……ないの??
桐島さんに連れられるままに走る
「ちよ、桐島さんどうしたの!」
「いいから着いてきて。あいつを撒かないと」
「撒くの!?てか田端さんかなり運動できる人だから逃げ切れるとは思えないんだけど!?」
「大丈夫だよ。旧棟は空き教室多いし、見つかってもすぐ逃げられるし」
「桐島さんが先に走ってるせいで何も聞こえないんだけど!?」
そのまま手を引かれて走り続けて着いたのは、旧棟だった
「はぁ……はぁ……、な、なんで手を引かれてただけなのにこんなに……疲れるの……」
「男子と女子は根本的に差があるからね。しょうがないよ」
桐島さんがそう言った瞬間、旧棟にカツカツと足音が響く
「……旧棟にもう来たのかあいつ」
「てかなんで僕たち田端さんから逃げてるの?」
「……あのままだと」
そう言って斜め下を向く
「……神崎くんに見て欲しくない私になりそうだったからかな」
「僕に見て欲しくない桐島さん?」
田端さんらしき足音が近寄ってくる
「ん、なんか足音近づいきて……っちょ!」
僕がそう言いかけたところを桐島さんが僕を強く引き寄せて神崎の頭を自身の体にくっつける
「静かに。あいつが来てるから。ごめんね、少し乱暴で」
そう小さく囁いてくる
「全然大丈夫だよ。なんか、ワクワクするね」
「わくわく?」
「かくれんぼしてるみたいでちょっと楽しい」
久しぶりにやってみると結構楽しいかも!
「……ほんとに神崎くんは危機管理能力ないね。そんなんだといつか襲われちゃうよ?」
結構言われるけどさ、そんな訳ないじゃん。猫山さんも田端さんも桐島さんも優しいし。
あるとして突然知らない人にとかなのかな。怖。
「そんな訳ないじゃん。今まで危なかったこと……桐島さん以外ないし」
あれ、そういや桐島さん1回危なかった気がするけど……、あんまり覚えてない……
「……私の事嫌いになった?」
そう言いながら頭を撫でてくる
「まさか、全然気にしてないよ。桐島さんだもん、信用してるし」
「……ほんと、可愛いね。神崎くんは」
「そんなことないよ?」
普通に男だったから、貞操逆転してるせいだろうけど、可愛いって言われるのまだ慣れてないんだよね~
「昨日一日会えなかったからもう少し近づいて」
「いいね~」
そう言ってピッタリくっ付く
「……なんか、いつもと違うドキドキの仕方してる気がする」
「いつもと違う?どういうこと?」
「今はさ、あの女から逃げてる状況でしょ?」
「そうだね?」
「……なんか、こう」
そう言って吐息を吐いて呟く
「疼くっていうか……クルものがあるんだよね。バレないようにイチャイチャしてる気分」
「ほへ~、そんなもんなの?てかクルものがあるって何?」
「……男の子には、分からない感覚、かな?」
「男の子には分からない感覚?」
「……うん。でも、幸せなことに変わりは無いよ。トロトロになりそうで、いいね。譲らない」
「な、なるほど??やっぱり男の僕には分からないなぁ……」
「それでいいんだよ。神崎くんは……私がいつか嫌でも教えてあげるから」
「え?い、嫌でも??」
「うん。これは何があっても誰にも譲らない……無論、田端響さんにも……ね。」
そう言ってより力を込めてくる
「えっと……桐島さん?」
「ん?どうかしたの?」
「なんだろ……元気?」
「?何も変わらないよ。何かあったの?」
「いやさ……なんか、様子おかしかったし……」
「……これが素だよ。どう?私のこと、嫌いになった?」
そう聞く桐島さんの声は震えている気がする
……あれ、これ、大丈夫??
ん~、でも、学生だしそんな考えも時間が解決するだろうし、僕に興味無くすかもだし。別にいっか
「全然。そんなに心配しなくていいって。どう?僕が桐島さんのこと嫌いになったように見える?」
「……見えない、かな」
「じゃあその通りだよ。嫌いになってないよ」
「神崎くんって……なんか、あれだよね」
「ん??」
「……なんでもない。」
「そう?何か嫌なことでもあった?」
「ないよ……神崎くんはいい男だよ」
「うっそだ~。桐島さんは僕しか男を知らないだけだよ」
「……ねぇ、神崎くん」
桐島さんはやけに湿度を出している
「ん?」
「ごめん……」
と涙目で言う
「え、ちょ、ちょっと??どうしたの??」
なんで泣いてるの!?やっぱ僕に思うことがあったのかな……?
