第18話 ノーブラってのは素晴らしいけど、将来形が崩れないか心配です
「ね、ねぇ。本当にやるの……?」
「ああ、今はこれしか方法がないんだ……やるしかない!」
顔を赤くしどこか緊張しているエルザに俺は力強く言った。
そして、俺の言葉に戸惑いながらもエルザは顔を俯かせる。
今俺とエルザは部屋の隅っこにいる。ドラゴンは俺たちに目もくれず、というよりは気づかずほかの二人と戦っている。
ドラゴンが気づかないのも無理はない。
フラムの魔女の隠れ家という一定の場所の姿、音を認知できなくするドーム型の防御魔法。
その中にいるのだ。さらに、気配を消す俺の潜伏魔法を掛けている。
この場所から出るか、魔法の効果が切れない限りドラゴンは俺たちに気づかないだろう。
こんな空間で俺たちがやろうとしていること。それは……
「やっぱり、納得いかないんだけど!! なんで私が絶対的破壊者を発動させるためにノラを興奮させなきゃいけないのよ!!」
エルザは俯いた顔をあげ、まくし立ててくる。
そう、エルザの言った通りだ。ドラゴンを倒すため俺たちは絶対的破壊者を発動させようとしているのだ。
外では、そのドラゴンの気を引くためにウルとフラムが時間を稼いでくれている。
「そうはいっても、仕方ないだろう。ドラゴン倒すためには絶対的破壊者しかないんだから」
俺は自身の右手の甲にある刻印を見せながらエルザをなだめる。
「いや、絶対的破壊者を発動させるてのは別に異論はないわ。そうじゃなくて、私がノラを興奮させるってところを言っているのよ! 一人でも興奮することできるでしょ!?」
「ムーリ! 俺一人じゃそんなの絶対ムリ! エルザがやってくれなきゃダメなんだ! みんなの為と思って!」
正直嘘だ。別、一人でも興奮しようとおもえばできる。淫らなエルザを想像したり、一糸まとわぬフラムの豊満で卓越されたボディを想像すれば容易に刻印は光るだろう。
だが、今はそんな想像しない! エルザが何かしてくれるという流れになっているのだ。この流れに乗らないわけがない。
もう、俺の心持としては〇俗に来たようなもんだ! これからあのエルザに奉仕をしてもらえるのだ! そんな気持ちだ!
「さぁ、よろしくお願いします!!」
俺はその場で正座し、深々と頭を下げる。
「お、お願いしますって言われても、何をすればいいのよ……?」
やはりエルザはちょろいな。勢いでごまかしてしまえば、もうやってくれる感じになっている。
「えっと、とりあえず✖✖✖見してくれたり✖✖✖してほしいな」
「そんなことできるわけないでしょ!!」
エルザは顔を真っ赤にして怒鳴ってくる。
さすがにこれは無理か。
すると、エルザは何か思い出したようにニッコリと笑い、問いかけてくる。
「あっ、そういえばノラを変態って呼んだり、関節技を掛けたりしたら刻印光ってたわよね? どっちがいい?」
くっ! どっちも嫌だ。そんなのいつも通りの奴じゃないか。そんなの嫌だ。今は特別なのだ。今ならもっとすごいことをしてくれるはずなんだ。
「いや、あれは体調が万全だったからなんだ。今はいろいろ疲れているし、そんなんじゃ刻印は光らないよきっと」
すんごい適当な言い訳。
正直、自分でも何言ってるんだ? という言い訳だったが、エルザには効いたようで驚きの表情の後、しかめっ面で何か考えている。
そして、しばらくすると顔を真っ赤にし悶絶している。
ん? どうしたんだ? 考え直して✖✖✖をしてくれる決心をしてくれたのかな?
俺がそんな淡い期待を込めエルザを見ていると、エルザはおもむろに俺の目の前に座る。
「こ、これで刻印が光らなかったらもう私は知らないっ! そ、それと今回だけだからね!」
そう言ってエルザは自身の胸へと俺の頭を抱き寄せた。
ふおおおおおおおお!! エルザの胸が目の前に! というか、密着してる! もう俺の顔とエルザの胸が合体しちゃってるよ! これは流石に想定外だ! ほんのり香る汗と石鹸の混じった匂い、そしてこの感触! エルザのやつ。ノーブラだっ! 布一枚を通して温かさが! 少し早くなってる鼓動が! 柔らかさが! 俺の肌に伝わってくる!! あーやばい、これは理性が保てないかもしれない! もう押し倒したい!
が、俺がエルザを押し倒すことはなかった。理性が飛ぶ直前でエルザが俺の顔を引き離したのだ。
「ふぇ!? エルザさん、もう終わりですか!? もうちょっと! もうちょっとだけ!!」
「もう十分刻印光ってるじゃない!! ……それに身の危険を感じたからもう無理!」
顔をトマトのように赤く紅潮させたエルザの言葉で、自身の右手をみるといわれた通り刻印は今まで見たことないレベルで光輝いていた。
仕方ない。もう光ってしまったのならこれ以上無理強いはできない。それにフラムとウルを早く助けないと。
……くそーもう少し堪能したかったなぁ。
名残惜しい気持ちはあったがそれをぐっと堪え、俺は立ちあがった。
「絶対的破壊者、発動!!」
そして、俺は赤い光を纏い今まで俺たちを包んでいたドーム型の魔法に触れる。
パリンという音とともにドームは壊れ、俺はウルとフラム、そしてドラゴンの前へと参上した。
「お待たせ、お前ら!」
「「ノラ(さん)!」」
俺が来て歓喜の声を上げるウルとフラム。とくにこれといって大きな傷はなさそうだが、二人とも疲弊しているのが見て取れる。
「もう遅いっすよ! こっちはいろいろと大変だったんすからね!」
「確かに些か長めでしたわね。まさかお二人で愛を育んで――」
俺は急にフラムが何を言っていたか途中で聞こえなくなった。風を切るような別の音でかき消されたからだ。そして、それと同時に目の前が見えなくなる。
何が起きたかわからなかった。だが、不安や焦りなどは一切なかった。今の俺は無敵状態だからだ。簡単に言えばスターをとったマ〇オようなものだ。
そして、数呼吸の後、何が起こったのか理解した。
絶叫を上げるドラゴン、右手にはぽつんと穴が開いている。どうやら、俺を踏みつぶそうと右手を俺に振り下ろしたらしい。
俺の周りの地面は大きく凹み、亀裂が入っている。もちろん、俺には何のダメージもない。
「そういえば、まだ戦闘が終わったわけじゃなったな!」
俺は後ずさるドラゴンに向け言った。
「エルザ! 俺にバフをかけてくれ!」
俺の言葉にエルザは慌てたように答えると、身体強化の魔法、中級・体強化魔法を掛けてくれる。
そして、俺はそのままドラゴンのほうへ走り、途中でドラゴンの顔、目掛け跳躍した。
「まぁ、今の俺が来た時点で、戦闘終了だけどな!」
俺はそのままドラゴンの顔に突っ込み、文字通り貫いた。




