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第7話 白骨の進行者

ここからアスタリアの建国は厳しくなる。

 アスタリア達がウィリア魔法界を解放した数日後、大陸の西側にあるへんぴな街で密会が行われていた。


 その街の貴族宅の応接室にそいつは現れ、とんでもない話を始めた。


「おやおや、呼び出しておいてできないと言うつもりか?」


「いえ!そうわけではないのですが。なにぶん相手は大魔法使いの一角、そう簡単には殺せないと思うのです」


 暗い部屋で姿が見えない謎の人物は、封魔の面をつけた魔物の貴族を見下して話を続けた。

 謎の人物はどうやらここの貴族より上の立場らしい。たが、彼は魔人であり魔王に引けを取らない実力者のはずなのだ。

 その彼が一切かなわないほどの相手、そんなのは大魔法使いか魔王か人間の王くらいしかいない。


「それならあれを使えばいい。成功すれば貴様を魔王の一角にすることを約束してるのだ。できなくてもやれ」


 相手の高圧的な声にビビりながら貴族の魔物はその仮面をとって、(ひざまず)いて謎の人物に誓った。


「必ず成功させて見せます。ちなみに、その方法というのはなんでしょうか?」


「決まってる。鉄壁国家(シルディア)に封印されたあれを解放するのだ。そうすれば簡単にあそこなど落とせる。邪魔になるやつは早めに陥落させないとな」


 謎の人物はとても偉そうな態度で貴族を見下し、こいつはどうせダメだなという目を向けている。

 貴族は自信過剰で、なんでこんなやつの言うことを聞かねばならないんだ!と思いながら、やってるやよ!と目で訴えかけた。


 こっちにだってプライドはある!魔王になれば変わりゆく世界の支配者の1人になれるのだから、俺はやってるよ!


 ちょっと餌をちらつかせれば簡単に従ってくれる。謎の人物はなんてちょろいのだろうと思った。

 彼の目にやる気が満ちたのを見届けて、謎の人物は「それじゃあ、任せた」とだけ言い残してそっと姿を消した。



 残された貴族〈魔人バーレイド〉は、偉そうなあいつに対してムカついて歯軋(はぎし)りした。

 暗い部屋のカーテンを全開にして歩いて帰る相手の姿を目に焼き付けた。いつかお返しするその時まで忘れないために。

 でも、これも謎の人物の計算通りである。プライドの高い奴ほどコケにすれば勝手に本気を出してくれる。

 謎の人物の思惑通りと知らずにバーレイドは鉄壁国家(シルディア)へ行く準備を始めた。

 そして、魔王になったら偉そうにさせてたまるかと憎悪の火を(くすぶ)らせた。その火が燃え盛る頃には、死が目の前に迫ってるだろうがね。




--------------------




 その話に出た鉄壁国家(シルディア)ではちょうど王の葬儀が行われていた。

 魔王デルタに意見しようとしただけで殺されたかわいそうな王様。そんな彼を(とむら)うために多くの国民が城の前に集まっている。


 そうしてる中で一部の兵士や大臣にそっとバーレイドは近づいてあることを吹き込んだ。

 それは、王を殺した魔王デルタは魔王メアの話に興味を持った。それで自国が危険だと思った王が止めようとしたが、その行動で殺された。王が殺された原因は魔王メアと裏にいる大魔法使いだ。という内容である。

 このことを聞かされた者達は激怒した。直ちに報復しようと考えたが、そのまま行っても返り討ちにあうだけだ。

 だから、バーレイドが正体を隠しながらアドバイスした。封印された魔物を使えと。


 その魔物は世界を滅亡に追いやれるレベルの厄災級(カラミティー)のうちの一体で、大昔に大魔法使いと勇者が手を取り合って封印した。

 それを再び解き放つのは勇者への冒涜になるが、国民は王を殺した原因への復讐の方が重要なので無視した。

 しかも、相手は大魔法使いだからこの魔物の復活には黙っていないだろう。それを使うかは彼ら次第だが、バーレイドは最後にこれ以外に大魔法使いに対抗できる策は無いと伝えた。

 この魔物を使わないといけないとうい方向に持っていかないとバーレイドも命がないから必死だった。そうでなくても使わせないと魔王への近道が断たれる。


「さぁ、選びなさい。このまま戦って王の後を追うか、奴を復活させて復讐を果たすか」


 色々な人に吹き込んでるうちに、復讐の手段を持ってきてくれた客人として全大臣の前に立たされたバーレイドは、緊張しながら最後の選択の場まで持って行けた。

 ここで復活に持っていけるかがバーレイドの腕前にかかっている。自分のためにも必死にアピールを続けて、この国の伝説にも残る最強のアンデットモンスターを向かわせなければいけない。

 不可侵条約が撤廃された今がチャンスなのだ。今を逃せば厳しくなるかも知れない。


 バーレイドがチャンスを与えて思考を巡らせてる間も、この国のお偉いさん達は冷静に考えていた。

 あの魔物を復活させるのには賛成だが、それを出たとして制御とかはどうするのか。そんなことを考えるのが無駄であること気づいた時には、お偉いさん達が覚悟を決めた顔をしていた。

