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第19話よくよく考えれば抱擁というビックトレジャーをゲットしていたのを忘れてました

「おい、お前らあけるぞ」


 俺はみんなに確認をとり、宝箱のふたへ手をかけた。

 緊張しているのかエルザたちがごくりと生唾を飲み込む音が聞こえる。


 俺たちはドラゴンを倒したあと、部屋の奥にある宝箱のもとへと来ていた。

 そして、今この箱を開けようかという時だ。

 エルザたちが緊張しているのも無理はない。だって、この宝箱は隠し部屋にあり、さらにドラゴンが守っていやモノなのだ。きっと物凄いお宝が入っているに違いない。

 って、なんか俺も緊張してきた。落ち着けー……落ち着くんだ俺。


 俺はプルプル震える手を抑え、心を静める。


 そして、勢いよく宝箱を開けた――。

 期待と緊張から開けられた宝箱。その中には、この部屋を出るための鍵。

 それと――


「これは……本?」


 一冊の古びた本が入っていた。


「え、これだけ……?」


「のようですわね」


 宝箱の中身はそれだけだった。たった二つのものしか入ってなかった。

 いや、さすがにこれは拍子抜けだぞ。あんだけ大層に隠しておいてこれだけとか。


「この本何がかいてあるんすかね? もしかしたら、昔の貴重な本だったり、すごいことが書いてあるかもしれないっす」


 そう言ってウルはひょいと宝箱の本を取り、適当なページを開く。

 そして、ウルはしばらく本に目を通すと顔を赤くし、本から目をそらす。


「ウル、何が書いてあったんだ?」


「凄いことが書いてある……す。で、でも、ウルには少し早いかもしれないっす……」


 凄いこと? 少し早い? 一体何が書いてあったんだというんだ……。 


「どういうこと? ウルちゃん」


 今度は、エルザがウルの手にある本を取り読み始める。

 そして、読み進めていくうちにエルザの顔は怪訝そうに眉をひそめていく。


「何が書いてあるんだ?」


 俺は本の内容を知ろうと、エルザが持っている本をのぞいた。

 だが、俺が中身を見る前にエルザは勢いよく本を閉じる。


「な、なんでこんなものがここにあるのよ!」


 いや、だから何が書いてあるんだよ……。


「私にも見してください」


 次はフラムが本を取り、読み始める。


「これは――!! すごいですよ、ノラさん!! 物凄いお宝ですよ!!」


「何、そうなのか!? 一体どういう本なんだフラム!」


 一体、どんな凄いお宝だというんだ! フラムは伝説のエリート魔法使い一家。さぞ、たくさんの本を読んできているだろう。そのフラムがお宝というんだ。それはそれは貴重なお宝に……。


「――官能小説です!!」


「………………は?」


 俺は茫然とした。


 え……官能小説……!? 

 なんでそんなもんをわざわざこんな厳重に隠してるの? バカなの? この盗賊団やっぱバカなの?


「しかもノラさん! これ男の子同士のラブを描いた物みたいです!!」


 フラムが嬉しそうに追加の情報を教えてくる。


「知るかーーーーーーーーーッ!! え、何その本ホ〇物なの!? なおさらいらないんだけど! 女の子同士とかのならワンちゃん欲しかったけど……じゃなくて! なんで、こんなもんが入ってるんだよ! ここダンジョンなんだよな!? もう、エルザを見ろよ! すごい意気消沈しちゃってるよ!?」


