第5話 真っ黒なコンビ
なんか色々あって私は主の魔物を三体退治した後、大魔法使いの〈猫のケルタ〉と魔王の〈猫王タルト〉の2人と蛇猫同盟を結んでうちの後押しをしてくれることになった。
そのケルタは私の住む小屋の隣の小屋でゆっくりすることになった。その大魔法使いの連れてきた私を釣るための餌のタルト王は帰らせている。
今は向こうで私への支援を準備してるらしい。
ちなみに、あれから1日経っている。だから私は今からもう一度森に入る。
今日で残り全て片付けるつもりだ。
ウルガに今日も仕事を任せていざボス狩りへ!
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出かけてすぐにボスを発見した。
あまり血で服を汚すと洗濯してくれてる人に怒られるから、出来るだけ汚さないように倒そう。
そう思いながら突き進むと、住処の広場に出た。そこには花姫蟷螂がいて、こいつも私を待ってるようだった。
「何?私をそんなに警戒してるの?」
そう聞くとうなずいてくれた。
魔物の中でもこいつはトカゲより頭がいいらしい。こういうのは正直言って相手するのもめんどくさい。
なかなか切らしてくれないし、多分こいつはスピードと知能とパワーに特化してるはずだ。
警戒しながら剣を抜くと、カマキリは分裂して小さくなった。しかも、それが散らばって木につくと花に擬態した。
「マキナ!《目視模倣》の使用を許可!私の代わりにあれをコピーして!」
『かしこまりました。《魔力分裂化》《擬態魔法》をコピーと作成で真似しました』
よくやってくれた。便利そうなものはコピーできなくても真似すればいい。こっちにはマキナもいるんだから、魔法の取得と戦闘を同時に行えば戦いながら成長できる。
てか、こいつの分裂体があまりにも多くてうざいな。いっそのこと全部魔力を取るか?
いや、いいことを思いついた。
「悪いね。カマキリさん、ここで死んでもらうわ」
とっさに思いついたことは息に《魔力強毒素》を混ぜて吐くこと。
これなら近くに寄ってきてるのも倒せる。
そう思ったけど、やばいと思ったカマキリはすぐに一つに戻った。
でも、私からしたらそっちの方がやりやすい。剣にエンチャントをして自分にもスピードアップをかけて一気に攻めた。
やっぱりこれはチートだわ。私の攻撃は相手に合わせてタイプを変えられる。
戦闘スタイルをいくらでも変えられるこの魔法はチートとしか言えない。
仕留めたカマキリの遺体も例の如く収納した。
その時、次の相手が自分からやって来た。
「これはラッキーだね。自分から来てくれるなんて」
そう思いながら視線を少し高くしたら違和感を感じた。
相手は金剛虎だが、なんとなく瀕死のようにも見えた。
こんな巨大な虎を瀕死にできる奴で思い当たるのが1人いた。まさかと思って違和感の元をよく見たら、そこにいたのは〈猫のケルタ〉だった。
「何してんのあいつ」
私は呆れてしまった。そうしていると、ケルタが最後の一撃を加えて虎を討伐した。
その遺体から飛び降りると、ケルタは誇らしげに私に成果を見せつけてきた。何をそんなに誇れるんだ?と思ったら、仕留めた虎に残り二体の遺体を引きずらせていた。
マジかよ。私が出かけてから30分しか経ってないんだけど。
「まさか、一角兎と悪魔の馬も短時間で倒したの?」
「これくらい大魔法使いの基本だよ。なって1年の僕でもこれくらいから楽にやれる」
私は最初っからたいしたことないと思ってたけど、実はケルタってすごい奴なんだね。
感心し直した私はケルタの仕留めた三体も収納した。
ケルタはその様子をまじまじと見て収納を使えることに感心していた。
そんなに珍しいのかな?
『アスタリア様、収納魔法は空間魔法に属していて使える人物なんてこの世界に5人くらいしかいません』
へぇー、意外といないんだ。てか、人物ってことは魔物側だと初めてなのかな?
『魔物側の人造大魔法使いのアスタリア様が初です』
今のはわざと酷く言ったよね!私にはそれくらいわかるからね!
