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猫科の動物は不本意に抱っこされると三白眼になる

「… ありがと、ミコト。あ~、もうッ、可愛いわね♪」

「わぷッ!?」


感極まったオウカが唐突なハグをおこない、かいぐりとケモ耳の生えた頭を撫でまわし…… 何時(いつ)ぞやの(ごと)く、綺麗な指先が耳孔にズボッと(はま)り込んだ。


「に゛ぃ~ッ!?」

「あ、御免(ごめん)、悪気は無いのよ」


野生の素早い動きで猫さんが御令嬢の胸元から離脱しようとするも、純粋な膂力(りょりょく)(かな)うはずもなく、速やかな逃亡を阻止されてしまう。


どうやら開放する意思はなさそうで、彼女は引き続きもがくミコトを抱き締め、触り心地など堪能していた。


「ユウ、助けて……」


猫系の動物は抱っこされた時、不機嫌そうな三白眼になる事が多いのだが、まさにそんな感じで琥珀色の瞳を歪め、こちらに胡乱(うろん)な視線を投げてくる。


気侭(きまま)に自分から接近して、過剰に構われると不貞腐れる様子は猫科亜人の本領発揮と言えなくもない。


程々(ほどほど)にしておいたら、オウカ?」

「いい加減、嫌われちまうぜ」


おれとソウジに(たしな)められ、最後に頬擦りした御令嬢が拘束を緩めた瞬間、()()うの体でミコトが脱出してきた。


例によって両手でケモ耳を押さえ、しっかりとガードしている。


「うぅ゛~、酷い目に… あった」


などと言いながら(そば)に来たので、思わず良い位置にあった頭へ手を伸ばすと、無駄に高い動体視力で “ひょい” と避けられてしまった。


何人(なんぴと)たりとも… 私の耳は、触らせない……」


キリっとした表情で先日一緒に読んだ旧暦のレーシング漫画『F1』で多用されていた台詞など持ち出し、ささっと距離を取っていく。


(面倒だから取り敢えず、放っておこう)


昼下がりの穏やかなラウンジの片隅にて、一人だけ警戒モードに突入したミコトはさておき、少し遅めの昼食を口に運ぶ。


今日も今日とて、鳥のささ身や豆腐などタンパク質中心のストイックなメニューとなっており、アサリや海老が入った和風パスタなど食するオウカに冷ややかな視線を向けられた。


鉱石喰らい(ロックイーター)じゃあるまいし、毎日飽きないの?」

「待て、こっちは体質だ。好きで(かじ)ってんじゃねーよ」


「あら、悪かったわね」


さらりとソウジの批判を受け流したオウカの興味は()れたかと思いきや、無言の視線にて促してくるので()()()()()()()()()()を並べておく。


勿論(もちろん)、飽きているけど… 筋肉の維持増強に必須だから、大した問題じゃない」


「お前、また遠坂さんに怒られるぞ」

「まったく同感ね……」


何故か二人してジト目など向けてくるが、体格に見合わない幻獣由来の筋力を持っている連中に言われても、腹立たしいだけだ。


それに午後の訓練を(かんが)みると、これくらいが丁度良い。


「食べ過ぎても、後で吐きそうだから淡白な食事で十分」

「… 確かに、一理あるな」


本日午後は野外訓練となっており、輸送ヘリからのランぺリングやファストロープでの降下を実践するため、慣れない逆重力の浮遊感がとても内臓に響く。


順当に課程を消化していけばパラシュートの訓練へ移行して、やがては輸送機からの空挺降下や、高高度降下も実施される予定になっていた。


その(おり)、高度一万フィートにビビった猫さんが以降の訓練で逃走を図り、第七孤児院の敷地内に潜伏した挙句、(ことごと)く鈴城教官に確保されてしまう訳だが…… まだ少々先の話である。


「私は別に良いけれど、極致化計画ってどこを目指してるのかしらね」

「状況を選ばす、最大限の性能を発揮する財閥専属の傭兵や、探究者かな?」


改めて口にすると、()したる異能も無い自身がオウカ達に混じっている違和感が際立つものの、ここを出て路上生活する気が無いなら、何とか喰らいつく他はない。


(凡庸な手札(カード)を活かせるよう、ありふれた技能を極限まで磨き上げるのみか)


やや精神論と人間賛美に傾倒しているヴァネット先生の薫陶(くんとう)を真に受ける事はできなくとも、総合的な力さえ(ひい)でていれば大抵の問題は解決できる。


また、個々人の枠に(こだわ)る必要すらなく、場合に依っては仲間達を頼っても構わない。


(一方的に依存するような関係は論外だけどね……)


密かな自戒と共に思考を切り上げ、避難先の隅っこから戻ってきたミコトの食事が終わるのを待ちつつ、皆と他愛のない話に興じていく。


こうして緩やかな時間を過ごしたり、客観的に見ると過酷な訓練に身を投じたり、割と充実した毎日を過ごしていたところ…… 施設長室へ呼び出されて、予期せぬ御願いを聞かされる羽目になった。


「第三孤児院での合同演習ですか?」

「えぇ、藤堂氏と九条博士からの依頼です」


のほほんとした雰囲気で些細(ささい)なことのように、希少なエルフ科の亜人種(ヴァネットせんせい)(のたま)う。


既知(きち)の前者は強靭兵計画の統括(とうかつ)者というより、小角の生えた娘を溺愛する強面(こわもて)の親父さんな印象だが… 態々(わざわざ)、他の財閥関係者に視察を打診しているとの事で、単なる演習の範疇(はんちゅう)に収まらないだろう。


「あちら側の進捗報告を兼ねた評価試験の一環でしょうね、都合の良い()()()()にでもなってきます」


伝え聞く限り、第三孤児院の被験者達は某博士の教導を受けて、既に数人が異能に目覚めている事もあり、凡庸な先達(プロトタイプ)として後押しするのも(やぶさ)かではない。

|º▿º*) 遅筆ですけど、ボチボチと頑張っていきます


『続きが気になる』

『応援してもいいよ』


と思ってくれたら、下載の「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] イルカペイントは好きだった 実用化できるのかよく分かりませんが Fは作品自体は嫌いじゃないのですが 重すぎるしエロはまったく好みじゃなかったなぁ
[良い点] 耳ズボがお約束になりつつありますね……猫さんお気の毒m(_ _)m
[一言] 更新お疲れ様です!(`・ω・´)ゞ ミコトがまた被害を、、しばらく頭なでなでとオウカには警戒してそうですね、、。 ところでユウくん食に関しては興味が無さすぎる、、本人的にはそれっぽい理由な…
感想一覧
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