最悪の双子-Revenge
お盆お特別版として第18話を公開します。 楽しんでください。
「それで、満さん」
真也が腕を組みながら、モニターを見つめる。
「そのAIの名前、本当に"Combat Support System"なんですか?」
「そうだ」
「……そのまんまだな」
竜一が苦笑する。
太哉も思わず吹き出した。
「略してCSSか」 「もう少し格好いい名前はなかったんですか?」
三人の視線が一斉に満へ向く。
「え?」
満は本気で不思議そうな顔をした。
「十分分かりやすいだろう?」
沈黙。
そして。
「「「センスなさすぎです!」」」
社長室に、三人の声が見事に重なった。
「ダサい!」 「そのまんま!」 「子ども向けヒーロー番組でも、もう少し凝りますよ!」
一斉に突っ込まれ、満は困ったように頭をかいた。
「そうか……?」
その様子を見ていた光が吹き出す。
「私は嫌いじゃないけど」 「ほら、機能が分かりやすいでしょう?」
「光さんまで……」
征人は苦笑しながら肩をすくめた。
重苦しかった空気に、ようやく笑いが戻る。
その時だった。
社長室の大型スクリーンが切り替わる。
《SAS 起動》
幾何学模様の画面に、都市全域のホログラムマップが投影される。
「これは……」
征人が目を見開く。
満が静かに説明を始めた。
「SAS――Strategic Analysis System」 「CROSS社が保有する戦略分析AIだ」
画面上では、過去の事件が時系列で並び始める。
河川敷。 ショッピングモール。 駅前広場。 イベント会場。
赤いマーカーが次々と点灯していく。
「ホロウ・ウィスパーとホロウ・スクリーム」 「この二人には明確な行動パターンがある」
画面がズームされる。
「人が多く集まる場所」 「逃げ場の少ない閉鎖空間」 「精神的高揚状態の人間」
満が一つ一つ指し示していく。
「楽しんでいる人間ほど、絶望へ落とした時の感情エネルギーが大きい」
光が頷く。
「つまり、人が笑っている場所を狙う」 「それが、あの二人の本能」
SASが演算を開始する。 無数の予測ラインが都市全域へ広がり、やがて一点へ収束した。
赤く点滅するマーカー。
《国際ドーム》
「今日の夜」 「人気アイドルグループのライブ」 「観客、およそ五万人」
「SASの予測では、標的となる確率九六・八%」
真也が口笛を吹く。
「ほぼ確定じゃないか」
満は頷いた。
「だから、迎え撃つ」
太哉が首を傾げる。
「でも、どうやって?」 「ドームに避難命令を出すんですか?」
「いや」
満は静かに首を振った。
「ライブは予定どおり開催される」
四人が驚く。
「え?」
「もちろん、観客を危険にさらすつもりはない」
画面が再び切り替わる。
国際ドームの立体図。 その周囲を包む巨大な半透明のフィールド。
「ホロウ兄妹は、出入口から侵入したことが一度もない」 「必ず空間を歪め、直接現れる」
「ならば、その性質を利用する」
征人の目が鋭くなる。
「利用する……?」
「空間歪曲反応を検知した瞬間」 「侵入地点ごと、強制的にルミナスフィールドへ転送する」
「つまり」
光が笑顔で続ける。
「ドームに現れたと思った瞬間には、もう誰もいない戦場へ移されるってこと」
征人は思わず笑みを浮かべた。
「なるほど」 「敵の能力を逆手に取るんですね」
「そう」
満が静かに微笑む。
「敵の強みを封じる」 「それも、仕組みだ」
社長室に、自然と笑みが広がる。
前回の敗北で折れかけていた心が、少しずつ立ち直っていく。
太哉が拳を握る。
「今度こそ、守る」
竜一も頷いた。
「もう同じ失敗はしない」
真也は親指を立てて笑う。
「リベンジだ」
最後に、征人が立ち上がった。
「みんな」 「行こう」 「今度は俺たちが、あいつらを迎え撃つ」
四人が同時に頷く。
その様子を見つめながら、光は静かに呟いた。
「……今度こそ、勝って」
誰にも聞こえないほど、小さな願いだった。
その瞬間。
都市の夜空。
国際ドーム上空で、空間がわずかに揺らいだ。
紫黒のノイズが、静かに広がり始める――。