 椅子に座る年寄り達は立って説得を続けるバーレイドに答えた。


「バーレイド殿とやら、この国はあの王がいなければ機能しません。そうなったここは死んだも同然です。どうか、我らの血で代わりに復讐を果たしていただけませんか?」


 なかなか答えを出さなかったお偉いさん達がようやく答えたことに彼は安堵した。

 そこで一度深呼吸をしてから返答した。


「喜んでやらせてもらいます」


 それを聞けて安心したお偉いさん達は1カ所に集まり、魔法の準備を始めた。

 それは封印を解くためのもので、例の魔物を復活させる上位の人間しか知らない呪文だった。

 詠唱を始めた途端にその場に危険な空気が流れ始めた。

 空には暗雲が立ちこめ、地からは突き刺すような冷気がしみ出した。

 それを感じたバーレイドは謎の人物に聞かされなかった封印場所を察した。

 それがここだ。

 危険だと思った彼はお偉いさん達をおいて走り出し、国を囲む壁の外へと1分もかからずに脱出した。


 その場で復活の魔法を発動させようとした10人は自分達の命を捧げる段階に入った。

 それぞれが罪の意識や大魔法使いへの怒りを感じながらその命を絶った。

 もちろん。ためらいなど一切無い。一気に死んでその命と血を直接ではないが与えた。

 すると、城を中心に魔方陣が広がった。それはとても大きく、直径800メートルくらいはありそうで禍々しい魔力を放っている。

 しばらくするとそこから地面を揺らしながら白骨の大きな腕が現れた。

 それはお城をなぎ倒しながら地面を掴んで残りの部分を外に出そうとしている。

 何も知らない国民は逃げて、何も知らない兵士は攻撃を始めた。


「なるほど、これが白骨龍(ボーンドラゴン)なのか。なんと禍々しい魔力なんでしょう。これは確かに国一つ滅びるな」


 城下町の外にある小高い丘からその様子を見ていたバーレイドは目を見開いて悪人の顔をした。

 封魔の面で見えはしないが、それでもそんんな顔をしてるのはなんとなく分かる。

 この崩壊していく都市を見ればそんな顔にもなるだろう。

 なにせ、自分の行いで国を犠牲にして復讐が行われるのだから。


 何も知らない兵士は一向に効果を見せない攻撃を続けた。

 そのかい無く奴は順調に200メートルくらいある体を頭の方から順に出していった。

 次々に出てくるあり得ない大きさの体の一部に怯えながら攻撃を続ける兵士達も、胴体の途中まで出て翼を開いた瞬間に全てを諦めた。

 翼だけでも250メートルくらいの長さがある。全体の大きさを知らない兵士達も、この翼を見れば全体でどれくらいの大きさなのか予想がついたのだろう。

 兵士達は(ひざまず)いて神と勇者に祈った。この世界が救われるように。


 兵士達が祈り始めた頃には国民は壁の外へと逃げ始めた。そのせいで魔封じの壁から出てしまって、奴に逃げる人が居るのを気づかれてしまった。

 奴は両腕と翼の力で無理やり下半身も引きずり出し、飛翔して都市を上から見下ろした。

 そして、白骨龍(ボーンドラゴン)は固有魔法の《ボーンブレス》で都市を消し飛ばし、そこに残っていた全ての命を灰にした。

 焼いたわけではないが、ブレスを浴びると生き物は灰になるらしい。

 そんな力も含めて災厄級(カラミティー)に認定されてしまったのだろう。その力は本物だ。


「素晴らしい!これなら制御できなくても餌のある方向を示せば良さようですね!」


 バーレイドはその強大な力を前にしても怯むことなく、人間を見下して滅びゆく光景を見ながら笑った。

 生命反応を出せば出すほど奴の《生命を見る目》に見つかって追われる。

 それに引っかからない壁の外に出れば確実に殺される。中に残ってる人達は賢明な判断をした。

 まぁ、バーレイドからしたらどうでもいいことだけど。奴の糧になる人達には感謝しかない。


 白骨龍(ボーンドラゴン)はまだ完全復活できていなくて生贄が必要なのだ。

 奴は殺せば殺すだけ魔力が回復して動きも攻撃も昔に戻っていく。これが大魔法使い〈龍のジュラル〉が作り出した最高傑作なのだ。

 その事実を知らない連中は、ジュラルが魔法界の東で笑ってると思わずにこの大惨事に踊る。

 滅亡の息が次々と人を灰にして魔力を吸うのはジュラルの計算通りだろう。


 その龍の遺骸から生み出された化け物はほんの1時間ほどで人間を狩り尽くした。

 そこで蹂躙(じゅうりん)した分は回復できたが、まだ魔力が足りないようで北にいるアスタリアの魔力に反応した。

 ここから北にまっすぐ進めばアスタリアのケイオスがある。

 バーレイドがその反応を操作して大きく見せるつもりだだが、そんなことをしなくても奴の気を引くくらいの大きな魔力を持っていた。

 元々奴は全ての生き物を殺すようにジュラルに命令されていたので、そのために必要なら大魔法使いでも容赦なく殺しにかかる。

 だから、大空に飛翔して途中で小さな町や村を襲いながら北を目指した。

 その後をバーレイドは黒幕としてゆっくりとついて行った。


 もしもこの白骨龍(ボーンドラゴン)がアスタリアのもとにたどり着けば世界が今度こそ終わるかもしれない。

 ちなみに、こいつはまだ進化を残しているし、名付けもされていない。それをバーレイドが最後の手段として持っていて、命を捨てて名付けすれば進化もして数人以外では倒せなくなる。

 つまり、あの謎の人物のアスタリア殺害計画でバーレイドも本気を出せば世界が灰とちりに覆われることになるのだ。


 白骨龍(ボーンドラゴン)の進化先は骸骨龍王(スカルボーンドラゴン)で、今はない意識を手に入れて生き物を灰に、物をちりにする力を手に入れる。

 そうなることも計算に入れて謎の人物は暗躍してるのだろう。



 この白き魔物は何も知らないアスタリアを目指して進行していった。

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