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第4話 蛇と強者衝突

 回復した私は死体蹴りしてから次の獲物を狩るために移動しようと思ったけど、せっかく仕留めた道具の素材になる遺体を放置するのは良くないと思って回収することにした。


『分かっています。収納魔法の取得ですね。《大収納庫(ビッグポケット)》を取得しました』


 マキナが優秀で助かったよ。

 そう思いながら空間の穴を開いて中にサイクロプスの遺体を入れた。そのついでに少し場所を戻って蜘蛛の遺体も入れた。

 それで次の獲物の狩りに行く準備ができたから、今度は洞窟を目指した。村からそんなに離れてないところにある洞窟へ。


 そこに着くと中からまあまあの魔力を感じた。

 主の魔物(ボスモンスター)達はデカイのばかりだけど、その中でもタイプが分かれてるっぽい。

 もしかしたら、さっきのトリッキーな蜘蛛やパワーのサイクロプスと違って、防御と攻撃の両立型かもしれない。

 そう思うと剣を即席にした自分を悔やんだ。相手が強いならチート縛りはやりすぎかもしれない。てか、使用禁止にしてるのは魔力ドレイン系と即死系で、強化系は禁止にしてないからまだチートかもしれないけどね。

 そんなことを考えていると、相手の方から迎えに来て私を口に咥えて奥に連れ込んだ。


『アスタリア様、《光源作成》を取得しました』


 暗い場所に連れ込まれて光の魔法を取得出来た。それを使って洞窟を明るくすると、それに驚いて私は放り出された。

 相手は鎧蜥蜴(アーマーリザード)で私を強者として見て、若いうちを芽を摘んでおこうとしたらしい。

 ここには外より濃い魔力が充満して、辺りには犠牲になった強者の遺体が散らばっていた。その遺体からも強い魔力が残留しているので、目的は早めに芽を摘むことで間違いない。

 私としては願ったり叶ったりで、こいつをドレスで動きにくいけど剣で相手することにした。


「悪いけど、私は多分食べられても死なないよ。でも、そんなの気持ち悪いから仕留めさてもらう」


 かっこつけてそう言っていると、トカゲが素早く動いて目の前に接近してきた。

 これは《速度上昇付与》の力だとすぐに分かったので、私はさっきかけた分で急いで下がった。

 すると、それ以上の速度で前に出て攻撃してきた。硬い指で私の体を押さえて一気に地面に叩きつける。


「グファッ!なにこれ強いんだけど」


 油断したわけじゃない。全集中してたのに速度負けしてもろ攻撃を食らった。

 ただ、そのダメージは《自己再生》で一気に回復してノーダメージ状態にした。そしたら、もう一回力を込めて地面に押し付けてきた。


「なっ!こいつは防御と知能に優れた奴なのか!これはマジでやらないとまずい!」


 そう思った私は縛りプレイで鍛えるのをやめてマジの戦闘に切り替えた。

 まず、このまま捕まってるのは危険だから《魔力吸収》を発動して相手の力を削ぐことにした。

 それを始めた途端、相手は私から離れて洞窟の結構奥に逃げた。

 私はそれに驚きながらも立ち上がって体勢を立て直した。


「マキナ!あいつに対抗するための魔法作成を要求する!」


『かしこまりました。分析と解析を並行して行い、最適な魔法の取得を検討します』


 これでトカゲへの有効手段は手に入るだろうけど、それが見つかるまでに私が生きてたらいいね。

 そう思うくらいチートへの対抗をしてくるんだよね。なんてムカつくくらい可愛いトカゲなんでしょう。

 余裕はないけどあるフリしてる。だから、これを倒したら今日のところは村に戻って、後日残りを狩るとしよう。

 てか、予想以上に計算外の事態になって私には混乱しかないけどね。マキナ、簡単に勝てるとか言いやがって後で覚えてなさい!


