新たな鎧の兆し
皆さん、こんにちは。63歳の会社員、関俊彦です。
前回の激闘を経て、物語は新たな局面へ。新たな力、新たな敵、そして新たな仲間との出会いが始まります。今回も最後まで楽しんでいただけると嬉しいです。
NEXA社本社。
最上階の社長室。
そこには二つの異形がいた。
紫黒のノイズで構成された裏切りの使徒――トレイター・コード。
そして。
全身を武装で覆う争いの使徒――カオス・プロセッサー。
「ひどくやられたな」
トレイター・コードが言う。
カオスの左肩は吹き飛び、胸部装甲は大きく抉れている。
征人との戦いの傷だった。
「閃光ナイトか」
トレイター・コードが笑う。
「予想以上だな」
「惜しかった」
カオスは悔しそうに歯噛みする。
「あと少しで殺せた」
「だが殺せなかった」
「……だからだ」
カオスが低く唸る。
「人間エネルギーを寄越せ」
紫黒の瞳が細くなる。
「借りを作るのは嫌だがな」
「そう言うと思った」
トレイター・コードは笑った。
「黄瀬を使って準備してある」
床から紫黒の触手が伸びる。
その先には巨大なエネルギーの塊。
マンション一棟分。
数百人の存在エネルギー。
「受け取れ」
触手がカオスへ突き刺さる。
赤橙のコアが激しく脈動した。
ドクン。
ドクン。
ドクン。
左肩が再生する。
砲塔が復元される。
ミサイルポッドが生え直る。
そして。
橙だったコアが徐々に黒へ染まっていく。
「ほう」
カオスが笑った。
「いいな」
全身から溢れる力。
「発射速度五割増し」
「出力五割増し」
「本当に人間は旨い」
トレイター・コードが肩を竦める。
「貸しだからな」
「ケチな奴だ」
カオスは立ち上がる。
「次は閃光ナイトを確実に殺す」
その言葉に。
トレイター・コードは別の名を呼んだ。
「黄瀬」
床の影から青い戦士が現れる。
青閃ブリッツ。
かつての黄瀬悠真。
「はい」
感情のない笑顔。
だが瞳だけは狂気に満ちている。
「減ったエネルギーを補充してこい」
「承知しました」
黄瀬は笑った。
「人類を裏切る快感は最高です」
「もっと集めてきます」
その姿が影へ沈む。
トレイター・コードは窓の外を見た。
街。
人類。
そして。
遠くにいる閃光ナイト。
「さて」
紫黒の笑みが広がる。
「次は誰が絶望するかな」
SmB社救護室。
征人が目を開けた。
「目が覚めましたか」
M1の声。
「どれくらい寝てた」
「二日間です」
二日。
その数字に征人は苦笑した。
夢を見ていた。
神子。
制人。
二人がいた。
『私たちの力を合わせろ』
『破魔家の守護神を復活させろ』
『破魔神装 緋神威・八咫烏』
「八咫烏……」
小さく呟く。
その名前だけが妙に胸に残っていた。
「光さんが呼んでいます」
M1が言う。
「メインルームへ」
◇◇◇
メインルーム。
光の隣には見知らぬ男がいた。
「初めまして」
男が笑う。
「CROSS社CEO兼CTO、飛鳥井満です」
征人は思わず光を見る。
「親戚?」
「従兄弟」
即答だった。
「征人さん」
光が真面目な顔になる。
「閃光ナイトは限界よ」
征人も分かっていた。
最後の戦い。
ギアが耐え切れなかった。
「あの力を受け止めるには新しい器が必要」
「新しいギアか」
「そう」
光が頷く。
その時。
征人が小さく呟いた。
「緋神威・八咫烏」
光が凍りつく。
「どうしてその名前を?」
「夢で聞いた」
沈黙。
そして光が言った。
「制人さんが残した未完成ギアの名前よ」
征人の目が見開かれる。
「やっぱり……」
「でも完成には時間がかかる」
代わりに飛鳥井満が前へ出た。
「だから繋ぎだ」
モニターに六体のギアが映る。
蒼牙ヴァリアント。
雷爆インパクター。
黒峡バスティオン。
重凱ブロッカー。
紫閃ブラスター。
閃光ナイト。
「六つの力を統合した試作型ヘキサギア」
「六煌ストライカーだ」
征人が絶句する。
「誰が使うんだこんなの」
「誰も使えない」
満は即答した。
「だから君を呼んだ」
◇◇◇
テストルーム。
征人が椅子へ固定される。
「六煌ストライカー起動」
光が宣言する。
六色の光が集まる。
蒼。
金。
黒。
銀。
紫。
白。
光が征人を包み込む。
ギアが形成される。
モニターが一斉に反応した。
「適合率三十!」
「五十!」
「七十!」
満が目を見開く。
「ありえない」
誰も起動できなかった。
だが。
征人の身体は確かに光を受け入れている。
「やっぱり」
光が笑った。
「征人さんならできる」
しかし。
モニターの奥では別のデータも表示されていた。
蒼牙ヴァリアント。
雷爆インパクター。
黒峡バスティオン。
三人が前回の戦闘記録を何度も見返している映像。
届かなかった攻撃。
遅れた反応。
守れなかった仲間。
誰一人として席を立たない。
「次は負けない」
その決意だけが映っていた。
同時刻。
街の大通り。
悲鳴が響く。
青い閃光。
黄瀬だった。
倒れた人々が光となって消えていく。
「人間エネルギー回収完了」
冷たい声。
そして。
遠くのイベントホールを見上げる。
数千人規模の人の気配。
「次はあそこですね」
歩き出そうとした瞬間。
背後から声が飛んだ。
「待て」
黄瀬が振り返る。
そこには三人の戦士。
蒼牙ヴァリアント。
雷爆インパクター。
黒峡バスティオン。
姿は以前と同じだが、その瞳だけは以前と違っていた。
「決着をつけるぞ」
蒼牙ヴァリアントが言う。
黄瀬は笑った。
「死にかけた連中が?」
黒峡バスティオンが通信を開く。
「CROSS本部」
「対象と遭遇した」
「ルミナスフィールドへ転送を要請する」
光が四人を包む。
次の瞬間。
街から姿が消えた。
採石場跡。
荒涼とした戦場。
蒼牙ヴァリアントが槍を構える。
雷爆インパクターが槌を握る。
黒峡バスティオンが盾を構える。
そして。
黄瀬がダガーを抜いた。
「行くぞ!」
戦いが始まった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回は戦いの幕間として、次なる物語へ向けた重要な準備回でした。新たな力の兆しと、それぞれが抱く決意を感じていただけたなら嬉しいです。次回はいよいよ新たな戦いが始まります。




