最悪の双子-新たなる敵
「まだ終わってない!」
ホロウ・ウィスパーが叫ぶ。
「一緒にやるよ!」 「うん!」
兄妹の身体から紫黒の光が噴き上がる。
「サウンドボム!」 「サウンドブレード!」
轟音と無数の音刃が渦となり、ルミナスフィールド全体を覆い尽くした。 格子状のデータ床が割れ、紫黒のノイズが爆発する。
「来るぞ!」 征人が叫ぶ。
その瞬間。 四人のバイザーへ同時に新たな表示が浮かんだ。
【SAS解析完了】 【敵行動パターン更新】 【警告】 【個別撃破 成功率 0%】
征人の目が見開かれる。
「0%……!?」
満の声が通信へ響いた。
『征人! 二人を別々に倒すな!』 『戦闘データを再解析した! 存在交換だけじゃない!』
光も続ける。
『二人は互いをバックアップにしている!』 『片方だけ倒しても、もう片方から再構築されるわ!』
征人は歯を食いしばる。
(そういうことか……) (だから、今まで誰も倒せなかった)
ホロウ兄妹が嘲笑う。
「やっと気付いた?」 「遅いよ」 「私たちは――」 「二人で一人なんだから!」
その瞬間。 征人は静かに笑った。
「だったら」 「二人まとめて斬るだけだ」
ホロウ兄妹の笑みが止まる。
「え……?」
征人が通信を開く。
「みんな」 「最後だ」
「了解!」 「任せろ!」 「決めよう!」
三人の返事が重なる。
その時だった。 四機のAIが同時に起動する。
【四機同期開始】 【戦術リンク】 【同期率 25%】
50%。 75%。 100%。
光が思わず息を呑んだ。
「四機同時同期……!」
満も驚きを隠せない。
「そこまで完成していたのか……」
M1の声が静かに響く。
『戦術同期、完了』 『六煌ストライカー支援開始』
その瞬間。
蒼天ヴァリアント。 雷皇インパクター。 黒皇バスティオン。
三機のルミナスエネルギーが、黄金の光となって征人へ集まっていく。
六煌ストライカーが眩く輝いた。 六煌戦刃ヘキサブレイカーが、巨大な光刃へ変化する。
ホロウ兄妹が叫ぶ。
「止めて!」 「早く入れ替わって!」
兄妹は高速で存在交換を繰り返す。
しかし。
『最終位置予測』 『同期完了』 『未来軌道算出』
四機のAIが、同時に演算を終える。
征人は迷わなかった。
「みんな!」 「力を貸してくれ!」
「当然!」 「全部乗せろ!」 「ぶち抜け!」
その返事に重なるように。 光が小さく微笑む。 「お願い……!」
M1が静かに告げる。 『全員、準備完了』
征人はゆっくり剣を構え、心は静かに目を閉じた。
力を振るう恐怖はなくなっている。
そして。 仲間たちを感じた。
真也。 竜一。 太哉。
さらに、その隣に立つような感覚。 M1。 三機のCSS。
姿は見えない。 それでも、確かにここにいる。
征人は笑った。
「ああ」 「俺たちは、四人じゃない」 「八人だ」
通信の向こうで、光が目を丸くする。 満も静かに微笑んだ。
目を開いた征人には、切り裂いた二体の使徒しか見えていない。
「みんな!」 「行くぞ!」
『了解!』
人とAI。 八つの意志が、一つになった。
黄金の閃光が、ルミナスフィールドを貫く。
「六煌終撃――」
ホロウ兄妹が絶叫した。
「いやぁぁぁぁぁぁっ!」
「ヘキサ・ブレイクダウン!!」
天地を裂く、黄金の巨大斬撃。
存在交換。 残像。 幻惑。 再構築。
そのすべてを無いものにした 一振りの光が、二人を同時に切り裂いた。
静寂。
ホロウ兄妹の身体が、ゆっくりと崩れていく。
「どうして……」 「負け……た……」
最後に、二人は互いへ手を伸ばした。 しかし。 その指先が触れ合うことはなかった。
紫色の粒子となり、静かに消滅する。
戦場に、乾いた風が吹き抜けた。
征人は剣を下ろす。
「終わった……」
その時だった。
通信へ、満の声が響く。
『征人!』 『油断するな!』 『敵反応が、まだ――』
誰もいなくなった空間。 そこへ、小さな黒い結晶が一つだけ残されていた。
結晶は脈動する。 まるで、生き物のアラートのように。
そして。 どこからともなく、男の冷たい笑い声が響いた。
『……実験は成功だ』
その声を聞いた瞬間。 征人たちは一斉に振り返る。
しかし、そこには誰もいない。 黒い結晶だけが静かに宙へ浮かび、闇の隙間へ吸い込まれていった。
◇
遠く離れた実験室。 巨大な透明培養槽の前で、一人の男が静かに口元を歪める。
「次は、本番だ」
トレイター・コードは、回収した黒い結晶を手のひらで握り締めた。
培養槽の中。 カオスのコアの残骸、黄瀬の肉体、そして集められた存在エネルギーが融合していく。
その奥底で。 ゆっくりと、一つの巨大な「無貌」の影が起動を始めた――。