 私が警戒していると、トカゲは向かってこないことに気付いて攻撃をしてきた。

 今度は魔法攻撃で周囲の金属を集めて発動する《鋼鉄砲弾(メタルキャノン)》だった。それには対応できるから真っ二つに切った。

 鋼鉄でも切れるなんて、さすがは主の魔物(ボスモンスター)の一部から作った剣といったところか。

 それを見たトカゲはまるで笑ってるような様子をしてから次の攻撃に移った。今度も周りの金属を集め始めたが、さっきのと違って次のは小さいのをたくさん作っているようだった。


「ちょっと待って。これは小さいのをたくさん撃ってくるんじゃないの?」


 それに気づいた時にはもう遅く。作り終えたそれで《鋼鉄乱射(メタルマシンガン)》を発動して蜂の巣にしようとしてきた。

 間一髪の所で私は近くの岩の裏に隠れたが、鉄と岩ならあっちの方が硬い、少しは耐えるだろうけどあんまり長くは持たないだろう。

 そこで私は次の行動を考えた。《魔力吸収》は近距離じゃないと使えない。しかもこんな状況じゃアンチ魔法対策の弾丸に撃ち抜かれに行くだけになる。

 私のアンチ魔法の数々はこういう物理タイプと相性が悪い。実物は魔力を吸収しても残ってしまう。つまり、この魔法なら魔力を取っても威力を落とさないとそのまま進んでくるということだ。

 こうして対策への対策講じてるときに、マキナからは一切の報告がなかった。見つからないのか、あるいはすでに持ってるからあざ笑うために沈黙してるのか。どっちも最悪だよ。

 岩の裏で考えていると、途中で音が止んだ。気になって顔を出してみると、トカゲがその足でジャンプして突撃してくるところだった。


「マジか。とっさに避けたけど、200メートル先からひとっ飛びで来れるんだ」


 このトカゲの瞬発力を舐めてた。ていうか、見た目では1トンはあるんじゃないかという巨体でそこまで出来るとは恐れ入った。

 これは頭をフル回転させないと後数分で死ぬかも知れない。

 そう思った私はこの命の危機に瀕してる状況で、瞬間的に閃いて倒せる道筋が見えた。


 あー、そういえばチートだもんね。最初からそうすればよかったと思いながら《目視模倣》を発動した。《超速移動》《鋼鉄砲弾(メタルキャノン)》《鋼鉄乱射(メタルマシンガン)》をコピーした。

 その次に《結界魔法付与》で自分に結界をつけて、《守護魔法付与》で物理への守護を固めた。突っ込めるようにしたところで剣に《硬度上昇付与》と《猛毒付与》をかけて、どんなに硬くて強くても一撃で仕留められるようにした。

 ここまで完璧にすれば次にチャンスが来ればやれるだろう。

 そう思ってたらいいタイミングでマシンガンの方を用意し始めた。それには私の笑みもこぼれて仕方なかった。

 相手の準備が出来て撃ってきたところで私は《超速移動》を発動した。元々《速度上昇付与》をかけていたので速度の上乗せになった。

 その速度は弾丸のごとくで、全ての攻撃をわざと受けて効かない様子を見せて驚いたところに一撃入れた。胴体に深めに入れて大ダメージを与えたことで、毒が回る前に絶命した。

