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第12話 魔王クレイズ

 四姉妹の大蛇にあたるメンセルがあんな感じでも戦いを終わらせた後、今度は次女の黒蛇のクレイズが少数精鋭で雷鳴国(ボルディアナ)に乗り込んでいた。


 敵は王の死を魔法で把握していたが、敵の襲来に備えて無かったせいで奇襲を成功させてしまった。

 城下町に侵入したケイオスの30人の小隊は、クレイズの指示通りに片っ端から兵隊を切り裂いていった。


「我々の母はここに裏切られた!復讐の時が来たのだから、みんな盛大に血の花火を打ち上げろ!」


 フードのある隠密戦闘服を着た小隊の中で、ただ1人漆黒の服に金の線を入れているボスがそう叫んだ。服に変声機も仕込んでいる。

 その叫びが悲しみと怒りに満ちてるのを部下達は感じて、アスタリアの警備隊であり暗部でもあるその実力を遺憾無く発揮した。


 敵兵は迎え討とうと次々と出てくるが、ただの人間ではアスタリアの加護を受けている部隊の攻撃に追いつけず、出オチのようにすぐに殺されていった。


 さっきから兵隊ばかりをこいつらは狙っているが、それはクレイズがこの国を乗っ取るなら敵意なき住民を殺すべきではないという判断のもとに行われている。

 だから、住民の一部は何かがおかしいことに気付いて城の方を見上げた。


 この事態に焦った国の上層部は脱出を考えたが、時間操作を持っているクレイズの前では無意味で、すでに時間を飛ばして部下を城を囲むように配置していた。

 そこでアリか何かのように次々と出てくる兵隊を相手し続けている。

 30人の部下と1人の隊長、短時間で衣装も作戦も用意してここまでやった。

 作戦の進み具合も高速でいい感じになっている。

 さらに、クレイズにはここから次にすべきことが分かっている。

 だから、城に正面から入って上の会議室を目指した。




--------------------





 下で今も部下が兵士と戦っている。

 そんな中で堂々と待ち構える大臣達、そこに時を操作して突然クレイズが対面した。

 突然現れた時の支配者クレイズに大臣達は動じなかった。


「ふーん、あの王の配下なのにビビらないんだ。以外だね」


 敵であるこいつらをすぐにでもクレイズは殺したいと思っているが、逃げも隠れも動揺もしない老人達に敬意を表することにしてナイフをしまった。

 その状態でこいつらと最初で最後の対話はすることになった。


「顔を見せてください。アスタリア様…いえ、クレイズ様」


 老人の中で一番権力がありそうなおじいさんの大臣がそう言った。

 バレてるならと思って隠密スーツを脱いで床に投げた。

 本性を表したクレイズは、不敵な笑みを見せながら結んでいた漆黒の長髪をほどいた。

 ここの老人達も見とれるほどに美しい黒蛇は、ニヤリと笑って彼らにここで宣言することにした。


「正体を見破ったのも、情報の取得の速さも認めてあげる。だが、あんたらはこれから地下に幽閉する。王を悪役にして近くにいたあんたらも国を陥れようとした悪人にして、今からこの国を私がいただく」


 その発言に老人達は観念した顔になった。

 完全に大人しくなったこいつらにクレイズは頭を下げた。


「すまない。悪くないのに最後を牢で過ごすことにしてしまって」


 これから国を壊そうとしてるのに敵に頭を下げる。

 こんな変な奴なら任せられると思った老人達はちょっとだけ、あのアルメリアの娘とお話しようと考えた。


「クレイズ様、お顔をあげてください。そして、我々の話を聞いてください」


 クレイズはさっきの老人の声を聞いて顔を上げた。

 そして、真剣な目を彼に向けた。

 老人は部屋の一番奥で顔を伏せながら真剣な目の彼女にあることを語り始めた。


「クレイズ様や姉妹の皆様はアルメリア様がこの国に捨てられたと思っているのでしょう。ですが、違いますよ」


 その老人の戯言にクレイズは驚きもしなかった。

 この国に国境を越えて入った時から薄々気づいていた。

 ウィリア魔法界へ都市から続く道が昔に整備されていたらしい。

 その道にアルメリアをかたどった像が置かれていた。

 風化して原型が残っていなかったが、クレイズには一目で分かった。

 そんな物があったということは、本来この国とアルメリアは良好な関係を築けていたということだ。


 それがあんな風になったのは大魔法使いと国々の関係があったせいだろう。

 他の国では大魔法使いは嫌われていた。

 だから、優しいあの人が自分から森に入って、故郷を出なければいけなくなった他の国々を憎んだのだろう。

 それを理解したうえで話の続きを聞くことにした。


「あの方は自分から出て行きました。大昔の王を殺して自分が悪人のように世界に見せて、この国が大魔法使いを擁護できないようにして他国と仲良く出来る歴史を作ったのです。我々はあの方を今でも慕っています」


