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私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
大学1年の冬

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そんなに寒くない湘南

 廻谷巡、関東に引っ越してから迎えた初めての冬。天気予報では最強寒波が押し寄せていると言うけれど、雪国出身の私にはなんてことない。いまごろ故郷、福島県猪苗代はドカ雪だろう。


 休日の朝10時、ちょっと早めに起きたので、雪の降っていない冬をエンジョイするために秋葉原あきはばらでオタ活でもしてこようと思う。


 洗顔して歯磨きして化粧水塗ってショルダーバッグに財布とスマホと水を入れていざ出発。きょうの朝食はゼリー飲料。


 バスと電車を乗り継ぎ、待ち時間を含めて2時間弱。秋葉原に到着、上野うえの寄りの広場に出た。


「さっむいっ!」


 寒いじゃん! え、なんで!? 風強っ! ビルの間を吹き抜ける乾いた風が肌を突き刺す。思わず目を閉じた。


 洒落にならん。街を歩いている場合じゃない。欲しいものを買って京浜東北線に乗車。東京より少し南の街で遊ぼうと神奈川県の北端、川崎かわさきで降りた。ホームはビルに覆われ、採光性のあるコンコースが外気を遮断して快適。寒くない。


「寒い! アキバと変わらん!」


 独り言、周囲の視線も冷たいよ。


 川崎も駅舎の外に出たら寒かった。目の前の地下街へ下り、ふらふら歩きながら見つけたゲーセンで少し遊んで京急川崎けいきゅうかわさき駅から快特かいとく電車に乗り横浜よこはまで下車。JRの川崎駅と京急川崎駅は別物で、ゆっくり歩いて10分ほど離れている。


 やっぱ寒いんだよなぁ。


 晴れていても乾いた風が強くて痛い。


 降りた電車に再び乗り込み横須賀中央よこすかちゅうおう駅で降りてみたものの、更に強風だった。


 これじゃ私、ほとんど乗り鉄してるだけじゃん。なお電車オタクではない。それでもだいぶ路線を覚えてきた。


 ナビを頼りに横須賀の風に吹かれながら横須賀駅を目指す。海に面したデッキをひたすら歩く。これ、バスに乗ってもいいくらいの距離だ。それに気付いたときにはもう横須賀駅はすぐそばだった。京急線の横須賀中央駅とJR横須賀線の横須賀駅は徒歩20分超だった。この距離だとバスなら5分くらいだと思う。


 山手線より大きいサイズの液晶モニターがたくさん装備された電車に乗り、大船おおふな駅で下車。ここはそんなに風が強くない。


「それで、茅ヶ崎に帰ってきたというわけか」


「そういうわけ」


 茅ケ崎駅に降り立ち、耳に馴染んできた『希望の轍』と微かな潮の香り。お腹が空いたので南口の牛丼チェーンに入ると、カウンター席で沙希ちゃんが着丼を待っていたので隣に座り、きょうのことを話した。沙希ちゃんも私も牛すき鍋膳を注文。当然、先にいた沙希ちゃんのほうが先に着丼した。鍋の下で固形燃料が青く燃えていて、つゆや具材がぐつぐつ煮えている。


 16時の店内は閑散としていて、ほかの客はテーブル席にお爺さんが一人。こちらも牛すき鍋膳を食べている。


 黙々と頬張り退店、16時半。1ヶ月前のクリスマスころ、日没後のコントラストは藍が強かったのに、きょうはまだ白んだ空が徐々に紅に染まりつつある。


 ゲーセンで少し遊びたい、よし行こかと交わし、歩き出す。向かい側まで数メートルの小さな横断歩道を渡る。


「茅ヶ崎って、あったかいんだね」


「雪国と比べればね」


 エスカレーターでコンコースに上がり、北口へ抜けた。自ら発した言葉とは裏腹に、南口より少し風が強くて寒い。


「きょうね、アキバと川崎と横須賀に行ってきたんだ。そしたらめっちゃ寒くて、でも大船駅はそんなでもなかった」


「湘南は冬でも南風が入ってくるからね。加えて丹沢たんざわとか、大きい山から離れた広い平野へいやだから、吹き下ろしの風が届きにくい。内陸とか東京湾のほうに行くと南風はビルとか半島に阻まれて北風が強くなるよ」


 ただし湘南でも冬は北風が優勢。海が開けているから他地域より南風の割合がやや高いのだとか。


 晩秋のオープン以来、一人でちょくちょく通っているゲーセンに到着。沙希ちゃんは『うまい棒』を大量ゲット。私もこれは大量ゲット。続いて私だけ美少女フィギュアが景品のクレーンゲームをプレイ。救出活動が難航し、野口英世の先輩、北里柴三郎を4枚両替して小銭パンパンだった財布がみるみる極寒になった。


 景品袋に入れたフィギュアを提げ、外に出た。ビル風が異様に寒い。しかし私は後悔していない。だって、美少女の命を救ったのだから。

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