8話
式典が終わり、最後の演目の晩餐会が始まった。
各国から招かれた賓客たちが長テーブルに着席している
上座に据えられた新郎新婦の席は、他のどの卓よりも一段高く、ニマルディア王国の紋章が刺繍された深紅のテーブルクロスが敷かれていた。
ローストビーフを切り分けると、そのままサリーナの口元へ運んだ。
ハルト「はい、さーちゃん。これ美味しいよ、食べてみて。」
サリーナ「うん、美味しい。」
ハルト「……今日、さーちゃんすごく綺麗だった。まだ言い足りないくらい。」
サリーナ「ハルトかっこよかったよ。」
ハルト「……そう? 俺のこと、かっこいいって思ってくれたんだ。
じゃあさ、今夜……ちゃんと見せてあげる。もっとかっこいいとこ。」
サリーナ「もっとかっこいいところ?」
サリーナが無邪気に聞き返してきたものだから、ハルトは一瞬だけ言葉を詰まらせた。
ハルト「んー……それは、寝室に戻ってからのお楽しみ。」
サリーナ「寝室....?」
ハルト「大丈夫、怖いことじゃないよ。ただ……俺がさーちゃんのこと大好きだって、もっと分かるようにするだけ。」
サリーナ「そう....?」
晩餐会が終わりを告げ、ハルトはサリーナを促して王宮の奥へと歩を進めた。やがて寝室の扉の前に辿り着く。
重厚な樫の扉をハルトが片手で押し開けると、そこには王族の婚姻にふさわしい広さの部屋が広がっていた。
扉が閉まった途端、ハルトの手は迷いなくサリーナの腰に回った
ハルト「やっとふたりきり。」
額をこつんと合わせて、鼻先が触れそうな距離で囁く。
ハルト「ねえ、さーちゃん。今日の俺、ちゃんとかっこよかった?」
サリーナ「すごくかっこ良かったよ。」
ハルトはサリーナの言葉が終わるか終わらないかのうちに、唇を塞いだ。深く、貪るような口づけだった。腰を抱く腕に力が入り、サリーナの体がハルトの胸板にぴたりと密着した。
サリーナ「ん……っ、」
ハルト「ずっと我慢してた。式の間も、隣で笑ってるさーちゃん見て、触りたくておかしくなりそうだった。」
ハルトの指先に淡い氷の粒がちらりと舞い、すぐに溶ける。魔力の制御が甘くなっている証だった。
ハルト「痛くないように、魔法かけるから。」
そう言いながらサリーナを抱き上げ、寝台へ向かった
サリーナが何か言いかける前に、その背中はシーツに沈んでいた。
ハルトは覆いかぶさるように両腕をサリーナの顔の横に手をつく。見下ろす角度から、サリーナの表情のひとつひとつを逃すまいとするように目を細めると、空いた手のひらをサリーナの下腹部にかざした。痛みを和らげる回復魔法の応用。
ハルト「力、抜いて。俺に全部預けていいから。」
サリーナの首筋に落とされた唇は鎖骨をなぞるように滑り落ち、ドレスの肩紐に歯を引っ掛けて、するりと片方だけ滑らせた。
ハルト「さーちゃんだけだよ、俺の全部。」
鎖骨の窪みに舌先を這わせながら、腰に添えた手がゆっくりとドレスの裾を割って太腿に上がっていく。冷たい指だった。ハルトはその反応を確かめるように、一度だけ動きを止めて顔を上げ、潤んだ目でサリーナを見た
サリーナ「ハルト、、待っ、私、、恥ずかしい、」(赤くなりながらハルトを見つめる)
ハルト「恥ずかしがってるさーちゃん、すごく可愛い。」
太腿に置いた手を止めないまま、もう片方の肩紐にも指をかける。今度はゆっくり、布が肌を離れる感触を味わうように。露わになった肩口に顎を乗せて、赤くなった耳たぶに唇が掠めた。
ハルト「でも、待ってあげない。」
ハルトの中指がサリーナの内腿をゆっくり撫ぜ上げて、薄い布地の際で焦らすように止まる。
ハルト「俺しか見てないよ。ここには、さーちゃんと俺だけ。」
サリーナ「ハルト....ほんと恥ずかしい...。」(目を逸らす)
ハルトが顔を持ち上げてサリーナと目を合わせる。
ハルト「ね、こっち見て。逸らさないで。」
サリーナはハルトを見つめ返した。
ハルト「……好き。ずっと、ずっと好きだった。」
ハルトの唇はサリーナの瞼に落ち、頬骨をたどり、顎の線をなぞって、もう一度その唇に重なる。先ほどより深く、確かめ合うような口づけだった。




