最悪の双子ー新たな仲間
「行くぞ!」
征人の号令と同時に、四人が一斉に地を蹴った。
「速っ!」
ホロウ・スクリームが叫ぶ。
最初に飛び込んだのは真也だった。 「蒼天双刃アストラツイン!」
青い閃光が、コンマ数秒で間合いを詰める。
「そんな攻撃――」 ホロウ・ウィスパーが笑った。 「効かないよ」
二人の身体が紫色の粒子となって弾ける。 存在交換。
前回、四人を絶望の底へ叩き落とした、不可避のチート能力。
だが――。
『存在変換を検知』 『ターゲットID修正』 『照準、自動追尾』
四人のバイザーへ、冷徹なシステムログが駆け抜ける。
「え?」
ホロウ・スクリームの目が見開かれた。
真也の二本の刃が、一切の迷いなく、入れ替わった瞬間の自分の喉元へ吸い込まれてくる。 最初からそこに「いる」ことを確信していたかのように。
「なっ……!?」
ザンッ!!
鮮血ならぬ紫色のノイズが舞う。 斬撃がホロウ・スクリームの装甲を深く切り裂いた。
「きゃああっ!」
使徒の口から上がる、初めての悲鳴。
「どうして……!?」 「入れ替わったのに!」
通信回線から、光の凛とした声が響く。
『存在交換を確認!』 『CSS、攻撃対象を自動更新!』 『みんな、そのまま押し込んで!』
「了解!」
竜一が双槌を振り抜く。 「雷鼓、展開!」
四つの雷鼓が空中へ跳ねる。 「音鼓弾!!」
雷鳴とともに放たれた音響弾が、ホロウ・ウィスパーへ襲いかかる。
「また入れ替われば――!」 兄妹が再び存在を交換する。
しかし。
『ID修正』 『弾道再計算』
四つの雷弾が、空中で不不自然な直角軌道を描いた。
「うそっ!?」
回避したはずの爆煙が、背後から迫る。
ドゴォォォン!!
「きゃああああっ!」
激しい爆発。 ホロウ・スクリームが地面を転がる。
「あり得ない!」 「なんで追ってくるの!?」
征人は、六煌ストライカーの剣を構えたまま冷静に告げる。
「AIがお前たちを見失わないからだ」 「存在を入れ替えたくらいじゃ、もう逃げられない」
ホロウ・ウィスパーの歪んだ笑顔が、完全に消えた。
「そんな……」 「そんな能力……ないはずなのに……!」
その瞬間。 太哉が前に進み出た。
「黒皇神盾アビス・リフレクター!」
巨大な漆黒の盾が、地鳴りを立てて地面へ突き立てられる。
ホロウ・スクリームが半狂乱で叫ぶ。 「サウンドブレード!!」
無数の超音波の刃が、雨嵐となって黒盾へ叩きつけられる。 激しい衝撃波。 だが、太哉の足は一ミリも下がらない。 盾のコアが、紫黒の衝撃をすべて内部へ吸収していく。
「終わりか?」 太哉が低く呟いた。
「な……!?」
「なら、返すぞ」
黒盾が、激しい黄金色に爆発した。
蓄積された全音波エネルギーが、十倍の威力となって逆流する。
ドォォォォォン!!
「「がはっ……!?」」
二人の身体が同時に吹き飛んだ。 ルミナスフィールドを囲む格子状のデータ障壁へ激しく激突し、爆発的なノイズを上げて崩れ落ちる。
「痛い……痛いよ……!」
初めて、兄妹の顔から嘲笑が消え去った。
征人は冷ややかに観察していた。
(焦り始めた) (前回は、俺たちが混乱した) (今は違う) (混乱しているのは、お前たちだ)
ホロウ・ウィスパーが叫ぶ。
「落ち着いて!」 「まだ負けてない!」 「もっと入れ替われば……! 追いつけるはずがない!」
一秒間に三回。 四回。 五回。
高速の存在交換。 紫色の残像が、ルミナスフィールド全域を覆い尽くす。 肉眼では、どちらが本体か判別不可能。
しかし。
四人の視界には。 残像の渦の中でもブレることなく。
【TARGET:ホロウ・ウィスパー】 【TARGET:ホロウ・スクリーム】
赤と黄金のロックオンサイトが、寸分の狂いもなく二人を捉え続けていた。
「ば……馬鹿な……」 ホロウ・スクリームの声が震える。
「全部……見えてる……」
通信の向こうで、光が小さく、誇らしげに微笑む。 「みんな。AIを……仲間を信じて!」
征人たち四人の口元に、自然と笑みが浮かぶ。
「ああ」 「俺たちはもう、一人じゃない」
四人が同時に地を蹴る。 音速の突撃。
ホロウ兄妹は、初めて、自分たちの意思で後ろへ飛び退いた。
「逃げるよ!」 「うん!」
その顔に浮かんでいたのは。 今まで彼らが、罪のない人々へ見せつけてきたものと全く同じもの。
惨めな、人間の恐怖だった




