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第十章(7) それは私が笑っていた頃のこと
「あ、あの」
「・・・・なんだ?」
「一つ、お聞きしたいことが、ありまして」
「なんでも聞け」
「こう・・・・ハロルド様は、私の、どこが好きになられたのですか?」
その質問を聞いた時、公爵様は、時間が止まったように、ピタッと動きを止めた。
「も、申し訳ございません!」
公爵様は、その後、顔を真っ赤に染めたので、私はつい、謝ってしまった。
「あ、謝るな・・・・」
「回答していただかなくて大丈夫です。私が変な質問を・・・・」
「君の、笑顔に、惚れたんだ」
私の、笑顔・・・・?私、無意識のうちに笑っていたのかしら?
「大変失礼いたしました。公爵様がお仕事に励んでいる時に楽しそうに笑うなど、許されない行動でした」
「アリーナ、私は君の笑顔に惚れたと、言ったんだが?」
笑っていたという事実を、自分のこととして認められなかった。まさか、笑っていたなんて、思わなかったから。それにしても、そのいつしかの私の笑顔に惚れたって・・・・。
「・・・・アリーナ、君はもう、覚えていないのだろう。あれは、八年前のことだ」
その言葉を始まりとして、公爵様は私達の出会いを話し始めたのでした。




