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膂力は余り無いので、速度に全振りします

ともあれ、夕食を確保して順当に進み、かつて駐車場だった荒れ地に装甲車を止めて、皆で正面玄関の扉が崩れ落ちている総合病院に入る直前、又しても生体音響探知機(自称:可愛い猫さん)が獣耳をぴくりと振動させて立ち止まった。


「…… 微かな金属の擦れる音、複数、でも足音無し」

「多分だけど、脚部を持たない浮遊系のホロウ・リッターだね」


旧学術都市庭園の外縁で発見及び報告されている幻獣種の内、該当するのは(たお)した相手を現化量子に分解して吸収する浮遊騎士の(たぐい)だけであり、大方(おおかた)の予測は付く。


その答え合わせを兼ねて振り向き、おれは “鉄屑工房” の探索者達や鈴城教官に目配せするも… 自分らで考えろと軽く受け流された挙句、鬼娘な御令嬢の微苦笑を誘ってしまう。


「ねぇ、ミコト、正確な数と位置状況は分かる?」

「受付ロビーの入口寄り、正面に二体、左右に一体ずつ……」


迂闊(うかつ)に足を踏み入れた獲物を強襲して、(かて)にしていたんだろうね」


前方より眼前に迫る二体で注意を引き、切り結ばせたところで左右の死角から残りが突撃を仕掛けてくる構図など思い(えが)き、独り納得していると横合いからソウジに脇腹を小突かれた。


「で、どう仕掛けるんだ」

「逆に不意討ち、かな?」


「じゃあ、それを採用するわ。失敗したら全責任はユウが取るのよ」

「ん、りょうかい」


何故か、勝手に同意を返した猫さんが短機関銃(サブマシンガン)の弾数を確かめ、携行性向上のため小型軽量化された戦斧(ハルバード)をオウカが構えて、現化拡張(マテリアライズ)による物質再構成で一回り巨大化させる。


致し方無いので、先ずは正面の二体を潰してから残敵に対処する算段を立て、目視ではなく熱源や音響等を頼りに襲い掛かってくる浮遊騎士に対して、先手必勝の突入を可及的速やかに慣行した。


「「!?」」


敏捷性の高いミコトが先陣を切って、正面二体の頭上を前方宙返りで飛び越えていき、身体の上下が入れ代わった瞬間に幾つものマズルフラッシュを()()らす。


一時的に過ぎなくとも、現化量子の燐光に包まれた徹甲弾は鉄鎧を穿(うが)ち、一秒前後の致命的な動揺を生じさせてくれた。


「一撃確殺ッ!」


物騒な言葉と共に “強壮たる鬼人” の膂力(りょりょく)で振り落とされたオウカの戦斧が火花を散らし、ホロウ・リッターの胸郭装甲を叩き割ったのに続き、おれも残る一体目掛けて汎用的な現化能力で補強した白刃を振るう。


左手を鉄鞘に添え、(つば)を親指で押し上げた状態から、(にわ)かに(きら)めかせた刹那の斬撃は速度と技を()って、核となる部分ごと硬い装甲を斬り裂いた。


「「…ッ、ィイイィ!!」」


怒気含みの金属音を鳴らして、入口付近の左右へ陣取っていたホロウ・リッターが其々(それぞれ)に向かってくるも、その片方に時間差を持たせて飛び込んできたソウジが()(すが)り、自らと親和性の高い素材が使われた格闘用ガントレットで殴り掛かる。


背後から渾身のボディブローを喰らい、蛇腹となっている右脇を(えぐ)り込まれた浮遊騎士は勢い良く弾かれて、対角線上にあった襤褸(ぼろ)い受付カウンターに激突して埋もれた。


どういう仕組みか、空中で急制動を掛けた最後の騎士(ラスト・リッター)が円軌道の動きで振り向きながら迫り、遠心力のままに右腕と一体化しているブンディ・ダガー状の武器を薙ぎ払うが、鉱石喰らい(ロックイーター)の因子に基づく異能 “土類錬成” の防御は厚い。


大気中に満ちる現化量子が一瞬で凝縮変性され、何もない空間に硬く重い岩塊が生まれて、砕かれつつも捨て身の剣戟を凡庸(ぼんよう)なものに(おとし)める。


威力を失った攻撃がソウジの左腕手甲に受け止められると同時、おれよりも先に動いていたオウカが横殴りの斧撃(ふげき)を放ち、(うつ)ろな小型の幻獣種を背後より袈裟切りにして(ほふ)った。


「どう、ミコト?」

「んぅ… 埋もれたやつ、小さいけど音してる」


「ちッ、浅かったみたいだな」


ある意味で目視よりも正確な “絶対聴覚” の異能持ちに指摘され、やや気まずそうな態度で止めを刺しにいった悪友と立ち替わり、後詰(ごず)めに徹していた引率役の探索者達が(そば)までくる。


ふと彼らが鉄素材回収の専門家だったのを思い出して、目付きが鋭い主格の螺旋槍(つか)いと視線を交わらせ、問い掛けるように小首を傾げた。


「鈴城三佐、坊主達に解体(バラし方)くらいは教えても構わないのか? 輸送車で来ていれば、荷台に積んで持ち帰るだけなんだが、今回は人員護送用の装甲車だからな」


「お前達が良いなら、教授してやってくれ」

「先輩は昔から不器用でしたよね、任せてください♪」


他の探索者が周囲の警戒をする中でリィナさんを加え、核金(かくがね)や武器に流用できる腕部刃金(はがね)、現化能力と相性が良いため自在に形を変えられる可動部の軟鉄(なんてつ)など、希少価値が高くて売り物になる部位を剝ぎ取っていく。


それらの内、一体分の素材を野外活動に()ける(まと)め役のオウカに相談してから、手解きしてくれた相手に差し出す。


「授業料として取っておいてください」


「…… 断わるのも無粋だな、頂いておこう」

「ふふっ、これで小物とか作ったら、ちょっとした記念品になるかもね」


確かに情緒はあるなと頷き、ヴァネット先生にお(そろ)いのキーホルダー、()しくは認識票(ドッグタグ)でも作って貰おうと思いながら来た道を戻り、確保した鉄素材を装甲車に積み込んだ。

極致化計画の四人、全員が前衛要員ですけど後期のウィザードリィ風に言えばオウカがヴァルキリー、ソウジがファイター、ミコトがニンジャなのに対して、サムライのユウという位置づけです(*'▽')

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― 新着の感想 ―
[良い点] 剥ぎ取りは勝者の権利! 今更ですが、ユウくんは愛されキャラなのかなと思いました。
[一言] 更新お疲れ様です!(*`・ω・)ゞ いつの間にかねこさんが生体音響探知機になってしまっているw 確かに大活躍してくれてますけどw。 それにしてもねこさんユウくんへの信頼がありすぎですねw 本…
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