 これをようやく倒せたところでマキナがやっと声を出した。


『お疲れ様です。《皮膚硬化》を取得しました』


「いや、もう遅いから。てか、もしかしてすでに勝てる状態なのに気づいてない私を見て笑ってたの?」


『何のことでしょうか』


 うわぁ、この魔法が私に対してドSに成長したよ。

 こんなやり方をしてくるなんて、本当に鬼畜にもほどがある。でも、マキナのお陰で戦い方を学べたと言っても過言ではない。一応は感謝しておこう。死にかけたけど。


 とりあえずこの遺体も回収しよう。役に立つだろうから。そう思って憎たらしいトカゲの遺体も収納した。

 疲れたからすぐに休みたいけど、こんな所でキャンプするわけにもいかないから、村にはここから歩いてゆっくり帰ることにした。




--------------------




 ドレスもトカゲやサイクロプスの血が少しかかって汚れた。お疲れムードも出している。

 そんな状態で村に帰ったら、みんなが私の予想以上に働いて成果を出していた。


「はっ?あれからたったの5時間しか経ってないのに、もうこんな広げたの?」


 私がその状況に驚いてぽかんとしてると、ウルガが出迎えにやってきた。


「お帰りなさいませ。もう7体全てを倒されたのですか?」


「いや、ちょっと戦い慣れてしてないから苦戦してね。疲れたから今日は残りの時間を休みに使おうと思ったのよ」


 出迎えたウルガにそう話すと、彼はちょうど私に報告したいことがあるそうだ。

 私は暇になったのでその報告をしっかりと聞くことにした。


「その報告は聞くから言いなさい」


「はい。拡大のための伐採は順調に進んでいます。土地の整備には少々時間がかかりますが、切り開くだけなら1週間で村の4倍にできます」


 えー?村って直径700メートルの範囲でしょ?それを4倍って人狼70人で出来るのかね?

 と思ったけど、人狼は力のある獣人の進化だから出来るなと考え直した。


「四方八方に広げるけど、まだボスを4体残してるから今日はそんなに進行させないでね」


「かしこまりました。あまりボスを刺激させないようにいたします」


 私は報告を聞いてそう指示をした。だから、自分の小屋に行こうとしたが、ウルガがもう一つ報告があると言ってきた。


「こちらの方が重要だと思うので、しっかりと報告させていただきます。あの大魔法使いの一角がいらっしゃったのでご自宅で待たせています」


 その報告を聞いた私はこいつ何言ってんのと思った。

 だが、集中すれば離れていてもその魔力を感じた。私と同じかそれ以上の魔力を。

 ただ、この大きさなら厄災級(カラミティー)ではないことは確かだ。

 だから、少し警戒を緩めて接触することにした。


「報告ありがとう。指揮と作業に戻ってちょうだい」


「はっ!かしこまりました!」


 ウルガはそう言うと私に一礼してからみんなのところに戻っていった。

 私は汚れた服と血に染まった剣を持って自分の小屋を目指した。

 大魔法使いの1人にこんな格好で会うのは失礼だろうが、あいにく着替えはあの小屋の中にあるから着替えて行くことはできない。

 だから、仕方なくそれで中に入った。


 小屋の扉を開けて入ると、いきなり相手の魔力が跳ね上がった。

 いや、正確には一つから二つに魔力反応が増えたのだ。


「おっ、ちょうどいい所で帰ってきたね。僕の予定とちょっと違うけど、まあこれでもいいかな」


 私の中では最悪のタイミングだったよ。まさか、こんなに早く災害級(ディザスター)の2人と同時に会うことになるとはね。

 こんなのシャレにならない。もしも扉を開けっぱなしにしてたらみんなが心配してくるところだったよ。

 それくらい2人目の方が危険なのだ。


「初めまして、私は南を支配することになった〈蛇のアスタリア〉です。よろしくお願いします」


 私が冷静を装ってそう言うと、大魔法使いの彼がニヤニヤしながら自己紹介を返してくれた。


「僕の名前は〈猫のケルタ〉だ。ここの隣の南東に拠点を持ってるけど、誰かの上に立つつもりは無かったから配下はいないよ」


 彼がそう言い終えると、隣に現れた男性にも自己紹介を促した。

 それに従って彼も笑顔で言ってくれた。


「僕様はこの世界の八魔王が一角!〈猫王タルト〉タルト・ブランシードである!」


 ケットシーの王である魔王タルトは小さいが、感じられる魔力はここにいる誰よりも大きかった。

 魔王が弱いなんて嘘なんじゃないかってくらい強そうだ。


「貴様!今強そうだと思ったな!残念だが将来的には大魔法使いに一歩及ばないのだよ!」


 私の心を見透かしたようにタルト王はそう言ってきて、少しどころかすごく驚かされた。

 しかも、こんなに強そうなのに本当に私達に負けてるなんて。

 そう思っているとマキナが解説を始めた。


『アスタリア様、この世界では魔物の強者が名前で判断できます。この魔王タルトならセカンドネームがあるので、すでに真の魔王に進化してますが、その上の大魔王に進化できるのはたった1人です。故に彼はこの程度で終わりです』


 教えてくれてありがとうね。

 私はそれを理解して、私とケルタにセカンドネームが無いのを確認した。

 こっちの進化はどこまでなのかと思ってたら、またマキナが動いた。


『アスタリア様、大魔法使いはセカンドネーム持ちの真の大魔法使い以降の進化はありません。ですが、今は2人の大魔法使いがその段階に達してから時間が経っているので、次の真の大魔法使いが現れるのはそろそろでしょう』


 本当にありがとうございます!マキナさん!

