない。
全部、終わればいい。
「終わりです」
グリーフ・ミラーが、静かに宣告する。 砕け散ったルミナスギアの破片は、光の粒子に戻ることさえ許されず、蒼い影に溶けて消えていく。
地面に伏した迅の指先が、消え入るような救難信号(SOS)のパルスを放った。 だが、ミラーはその光を無感情に踏みつぶす。
「悲しみには、終わりがありません。あなたたちも、この世界を構成する寂しいログの一部になりなさい」
ミラーの体表から、新たな“涙の鎖”が三人の心臓部目掛けて鎌首をもたげる。 抵抗する力は、もう誰にも残っていない。
その時――。
遠く、バトルネットワークの端層から、一筋の「白い」ノイズが走った。
それは、誰もが絶望に沈む領域を、 強引に「加速」して突き抜けてくる、異質な演算の響き。
ミラーの目が、初めてわずかに動いた。 「……イレギュラー?」
第4話を読んでいただき、ありがとうございました。
今回は、NEXT社の3人の戦闘能力や連携、そして「災厄の使徒」という存在の異質さを意識して書きました。
単純に強い敵ではなく、
「戦う意思そのものを奪う敵」をどう描くかを考えながら執筆しています。
また、作者自身も毎回「この先どうなるんだろう」と考えながら書いております。
63歳になってからの小説挑戦ですが、こうして続きを書けているのは、読んでくださる皆様のおかげです。
感想やコメントをいただけると、本当に励みになります。
一言でもいただけると、「次も頑張ろう!」という力になります。
なお、本作は毎週日曜日に更新予定です。
これからも征人たちの戦いを見届けていただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。