なんのことでしょうと言わんばかりに沈黙した。マキナの返答はなし。
「さて、7体全部倒したのなら周辺は安全だね。少し早いけど戻るよ」
私の言葉に従ってケルタもついて来た。その途中であることに気づいた。ケルタはまだ何かに警戒してるようで、時々魔力出てきた猫の尻尾を出していた。
そう言う私もさっきから蛇の目と舌を出してるのだけど、何か嫌な感じがする。
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しばらく歩くと2人して足を止めた。
大魔法使いともあろう者が、まさか敵の術中にハマるとはね。気がついた時には2人とも別の場所に誘い込まれていた。
私の予想だと幻覚か空間操作だと思うけど、空間魔法は人間しか使えないと言っていた。つまり、こんな場所に人間は来れないから幻覚の線だろう。
「ケルタ、やれる?」
「いや、これは多分あいつのだから、解除できないし安心していい」
ケルタはこれをやった犯人に心当たりがあるらしく、警戒を完全に解いた。
「村の近くまで来てるんだろ?さっさと解放してよ」
ケルタがそう言うと犯人はクスクスと笑って姿を現した。空中に浮遊しながら見下ろしている。
「くすくす、私のパートナーどんなのかと思えば、鋭い目と研ぎ澄まされた感覚を持つ蛇だったね」
なんか変な喋り方をするそいつはそっと地に足をついた。
その瞬間、空間が崩れて元の世界に戻った。
ケルタの言う通りに村の近くまで来ていた。
私はこいつが何者なのか気になり出した。大魔法使いに気づかせずに幻覚の海に沈めたその腕前は只者ではない。
「えっと、誰なの?」
「この人は八魔王が一角〈悪夢王メア・ストロナイト〉だよ。君のパートナーになるんだ」
はっ?魔王が私のパートナーになる?意味不明なんだけど。
混乱し始めたところでマキナがため息をつきながら解説を始めた。
『この世界では大魔法使いと魔王は同じ数がいます。それは、魔法界の内部と外部で人間への戒めとして繋げておくためです』
なんでそれが必要になるの?
『この世界では互いに不可侵条約があって手を出せません。それでも大魔法使いの存在を示すために魔王がこちらの言葉を届ける連絡役になって、人間にまだ罪が残ってることを教えて存在を戒めとするのです』
うーん、よく分かんないけどなんとなく分かった。
つまり、この魔王は余り物でそれを私に押しつけられたわけだ。
でも、この流動体のような服を着てる真っ黒な夢魔はセカンドネームを持ってるから進化済みの真の魔王なのか。その点においては優秀なのかも知れない。
「これは挨拶した方がいいのかな?初めまして、私は〈蛇のアスタリア〉です」
「アスタリア、あなた私が魔王として守る。だから、国作りたいなら悪夢国家手伝う」
「ありがとう。これからよろしく」
こうしてドタバタしながら味方を得ていった私は、なんとなく自分自身も強くなってる気がした。
これも大魔法使いの力や体質なのかも知れない。
そう思いながら3人で村に入っていった。
最初に戻ったとウルガに知らせると、私の隣に魔王メアがいるのを見て腰を抜かした。
私はその様子に苦笑いした。
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ちなみに、ここまで進めるのに3日しか経ってない。
本来ならもう少しゆっくりでもいいのかも知れないけど、あまり時間をかけるといけない気がして早足で進んできた。
それもここからは速度を緩めてもいいかもしれない。
そう思ってる間に次の仕事が目の前に置かれた。
「魔王メア、私のそばにいなくていいんだけど」
午前中に仕事が終わったので残り時間でメアがパートナーになったことを伝えた。そこでみんなが魔王がパートナーになる決まりがあることを知らない様子だったので、私を馬鹿にしてきたマキナに一発返すことが出来た。
そのメアが午後の私の仕事について行きたいと言ってきたのだ。
午後は安全になったここに周辺の魔物の村とかに行って来ないかとお誘いする。そこに魔王がいれば確かに来てくれる確率は上がるだろうけど、怯えて逃げてしまう可能性もある。
そう考えると非常に難しい。
「メア大人しくする。2番目に強い魔王は実力分かってる。周りの見え方も知ってるよ」
ここまで行きたいアピールをされると困る。ここで置いていったらウルガが死ぬかも知れない。
てか、実力がある割にはこの子って私に従うんだね。魔王って対等みたいなイメージだったんだけどな。
数日後にケルタから聞けることなんだけど、メアは大魔法使いを信仰する魔道教を信仰していて、その中でも爬虫類の大魔法使いを彼女は信仰してるらしい。それで蛇の私に従ってるのかも知れない。
とりあえず、放置は逆に被害が大きくなると思って連れて行くことにした。