 なるほどね。つまり、大魔法使いは次の進化だけで魔王を潰せるわけだ。

 これなら本当にこっちが強いのに納得がいく。長い歴史の中で大魔法使いが負けることが無かったのはそういうことね。


「魔王タルト、あなたのおかげでどっちが上なのか理解できたよ。ありがとう」


 私はゆっくりとした口調でどっちが上なのかをはっきりさせて飼い慣らそうとした。

 その時の言葉には魔力が込められているので、タルトには蛇がまとわりついてるように感じただろう。

 実際、言霊(ことだま)を使ったことでタルトは気持ち悪そうな顔をしていた。

 それを〈猫のケルタ〉がタルトに触れただけで解除した。


「新入りさん、タルトは僕の所有する魔王だからいじめないでもらおうか」


 めちゃくちゃやる気の感じられなかった彼から、今は敵意のある魔力を向けられている。

 このまま続けたら猫に遊ばれて蛇の体なんてボロボロにされるだろう。まだ小さいから。

 やられないために私はタルトに向けた魔力をしまった。それを見てケルタも敵意を引っ込めた。


「ちょっとその猫が可愛かったんで遊んでしまったわ。ごめんなさいね」


 上から目線の悪気たっぷりな表情でタルトを見下ろして私はそう言った。

 たった一度のお遊びでタルトは怯えてしまった。その様子にケルタは予想より早く危険になったと警戒を強めた。


「タルト、許してあげよう。相手は子供だし、そんな彼女を正しく教育するためと手を貸すためにここに来たのだから」


 ここでケルタはうまくここに来た理由を置いた。そこから餌を撒き始めるつもりなのだ。

 案の定、私はうまそうな餌の匂いに釣られてしまった。


「うん?どういうこと?」


 さっきまでピリピリしてた空気がすぐになくなった。

 それと同時に私はケルタに興味が完全に移った。


「僕には商売上手のタルトがいる。僕はここに国を築くことに賛成で、彼の後押しを得られるように手配したんだ。僕を仲間に入れてくれるなら精霊猫国家(ウェアキャッツ)は味方になる」


 こんな魅力的な申し出は受けた方がいいのだろうが、相手は大魔法使いの1人だから警戒を怠らなかった。

 だから、私はこれを聞いてみることにした。


「さっき魔王をいじめた私にそんなことを言うとはね。何が目的?」


「僕は楽しければそれでいい。それに、君だけじゃどうせ条約も法律も世界のルールも何も知らないんだし、建国なんてできるわけないからね」


「ごもっともです」


「だから、僕のおもちゃであり大魔法使いの希望として、君には建国して人間の国全てに復讐も兼ねて黙らしてもらいたいんだ」


 〈猫のケルタ〉は味方だが要注意人物。私の中で今は一番的に回したくない相手になった。

 これは手を組まないと後々大変なことになるだろう。


「分かった。あなたを仲間に入れます。それで、これは同盟とするのでここにサインしてほしい」


 マキナに一瞬で作らせた同盟のルールを提示した。

 それをケルタとタルトが目を通して、タルトの承諾を得てケルタがサインをした。

 これで蛇猫同盟が確立された。


「これからよろしくお願いします」


「こちらこそ、さっきのことはちゃんと水に流すからね」


 血塗(ちまみ)れの〈蛇のアスタリア〉と本物の猫のようなお子様〈猫のケルタ〉は互いに立って握手をした。

 これで私は建国まで一歩を進めた。

 突然のことだったけど。

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