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某剣客漫画のファンは多いらしい

なお、娘の事で気を揉んだ財閥幹部の親馬鹿、もとい中核都市 “芙蓉(ふよう)” の軍事部門を統括する藤堂氏や、様々な場所に顏が()くヴァネット先生の手廻しもあり……


公用車を運転するエイナ主任に引率されて、おれ達は行政区画の兵装管理局まで出向くことになる。


本格的な都市外での活動を踏まえて事前に話が進んでいたらしく、引き合わされた局長の娘だという年若い技師のクレハさんは挨拶も早々に切り上げて、現化能力者向けの兵装を無骨な作業台に並べていった。


「えっと、君が先生お気に入りのユウで良いのかな?」

「はい、贔屓(ひいき)にされているか、否かは分かりませんが……」


どこか掴みどころのない性格をしている(ゆえ)に確証を持てず、言葉を濁して答えると相手は呆れ混じりに笑って、一振りの刀を差し出す。


「その喋り方、ボクの知っている彼女にそっくりだよ」

「余り、変な影響は受けないで欲しいのだけど」


先にエイナ主任が溜息を零したので不本意ながらも反論する機会を失い、意識を渡された得物に向け、鉄鞘より刃を半分ほど引き抜いた。


妖艶で()()えとした刃金(はがね)には焼き入れの際に温度差で生じる丁子乱(ちょうじみだ)れの紋が現れており、徹底的に不純物を叩き飛ばした素晴らしい地金(じがね)の質感が出ている。


緩やかに弧を描いて()る刀身の形状も、非常に美しい。


「…… 備前長船(びぜんおさふね)の一派?」


「お、鋭いね~、うちの刀匠さんが財閥本部に出向いて、保管されていた小竜景光を参考に鍛造した紛い物(レプリカ)だから、ある意味で正解」


自身の製作物ではないため、翼持つ猛虎が残した羽根刃(はねやいば)鋳潰(いつぶ)して上鍛(うわぎた)えに使った程度しか、蘊蓄(うんちく)を語れないと嘆くが、手に取ってみれば類稀(たぐいまれ)逸品(いっぴん)なのは理解できた。


他にも堅牢な鉄鞘が打撃に使えそうで尚良いなと、思わず視線を向けていたらぼそりと呟かれる。


「翔天御剣流だっけ? 実は刀匠の爺さんもあの旧暦漫画好きなんだ。第七孤児院が送ってきた君の資料でウケてたよ、流石に逆刃刀を造ろうとしたのは止めたけど」


「うぐッ、それで鉄鞘……」

「~~ 双凰閃(そうおうせん)とか、鳳鳴閃(ほうめいせん)できそう♪」


一緒に参考資料と称して漫画を読んでいるミコトは嬉しそうに微笑むが、オウカとソウジが吹き出すのを堪えている姿も視界に入り、居たたまれない気持ちになってしまう。


少し頬が熱くなるのを感じつつも、露にしていた刀身を鞘に納めてクレハさんに向き合い、本当にこれを貰って良いのかと確認する。


「ん~、現化反応の傾向とか君を前提に調整されていても、財閥軍部の備品だって事を忘れず、大事に使ってくれると嬉しいかな?」


などとこちらに釘を刺した後、財閥の役職を親に持つ娘同士で縁があるのか、気さくな態度で二本小角の御令嬢を手招く。


お互いに微笑して当たり障りのない言葉を交わし、親しそうな挨拶を終えてから穂先に鋭い刺先(しさき)、重厚な斧刃(ふじん)と鉤爪を備えたハルバードを両手持ちして渡した。


それを片手で把持(はじ)して、床に石突を打ち付けたオウカが独り言ちる。


「… 結構、軽くて短いわね」


「航空機の胴体と同じマグネシウム合金製、 “質量流転” の異能なら打突時の重さを調整できるし、持ち運びは楽な方が良いでしょう」


全長については現化能力による物質構成への干渉で伸ばせるため、コンパクトに(まと)めたのだと得意げに技師は(のたま)った。


然ほど広いとは言えない工房内で少し下がり、手首などを動かして得物の重心を確かめた鬼娘が神妙な顔付きになる。


「取り廻しは良くても、多少の違和感があるわ」

「バイクを新車に乗り換えた時と同じで、その内に慣れるよ」


さり気なく趣味嗜好の一端を(のぞ)かせながら、軽く受け流してソウジに作業台の格闘用ガントレットを手に取るように促すが… 掴み上げてすぐに表情を(しか)められる。


「おいおい、鉱石喰らい(ロックイーター)の外殻だろ、こいつの素材……」

「あれ、シンパシーとかあるの? 興味深いかも」


「いや、そういう訳じゃないけどさ」


基本的に人を無視して岩や鉱石を食べている温厚な幻獣だが、見境なく都市外縁の建物を齧りにきたら討伐対象にもなるので素直に頷けないのか、岩石獣の因子を持つ当人は微苦笑で誤魔化した。


その様子を胡乱(うろん)な瞳で見詰めていたクレハさんは再び言葉を紡ぎ、兵装に用いられた対象の内側にダメージを伝える輻射(ふくしゃ)衝撃構造や、柔剛性などについて言及する。


一通りの説明が済むと、今度はアタッシュケースをミコトに持たせ、ついでにハグしてから中身を確かめさせた。


初対面の相手に抱擁されて三白眼となった猫さんの手元にあるのは極めて小型な短機関銃であり、銃床を折り畳んだ状態の全長は30㎝に満たず、一般的な拳銃と大差ない。


「何気に対幻獣の主武器が銃なのも珍しいけど、大丈夫?」

「ん、問題ない……」


標的に接近されるのを嫌うため、生命力の高い幻獣には点よりも線の攻撃が有効であっても、譲れない一線があるらしき猫さんは訥々(とつとつ)と答えてケースの蓋を閉じる。


一応、マガジンは装弾数20発のArmor(アーマー)Piercing(ピアッシング)だという補足にもこくりと頷き返して、ヴァネット先生が発注していた装備品一式の受領はエイナ主任立ち合いの下で(つつが)なく完了した。


……………

………

『続きが気になる』『応援してもいいよ』

と思ってくれたら、下載の「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にお願いします٩(ˊᗜˋ*)و

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます! 翔天御剣流……なるほど! と笑ってしまいました。
[一言] 更新お疲れ様です!(`・ω・´)ゞ ユウくん先生のお気に入り認定されてるんですねw でもたしかに色々似てきているような。それにしてもあの漫画この世界でもにんきなんですね。まさか漫画の刀を作…
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