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最悪の双子-Recovery

今日は2話分投稿をします。

重苦しい空気が、CROSS社社長室を支配していた。

誰も口を開こうとしない。

沈黙だけが、冷たく時間を刻んでいる。

やがて。 その静寂を破ったのは竜一だった。

「……負けた」

握り締めた拳が、激しく震えている。

「俺たち……強くなったって思い上がってたんだ」

雷皇インパクターの力を手に入れ、自分たちはもう負けない。 そう信じていた。

だが。 現率は違った。

守れなかった。 誰一人として。

太哉が俯いたまま呟く。

「俺も……守れなかった」

大きな身体が、縮こまるように小さく見える。

「俺の盾は、人を守るためにある。それなのに……誰も救えなかった」

社長室の空気が、さらに重く沈む。

真也は壁の一点を、血が滲むほど睨み続けていた。

「黄瀬……」

その名を口にした瞬間、表情が歪む。

「どうしてだ……」 「どうして、あいつの幻影を見ただけで……身体が動かなくなる……!」

悔しさと、怒り。 自分自身への強い苛立ち。

誰よりも速さを誇る蒼天ヴァリアントが。 あの瞬間だけは、一歩も踏み出せなかった。

征人もまた、深く俯いていた。

脳裏に焼き付いて離れない。

川へ沈んでいく人々。 泣き叫ぶ子ども。 助けを求める声。

そして。 間に合わなかった自分。

拳を握る。 爪が皮膚に食い込み、血が滴る。

「俺が……」 震える声が漏れた。 「俺が、もっと強ければ……!」

「いいえ」

その言葉を断ち切るように。 光が静かに立ち上がった。

彼女は征人たち四人を見渡すと、深く、深く頭を下げる。

「ごめんなさい」

誰も予想していなかった言葉。

「敵に精神汚染能力があると分かっていながら、対策を用意できなかった」 「これは、私と満さんの責任です」

満も歩み出た。 いつも浮かべている軽い笑みは、完全に消えていた。

「そうだ」 「今回の敗因は、君たちの弱さじゃない」

社長室の大型モニターに、前戦のデータが映し出される。

ホロウ・ウィスパー。 ホロウ・スクリーム。 そして。 精神を汚染され、金縛りのように動きを止める四人。

満は映像を一時停止させた。

「人間の心には、隙がある」

その一言に、全員が顔を上げる。

「トラウマ。罪悪感。後悔。それは欠陥じゃない。人間が人間である証拠……いわば『仕様(バグ)』だ」

満はモニターの画面を指差した。

「人間は揺らぐ。だから仕組みを作る」 「揺らぐなら、最速でその仕組みを直す。それが僕のやり方だ」

征人は息を呑む。 何度も聞いてきた、満の技術者としての信条。

「精神汚染を受けること自体は防げない」 「なら、汚染されても戦い続けられる仕組みを作ればいい」

モニターが切り替わる。 新たなシステムプログラムが表示された。

《CSS(Combat Support System)》

「……CSS?」 竜一が首を傾げる。

満が頷いた。

「Combat Support System。」

「M1の制御プログラムを解析・移植した、各ルミナスギア専用の戦闘支援AIだ」

「精神汚染を検知した瞬間、コンマ一秒で人間より先にAIがギアの制御を奪う」

「そして、君たちの脳内データを強制リカバリする」

光が説明を引き継ぐ。

「征人くんが精神汚染された時、M1が一時的に六煌ストライカーを動かして攻撃を防いだでしょう?」

征人は思い出す。 薄れていく意識の中。 自分以外の『誰か』が、確かに自分を守ってくれたあの感触。

「あれを、みんなのギアに搭載したの」 「M1の思考パターンをベースに、それぞれのルミナスギア専用AIとして移植したわ」

真也が目を丸くする。

「つまり……俺たちが絶望で動けなくなっても、AIが時間を稼いで正気に戻すってことか」

「そう」

光は優しく、けれど強く微笑んだ。

「AIは、みんなを置いて戦うための機械じゃない」 「みんながもう一度立ち上がるための……『五人目、六人目の仲間』よ」

その一言。

冷え切っていた社長室の空気に、確かに熱い火が灯った。

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