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世の中は政治的安定を得るため多数派に都合よく作られている

後日、仔細(しさい)を聞いた当人達は視聴覚室に引き(こも)り、財閥が管轄する都市群の周辺に生息している小型幻獣の映像資料を眺めていた。


何となくついてきたミコトは少し薄暗い室内が落ち着くのか、数分前から眠気に誘われて船を漕いでおり、挙句(あげく)の果てにユウの左腕をキュッと抱えたまま肩にもたれ掛かっている。


「…… 猫耳が頬を(かす)めて(くすぐ)ったい」


時折揺れるそれに意識を()らされながらも、触りたくなる誘惑を抑え込み、大型ディスプレイに映る獣脚類の幻獣ディノニクスに視線を戻した。


小型と()えども体高2m前後、体長3m近くあれば獣毛を備えた立派な恐竜にしか見えない。この系統は飢えた状態だと共食いをする事もあり、映像の中では二匹の近似(きんじ)種が互いに噛み付き合い、尖った爪なども振るって血飛沫を()()らしていた。


(攻撃手段が牙と爪、棘付きの尻尾だけだから、まだ単調か……)


などと高を(くく)っていたら、劣勢側が大気中の現化量子を口腔(こうくう)に収束させ、至近より火球を吐き出す。


“グギャァアアァアアッ!?”


躱し(そこ)ねた優勢側は悲鳴を上げるが、咄嗟(とっさ)の音量調整が奏功して心地よさそうに仮眠する猫さんを(おびや)かすには至らない。何やら、柔らかい頬が押し当てられた部分に少量の涎が染みてきている感触は気にせず、再び視聴している映像資料に傾注(けいちゅう)していく。


画面上では先程の火球で片眼を焼かれたディノニクスが暴れており、激しく振り回されていた棘付きの尻尾が偶然にも、火属性らしき近似(きんじ)種の鼻っ柱へ直撃した。


“グォオッ”


短く()いた相手は(ひる)んだのか、後退(あとずさ)ってから反転し、傷だらけになった身体を酷使して走り去る。どうやら生存を賭けた闘争は痛み分けになれども、双方の負傷度合いを見る限り、他の幻獣に狩られるのが関の山だろう。


(眼前の敵に固執せず、広い視野を持たないと同じ羽目になりそうだ)


継戦の観点から、踏ん張りどころを間違えて窮地(きゅうち)(おちい)らないよう(いまし)め、続けて生物学的には蜂目で強靭な(あご)を持つ労働階級の “ヴァリアント・ワーカー” や、襤褸(ぼろ)(まと)って低空に浮かぶ上半身だけの騎士亡霊 “ホロウ・リッター” などの特徴も頭に詰め込む。


その際に鉱物で体表が覆われた四つ肢の岩石獣、ロックイーターが出てきてソウジを連想したのは致し方ない。自衛以外の目的で他生物を襲うことは無いが、周辺一帯の鉱物資源や建物を齧って食べ尽くすので優先駆除対象に指定されている。


ついでに補足しておくと熟睡しているミコトは体高3~4mに及ぶ、中型種の黒豹アーテルメルムに近しい変性因子を持っているため、断じて “猫さん” など生温(なまぬる)いものではなく猛獣の類だ。


「ん、うぅ」


微かな寝息を漏らして頭のポジを改善すべく、枕代わりの肩上で位置を微調整する姿からは想像できないが、素の身体能力だけでも相当に強い。


希少かつ強壮な人型幻獣の因子を有する鬼娘のオウカには及ばなくても、十分な脅威である。


「… だから亜人は排斥対象になってしまう」


系統によっては徒手空拳で十分な殺傷能力がある上、堅くて鋭い爪牙が伸びたり、毒や酸を吐けたりするので、現化量子の適合者でもない一般人からすれば危険なのは事実。


さらに暴走して変性因子が励起(れいき)を始めてしまい、本当に人ならざる幻獣の姿に変わり果て、街中で捕食被害を出した事例も(わず)かに存在していた。


(最近、複数人の若い男が死亡した事件だと、亜人の少女を路地裏へ連れ込んで暴行していたようだから、自業自得にしか思えないけど……)


自身にも鬼人の因子が移植されている事から、未だ身体的な変異をきたしていなくとも溜息する。


基本、世の中は政治的安定を得るため多数派に都合よく作られており、マイノリティの権利擁護などは社会が安定していて、人々の暮らしに余裕がある前提で成り立つ綺麗事に過ぎない。


“復活の日” 以降の疲弊した新暦世界の各地で望むべくも無いのは、多くの財閥企業が庇護下の都市群にて弱者撲滅の思想や、貢献者に対する優先主義を採用している現状からも明らかだ。


「危険視されている少数派とか、肩身が狭いね」


恐らくヴァネット先生はそれを理解させるため、亜人が読むには不愉快な内容の主義主張が記された書籍を勧めているのだろう。おれもオウカの次に “亜人は生まれながらに罪人だ” と主張する例の物を読むように言付けられていた。


少し気になって端末で筆者を調べたところ、違法薬物の副作用で幻獣となり果てた亜人に妻子を襲われ、眼前で捕食された人権活動家だったので気の毒に思ってしまうが… 過激な主張に賛同はできない。


「個別的な善悪の問題を全体に結び付けて(あお)られても、亜人種に対しての偏見(へんけん)と分断が深まるだけじゃないか」


「んぅ… どうしたの、ユウ?」

「いや、何でも無いさ、起こして悪かった」


自然と声が大きくなり、瞼越しの瞳を擦りつつ目覚めたミコトが掛けてきた言葉に応え、暫時の思索を打ち切って大型ディスプレイの映像を停止する。


もう遅い時間に差し掛かっているため、ここまでに留めて二人で機器や資料の片付けを済ませてから、最後に視聴覚室の電源を消して廊下へと出た。

基本、一人一票の選挙形態だと、ボリュームゾーンの年代に合わせた政策が採用されます。日本だと高齢層の人口が多いので、そこから票を集めるのです(*'▽')


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― 新着の感想 ―
[良い点] なるほど…… 冒頭でも描かれていたように厳しい世界なんですね……
[一言] 更新お疲れ様です!(`・ω・´)ゞ幻獣同士でも捕食し合うんですね、、それにしてもこんな映像があるとは、映像に収めるのはすごく危険ですしね、、。 所でミコトはほんとに自由ですねw ユウく…
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