 俺は光のない目をし、体育座りでぶつぶつ言っているエルザを指さした。


「……私あんなことまでしたのに……恥ずかしい思いして頑張ったのに……ただの本だなんて……」


「エルザさん! ただの本じゃないですよ! 男と男の熱いラブロマンスを描いたR18禁本です!」


「いや、そこはどうでもいいすよ……」


 ウルの言う通りだ。そこはどうでもいい。

 問題は今の状況だ。フラムは喜んでるが、もう俺を含めたほかの三人はがっくりと落ち込んでいるのだ。

 正直もう探索などできる気分じゃない。


「うん、もうあれだな。うん、これは今日は諦めて帰ろう」


 俺のその提案を断る者はいなかった。


 _______________________________________


「おい、なんだこれは……?」


 俺たちが帰ろうと部屋の扉を開けてすぐ、同い年くらいの見たことのない男が倒れていた。

 高価そうな全身鎧と剣を身に着けており、冒険者てことがわかる。


「どうやら冒険者みたいっすね」


「それは見たらわかる。俺が聞いているのは、なんでこんなところで倒れてるんだってことだ」


「魔物に襲われたんじゃないっすか?」


「いや、でもこの装備見ろよ。むっちゃ高そうだぜ? こんな身なりしたやつがこんな上の階の魔物にやられるか?」


 俺の言葉にウルは首をかしげる。

 すると、そこにフラムがフッフッフッと怪しい笑みを浮かべる。


「ノラさん、ウルさんわかりませんか? この人がやっている行動が。このお方の目的が」


 なんか、あの本を手に入れてから、フラムのテンションがおかしい。よっぽど嬉しかったのだろう。


「それで、なんなんだ? こいつの目的って? これはわざとやっているてことなのか?」


「その通りですノラさん! その方は恐らくそうやって魔物を誘っているんですよ! そして、近づいてきた魔物をグサリという戦法ですよ。きっと」


「なるほど。そういう戦い方もあるのか。んじゃあ、邪魔しちゃいけないな。ここはおとなしくほって帰ろう」


 そうしてその倒れている男をおいて帰ろうとするとが


「そんなわけないだろうがッ!!」


 急にその男が起き上がり、突っ込んでくる。


 いや、まぁ知ってたけどね。そんな戦法じゃないんだろうってことは。ただ、もう疲れてるから関わらず帰りたかった。……こいつ男だし。


「ワーオキアガッテキター。サクセンデハナカッタノカー」


「君、なんて白々しいんだ。そんなあからさまな棒読み初めて聞い……いてて」


 その男は喋っている最中に、肩を押さえ顔をゆがませる。


「なんだ、お前ケガしているのか? その鎧の上からじゃわからないけど」


「ああ、急に火炎弾が迫ってきてね。炎自体でのダメージはないんだが、そのとき倒れてしまって、岩に肩を打ち付けてしまったみたいだ」


「そうなのか。よかったら、治そうか? うちのパーティーにヒーラーがいるし」


 俺はそう言い、エルザを指さす。だが、エルザの様子は生気がなくぼへーとしている。


「君のとこのヒーラーの方が重症そうなんだが……」


「いや、ちょっといろいろあって。でも、大丈夫だ。回復とかバフの魔法の腕は確かだから」


 実際、エルザの魔法はフラムほどとはいかぬもの。かなり練度が高い。初級魔法でも並みの冒険者の中級魔法レベルだ。


「心遣いはありがたいが、大丈夫さ。僕のこの鎧は自動回復がついているからね。ほっとけば治る。それより、僕はこの扉の奥に行かなければならないから、もう行くよ。またどこかで会おう」


 そう言ってその男は足早に扉へと向かっていった。

 それを見てから、俺はウルに話しかけた。


「なぁ、ウル。あの部屋ほかにもなんかあるんかな?」


「知らないっす。それより早く帰るっすよ。二人がめんどくさそうなことになってるすから」


 ウルがそう言って指さした先には、再び体育座りをしていじけだしたエルザとあの本を読んでひどく発情しているフラムがいた。


 _______________________________________



「変わったパーティーだったな。 何かあったんだろうか……?」


 僕は走りながら先ほどあった冒険者たちの事を考えていた。

 しかし、その考え事を途中でやめる。

 なぜなら、扉の前についたからだ。さっき入れなかった扉の前にだ。


 どうやら、この奥にいるドラゴンはかなり知能が高いらしい。あんな不意打ちを食らったのは初めてだ。


「もしかしたら、ドラゴンと戦っていたであろう冒険者は死んでいるかもしれないな……だが、生きている可能性がある限り、諦めないぞ!!」


 僕は勢いよく扉を開け、中に入った。

 今度は火炎弾が飛んでこない。それどころか、部屋の中には何もなかった。あるものを除いては。


「どーいうことだ……? ドラゴンが倒されている……!?」


 部屋の中央にあるもの。それは紛れもなくドラゴンの死体だった。

 そして、僕はすぐにある可能性に気が付く。


「まさか……さっきの子たちが倒したというのか……?」


 だが、まて。彼らにはほとんどダメージを追っているようには見えなかった。特に真ん中にいた男など服にすら傷がなかった。

 そんなことが可能か……? 不意打ちをしてくるような狡猾なドラゴン。そんなドラゴンなど、僕ですら無傷での勝利は難しいだろう。


 僕はことの真意を確かめるため、すぐに踵を返し、扉に向かった。


 ――そして、その扉を開け………………ん?

 僕は何度も扉を押したり、引いたりしてみるが、扉はビクともしない。


「どーいうことだ……!? まさか、これは罠!? あのドラゴンの鳴き声も罠だったのか……?」


 僕は扉から離れ剣を身構えた。まだ見ぬ敵に対処するためだ。

 姿が見えない以上、こうして待つしかい。

 やっぱり、あの冒険者たちが倒したというのは、僕の勘違いだろう。そして、相手がドラゴンだということも。

 恐らく、この部屋にいるのは強力な魔術師。この死体や鳴き声なんかは幻。こうして、部屋にやってきた冒険者をだまし、やっつけているんだな。


「ふっ、僕をだますとは面白い! 姿が見えたとき、貴様の最後だと思え!」


 僕はどこかに隠れているであろう魔物に言ってやった。




 それから、いつまで経っても魔物は襲ってこなかった。


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