ちなみに、ウルガの働き屋さんのお陰でお母さんが使ってた小屋に周辺のリーダー達を集められている。
そこに私が歩いて行くと、小屋に着く前から警戒されていた。
中に入ったときにしかっりとした話をするためには、警戒されてるのは非常に都合が悪い。
だから、メアにも言って極力魔力があふれないように抑えた。
その状態で小屋の扉に近づくと全く警戒されなかった。
だけど、驚かすのもよくないと思った私はゆっくりと扉を開けて中に入った。
「どうも、私が〈蛇のアスタリア〉です」
「私〈悪夢王メア〉よろしく」
大魔法使いと魔王のコンビの登場に場は静まり、2人に対して警戒の目が向けられるようになった。
そうなるのは予想済みで、ここからどこまで話を聞いてもらえるかが問題になる。
ここに集まったのは、ハーピー、烏天狗、ドワーフ、狼の獣人、この4種属の村の集落のリーダー達だ。
「言っておくけど、私は邪悪な大魔法使いじゃないからね。実力も最弱で目的も他と異なってる。お母さんのくれた物の中に不老化があったから歳は取らないけど、それでそっち側と言うつもりもない」
少しくらい警戒を解いてくれると信じて私はそう言った。
でも、あまり効果は見込めなかったか。
そう思ってたらハーピーのお嬢さんが笑い出した。
「ワハハハハ!マジか!自分の弱いところを言ったと思ったら、種族も不明みたいに言うんだ!何この人、面白い!」
ハーピーお嬢さんは楽しそうだが、相手が大魔法使いと魔王だから他の3人は不謹慎だろという目を向けている。
でも、私はこういう子って嫌いじゃない。どちらかというと好き。
「ハーピー、アスタリアに対して不敬」
そう言って攻撃しようするメアを私は止めた。
その行動にメアは意味がわからないという顔を向けた。
「ハーピーのお嬢さん、私はそういう奴が好きだよ。他の方々にも言っておくけど、私は他とは違うの。あいつらが許さないことを私は許す」
この発言でこの人の下なら本当に安全かもしれないと思わせることに成功した。
このままこっちに落とせれば村を拡大して街にまで成長させられる。しかも、ドワーフは技術に優れてるから来てくれれば発展間違いなしだ。
「アスタリア様、我々は他の大魔法使いを恐れています。守っていただけますか?」
烏天狗のリーダーのこの発言には私は笑顔で返した。
心の底からの明るい笑みなんて久しぶりに出した。
「猫は味方になった。鷹も獅子も蜂も手を出せない環境で私が率いて守ってあげる。この命が尽きるまで後ろに居なさい!」
こう言ってあげると4人は跪いて私に契約を求めてきた。
私は収納魔法からカップと水を出して、例の儀式をやってこいつらを完全に配下にした。
ちなみに、魔王は配下にしたくても強すぎるので契約をはじかれてしまう。そのせいで誰も魔王を配下に入れていない。
「さて、あなた達にはうちに引っ越してもらうけど、住居が足りないから手を貸して。それと、食料も足りないからいい案があれば言って」
うちの問題でもあるこの二点に焦点を当てて意見を求めた。
ここでメアが何か言っても良かったのだけど、言ってたように大人しく座っていた。
私がメアの様子を気にしていると、獣人と烏天狗から意見が出た。
「食料ならそちらの獣人に木の伐採をさせてる間にこちらで狩りに行かせます」
「肉はそちらに任せますが、農業を我々に任せてはもらえませんか?水は井戸か魔法を頼ればいいでしょうし、どうにかなると思います」
食料は2人に任せていいかもしれない。
私の配下になった以上、出来ない仕事をさせろとは言わないはずだから。
「なら、2人の方にお願いする。食料の調達はそっちの方がうまくできるだろうから期待してるよ」
期待してる。そう言ってあげると2人とも嬉しそうに「はい!」と返事をした。
食料はこの2人に任せたけど、他のことでドワーフとハーピーが意見をした。
「私の方で出来るのは服を作ることかな?うちでは綿花を栽培してるから、こっちの農場を残してくれれば綿織物を作るよ」
「俺らは大工や鍛冶屋として建築や技術面で働くよ。ドワーフってのはそんなもんだ」
うわぁ、この方々めっちゃ頼りになる。
一気に発展しそうだわ。
と思ってるとマキナが『1ヶ月で南を支配できるでしょう』と言ってきた。
こいつの計算でそんな数字が出るなんて、魔王2人の援助があるとはいえ、ありえないでしょ。
そう思いつつ4人に仕事を任せることにした。
「いきなり現れた私に守らせろとか、発展させて国にしたいから働いて欲しいとか、正直申し訳ないと思ってるけど、どうかよろしくお願いします」
私がこうすると4人も静かに頭を下げた。
主人に頭を下げさせて自分達が頭を下げないわけにはいかないのだろう。
でも、これで順調に行けばすぐにでも建国できる。まだ魔法界の100分の1しか支配できてないけれどね。




