第九章(6) 公爵夫人とメイさんの謎 By リンゼイ
公爵様がお話してくださった内容は、私も父も想像もしていなかった話だった。
このお店で、レイルズ公爵夫人が身分を偽って働いていた。
「・・・・メイさん、ですか?」
考えたくもない。もしかしたらメイさんが、私達みたいに生きていくために精一杯お金を稼いでいる人たちを馬鹿にしているのかもしれない、なんて。
「そうだよ」
次はエリオット公爵がそう言った。
レイルズ公爵もエリオット公爵も、二人揃ってそういうのだから、メイさんがレイルズ公爵夫人ということに嘘はないだろう。
「それで、レイルズ公爵とエリオット公爵は、なぜその話を私たちへお話になられたのですか?」
父が公爵方に尋ねる。それは私も気になっていた。話したいことがあるからここに来られていたのはわかっている。それでも、その話を私たちにする理由が、わからなかった。もしかして、匿っていることがバレた、の・・・・?
「いなく、なられてしまったんです」
「いなくなった、ですか?」
父の質問に答えたのは、支給服を着ている女性だった。
「はい。置き手紙を置いて、姿を、消されてしまって」
置き手紙を置いて、家を出た?
確かにメイさんらしい。けど、私には引っかかることがあった。
「・・・・メイさんが、奴隷として働いていたというのは、嘘、なんですよね?」
「ああ」
「なら、どうして、誰にも知られずにあれだけの時間、外出出来ていたんですか?」
公爵様方が、レイルズ公爵夫人がここで働いていると分かっていたのなら、さっき、働いてしまった、なんて言い方はしないだろう。警備も何もつけずに、一人でここへ来させることもしないだろう。
それならどうして、あれだけの時間、誰にも知られないでここで働けていたのだろう?




