第九章(8) 何もわかっていない俺が向き合うきっかけ By ハロルド・レイルズ
「ここのお店の人しか、奥様の知り合いはおられないはずなんです。どうか、知っていることがあれば、教えていただけませんか?」
俺は、自分の言いたかったセリフを女中に取られた。
まあ、公爵家の女中が涙目で言ったほうが話は聞いてくれそうだ。そもそも、我々公爵家のお願いは断れないだろう・・・・。
「嫌よ」
そう思っていたのに、断られた。
「リンゼイ!」
「貴方方のせいでしょ、メイさんが苦しんでるのは。メイさんが外に出ていることすら気が付かないような人たちに、情報なんて渡せると思ってるの!?」
あ、ああ。
これだから俺は駄目なんだ。
彼女の苦労もしんどさも、何も分かってもいないのに。
それなのにただ、探しに来て、連れて帰ろうとしている。
それは、本当に、妻が望んでいる事だろうか。
「・・・・そうだな」
「ハル!?」
「公爵様?」
「すまなかった」
俺はカフェの人に謝った。
「妻が外出しているのに気が付かない程放っておいたことも、妻を探しているのは事実だ」
「それを信じられるとでも?」
「・・・・それが、無理なことも、分かっている」
「なら帰って。そもそもここに情報なんてないんだから」
「ここで、待たせてもらっていいだろうか」
「はぁ?」
「リンゼイ!いい加減にしなさい!」
俺に意見をしてくれた女の父親が女に怒っていた。
「いい。そのままで」
俺は、今のままで良かった。今のままの方が、きっと、妻に向き合える気がする。
「俺がここに居たら、また、会えるかもしれないんだ」
「ハル?他の所に探しに行ったら・・・・」
「嫌だ。謝るために、必ず会いたいんだ」
さっきまでは早く探したかった。けど、今は違う。アリーナを必死に探しても、きっと話してはくれない、戻ってきてはくれない。
それでも、謝りたい。結婚から今までのこと全て。
今は、それしか考えられなかった。