 さすがに王を殺していたことにはクレイズも驚いた。

 でも、やっぱりあの人は偉大だ。




 続きを聞きたいとは思ったけど、時間はかけられないと思って飛ばした。

 結果、あの人達が部下の数名に連行されて地下牢に連れて行かれた。

 この作戦で重要なのは元王を悪役に仕立てて、その部下である大臣達も悪役にすること。

 これが達成できれば後は自分が支配体制を完成させるだけ。





--------------------





 まぁ、この後も重要じゃないから時間を飛ばすけど、クレイズにかかれば時間も国も支配するのは楽勝だ。

 所々の時間に寄り道しながら進めて、嘘を仕込んで国民を支配下に置いた。


 そして、クレイズも個別条件を満たして魔王になった。

 〈時王クレイズ〉は小隊の全員を自分のものにして国の警備にあたらせることにした。

 アスタリアの狙いだとここはクレイズに任されるのだから、自由にやってもいいだろう。

 そう思っていたら、アスタリアの使いの烏天狗がこの国の王として頑張れと伝えて帰った。




「さて、この国は私の物になったし、早速国の状況を見て回ろう」


 そう決めたクレイズは時の力を使わずに部下の獣人3人をお供にして城下町に出た。

 この国の住民には、王が悪事を働いたから代わりに魔王クレイズが支配することになったと言っている。

 クレイズはアスタリアと違って全ての人間が嫌いなわけではない。

 だから、情報を操作した国民に優しく接して、誰の下にいるのが安全かを教えている。

 そして、姉リスペクトでもあるから母と姉をこの国では尊敬するように促した。


 この国は他国より状況が悪く、国自体が危険な状況にあったらしい。

 だから先代はアスタリアに助けを求めたのかも知れない。

 この国を奪ったのならどうにかしないといけないと思ったクレイズは、姉を支えるために自力で国交を出来るレベルには発展させ直そうと考えた。

 まず、見て回った感じでは満足な食事をとれていないようだったので、先代がため込んだ食料をみんなに平等になるように提供した。


「クレイズ様!ありがとう!」


 いきなり受け入れて感謝してくれた子供達の笑顔を見てクレイズは胸が痛んだ。

 自分が乗っ取ったのに、感謝されて無垢な笑顔を向けられた。

 それは怒りと家族愛のためだけに生きようとするクレイズには衝撃的だった。

 でも、この国の人々も家族みたいなものになるなら悪いと思う必要は無い。

 この国の痛みもクレイズが背負うと決めた。自分の罪と一緒に。


「たんとお食べ」


 そう言って子供達の頭をなでながらクレイズは兵士に近づいた。

 優しくて恐ろしい王が近づいてきたことに気づいた兵士はビビった。

 それでも平然を装って王の前に立った。

 クレイズはその兵士に聞きたいことがあったからそっと尋ねた。


「ねぇ、この国のことは全然知らないけど、先代からは平和な国と聞いてたんだけど違うの?」


「いえ、平和には違いありませんが、前王が私腹を肥やそうとして税で国民から食料を取っていました。それが不作が続く今もしていたせいで国民は蓄えが足りずに苦しんでいました」


 その兵士は緊張しながら真面目に答えてくれた。

 でも、弱ってるように見えた一般人と違って栄養が足りてるように見えた。

 おそらく兵士は戦争にも行かせるから、元気でいてもらう必要があるから食料をちゃんと与えていたのだろう。

 最初にこの問題を片付けるべきだと思ったので、王都周辺の街や村の住民にも一度集まるように招集命令を出すことにした。

 自分が王になって国名を変えることも見せる必要もあるし、全体の状況把握とこの国をアスタリアに物資を提供できるように動かせるかも見る必要がある。


「はぁ、忙しくなりそうだな」


 独り言をボソッと呟くと、今度は住居に目が行ったので確認することにした。

 レンガ造りの3階建ての住居が綺麗に並べられて城を囲んでいる。

 建物自体は劣化していて今にも崩れそうだが、国のシステムとしてはまだ使えそうだ。

 クレイズは上から見てるからこの街の並び方の意図が分かっている。

 建物を縦横に綺麗並べて、所々に道を作って敵を迷子に出来るようにしている。

 上から移動できるのは人外だけだから、人間の侵入には強い作りなっている。

 建物は建て替えが必要かも知れないけど、迷路のような並びは利用しようと考えた。


 ただ、この王都には川もあるので扱い方が難しそうだ。

 こんな複雑で安全な街に移住するのは外部の国民には辛いだろう。

 出来れば王都に人間を集中させたかったが、これでは増築も大変そうだ。

 これも一応課題として残しておこう。


 この国を一通り見て最大の問題を見つけた。

 それは平和すぎてみんなが使える魔法が弱いことだ。

 兵隊は鍛えればどうにかなりそうだが、一般人がもしも魔物や盗賊に襲われたら対処できない。

 これもどうにかする必要が出てきた。

 とりあえず、食料は分け与えたから次に小隊が殺した兵士達の遺体を埋めることをする。

 それからクレイズは国民に寄り添って問題を一つ一つ処理していくことに決めた。


 これからクレイズが奪った国の王としてすることはアスタリアに自分で報告しに行くことになった。

 一応、この国はケイオス側になったのでトップをアスタリアにするならこれはやむないだろう。

 大魔法使いに野良の魔王が4人付く、これは騒ぎになるだろうがクレイズには関係ない。

 アスタリアや仇を討った母より、今は国という義理の子供の方が大切になってきている。

 変人姉妹だけど次女が一番頭がおかしい気がする。

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