「神崎くんにまた……キスマつけたい」
そう言う桐島さんは涙を流して僕を見つめる
「ちょ、ほんとになんで泣いてるの」
僕がそう言うと桐島さんは僕の肩の辺りに目を当てる
「ごめん……なんか、興奮しすぎて涙出てくる」
僕の肩が少し暖かくなる
泣いちゃった。てかキスマ?……まぁ、泣き止んでくれるならいっか。
……興奮しすぎて涙出るとかあるの??
「そっかそっか。ちゃんと言えてえらいね」
そう言って頭を撫でる
「……うん」
「獣さんなのにちゃんと言えるなんて、とっても偉い獣さんなんだね。じゃ」
そう言って制服のボタンを2、3個外す
「ほら、いいよ。チュってして?」
そう言って少し首傾ける
「……」
桐島さんはその光景を脳に焼き付けるとでも言わんばかりにじっと見つめる
……ちょっとおちょくっちゃお
「桐島さん?僕だって恥じらいくらい人並みにあるんだからさ……その」
そう切って少し目線を泳がせる
「恥ずかしいんだけど……」
「……っ、ほんとに、そういうところだから、」
桐島さんは潤んだ瞳をさらに熱くさせ、 僕の首筋へと迷いなく口づけた。
「っ、ちゅっ……」
柔らかい感触と、わずかに熱を帯びた吐息が直接肌に触れる。
さっきまでの張り詰めた緊張が嘘のように消え去り、代わりにじっとりとした甘い湿度が旧棟の教室に満ちていく。
「ん……ちゅっ……はぁ……」
吸いつくような、それでいてどこか執拗なリップ音が生々しく耳を直撃する。
「ふぅ……はぁ……」
数秒後、満足したのか名残惜しそうに離れた桐島さんの口元には、銀色の細い糸がキラリと光っていた。
彼女の顔を見ると、さっきまでの涙が嘘のように引きつり気味の紅潮に染まっていて、言うとすれば、完全に「キマっている」顔をしていた。
「……ふふ。ありがとう、これで気が紛れたし……うん、私のって感じがする」
「わたしの??」
僕は桐島さんのものなの??
「気にしくてもいいよ……ふふっ」
満足げにフッと微笑む桐島さんだが、その目は全然笑っていなくて、むしろ狂気すら孕んでいる。
……あれ、てかこのキスマどうしよう。
「あのさ、」
「ん?」
「絆創膏って……ある?」
「……あ。」
あれ、この反応……もしかして
「……ない、かな。多分」
「スウゥゥゥッ。え、どうしよ」
「ご、ごめん、後先考えなくて」
う~む。でもここでいいよって言うのはなんか違うし……あぁ、あれかな
「じゃあ、許してあげる代わりに、二人でバチバチやられると、挟まれてる僕の寿命が普通に縮むから、次から仲良くできる?」
キスマくらいでいいよって言ってくれるなら……まぁ、いいかも???
「……少し考える」
「なんでよ~、そこはさ勿論!!私たちマブダチ友達!ってなるところじゃないの?」
「いや……まぁ、譲れないものがあると言うか。そんな簡単に友達にってはできないかな?」
「そっか。桐島さんはさ、僕のことも友達って思ってる?」
もしかして桐島さんって友達の基準が高い??
「……内緒。もしかしたらそれ以上かも」
「……あ、あれ??」
え、友達だよね??それ以上ってなに!?知らないよ!?
「ほら。戻ろ?そろそろチャイム鳴っちゃう」
耳を立てると田端さんの足音が無くなっている
「いいけどさ、絆創膏……」
「……えっと、えっと……う、うーむ、」
「ま、いいや。とりあえず戻ろっか。あと、桐島さんは反省してね」
「……ごめん、わかった」
そう聞こえて、2人揃って校舎へ帰った
「やっぱり、朱莉ちゃん……」




