第13話回復魔法って折れた骨とかも治せるんですね……
「なぁ、みんな頼みがあるんだが、いいか?」
夕食を食べ終え、モッサリーナの食堂にいる三人に俺は聞いた。
「今私はご飯後のだらだらモードに入ったから無理~」
「ウルも同じくっす~」
「あら、何の頼みですか? 今晩のオカズの提供ですか? それとも夜のお相手――あんっ!」
俺はアホな事を言っている金髪に脳天チョップをする。
「まぁ、SMプレイですのね! それに皆さんの前でなんて! 私興奮し――んっ!」
勝手に発情しだした金髪にもう一度チョップし、俺は話し始める。
「いや、頼みてのは相談を聞いて欲しいんだ。今、俺スキルポイントが十二ポイントあって、潜伏魔法か速度上昇スキルと命中上昇スキルが取れるんだがどっちが良いと思う?」
俺の質問にエルザとウルは何か行動するわけじゃないのか、と机に突っ伏したまま顔だけ上げ答えてくれる。
「ウルは冒険者じゃないから、分かんないっす。そもそもスキルなんてなくても魔物くらい素手で狩れるっすよ」
それはお前だけだ。
「私は回復魔法と支援魔法しかとってないわよ」
いや、お前のスキル事情を知りたいんじゃなくて、俺のスキルについて答えて欲しいんだが……。てか、それもう知ってるし。
「はぁーフラムはどう思う?」
俺は二人とも参考にならないとため息をつくと、横で発情が収まったであろうフラムに聞いてみる。
「私もスキルはあまりとってないので詳しくないですが、潜伏魔法でよろしいんではないでしょうか? 父も同じような魔法を重宝してましたし」
「え、お前スキルとってないの? じゃあこの前ジャングルで使った魔法は何だよ」
俺はフラムの口から出た言葉を疑った。
なぜなら、フラムはナッツハイートのクエスト時、魔法を使っていたのだ。
というか、それのせいでジャングルはひどい事になっているんだが……
「あれは、私が独自に覚えたものですわ。スキル魔法とは違うものです」
「え、スキル魔法? どういう事だ? 説明してくれ」
「いいですわよ。まず魔法とスキル魔法は違いますの。本来、魔法とは長い時間と相応の知識で習得するものです。しかし、冒険者のそれは違います。あれは、知識も時間も特に必要とせず、簡単に習得できます。では、何故そんな簡単に習得できるかですが。それはレベルアップの際、発せられるクロマトエネルギーをカルニシウム鉱石で圧縮し――」
「ちょっと待てくれフラム。もう少しわかりやすく頼む」
俺はついフラムの口からでた難解な説明に待ったを掛ける。
「んー簡単に言いますと、本来、魔法は自力で覚えるもの。スキル魔法は魔法が使えぬ者のために作られたシステム的なものとでも言えばよろしいでしょうか。つまり、スキル魔法は決まった魔法しか使えない代わりに簡単に習得できるのですわ」
なるほど、そういうことだったのか。
じゃあエルザが使っている魔法とフラムの使っている魔法は別物てことになるのか。
「てか、お前すごい詳しいのな」
感心したように言うとフラムはその後、
「まぁ私のひいひいおじい様が作られたものですから」
と衝撃の事実を加える。
「はぁ!?」
俺はあまりの衝撃に勢いよく席を立ってしまう。
え、ちょっと待て。それってマジですごいんじゃないのか……。言ったらこの世界の基盤を作ったようなもんだよな。こいつの家系ほんとにすごい奴だったのか。俺はてっきり、ちょっと魔法が得意なんです~程度に思っていたが……。
俺がフラムの言葉に絶句しているとエルザは当然でしょといった感じにバカにしてくる。
「本当ノラは物を知らないのね。だから、グラス一家はエリート一家として名を知られてるんじゃない」
いやいやいやいや、知らない側からすれば、かなりの驚きだよ!? あっ、でもウルもエルザも驚いてないてことはそもそもこれは常識なのか? それだったら俺一人だけ驚いてバカみたいじゃないか。
「というか、ノラさん。お会いした時から気になっていたんですが、その手の刻印は何なのですか?」
「ん? ああ、これは絶対的破壊者を発動さ――」
「絶対的破壊者!? ノラさんそんな魔法が使えるのですか!?」
今度はフラムが勢いよく立ち驚愕する。
そんなフラムにびくっとなった俺は首を縦に振り、肯定する。
え、いやそんな驚くことなのか? 俺的にはあんたの家系情報のほうが驚きなんだが。
すると、フラムはぶつぶつと考え込みながら、席に座る。
「……まさか、お母様以外にその魔法を使える方がおられるとは思いませんでしたわ。というか、それなら……」
俺はフラムの独り言のお母様という部分が気になり、逆に質問する。
「フラムのお母さんも絶対的破壊者を使えるのか?」
俺の質問にフラムは考えるのをやめ、答えてくれる。
「ええ。まぁ、母のは文献を頼りに作り出した劣化版のようなものですが。それより、ノラさんってそんな魔力高くないですよね? なぜそんな魔法を使えるのですか?」
「え、絶対的破壊者って魔力使うの? 俺たぶん魔力なんか使ったことないけど」
俺の回答に無言で驚くフラム。
そして、何か思案したあと、真剣な表情で
「よろしかったら、私に絶対的破壊者を見せてもらえませんか?」
と提案してくる。まだこいつと会って数日も経ってないがこんな真剣な表情をみたのは初めてだった。
だが、絶対的破壊者はそうほいほい発動できるものではない。発動条件があるのだ。
それをフラムへと説明する。
「いや、絶対的破壊者、性的興奮覚えた状態じゃないと使えない」
それを聞いたフラムは少しの沈黙の後、おもむろに衣服に手をかける。
「ちょ、ちょちょちょっと何やってるのよフラムさん!」
それを慌ててエルザが止めに入る。
「いや興奮してもらおうと思いまして」
「だからっていきなり脱ぎ始めなくても!」
しれっと言うフラムにエルザは信じられないといった形で叫ぶ。
エルザの制止にフラムは少しむっとしながら諦めると
「仕方ないですね。見させてもらうのはまた今度として。では、ノラさん質問するので答えてくれますか?」
と言ってきた。
こいつ、さっきの単純に露出したいという願望があっただろう……。
俺はそう思いながらもフラムにいいよと承認した。
それから、フラムは様々な質問を投げかけてくる。俺はそれに正直に答えていった。
そして、俺の返事を聞き終えると
「全部文献通りですわ。ということは、ノラさんは本物の絶対的破壊者を使えるお方」
と信じられないと言った様に頭を悩ませていた。
そして
「ノラさんそれをどうやって身に着けたのですか? そもそも貴方は何者ですか?」
と核心を突いた質問をしてくる。その質問に俺は動揺してしまう。
まさか、そこを突いてくるとは。
でも、よく考えたら隠さなきゃいけないわけじゃないし話してもいいかな? 信じてもらえるかは別として
俺は短い期間ながらも三人のことを信用していた。だから、本当のことを話そうと口を開いた。
「実は――」
俺は話した。自分がこの世界の住人ではないこと、もう一回死んでしまっている人間だという事、神によってここに飛ばされたこと
――そして、魔王を倒すのを目標としていること。
自分の死因は流石に恥ずかしいので適当にはぐらさせたが、それ以外全て告白した。
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俺は喋り終えるとふぅーと席に着く。
そして、告白する前は何とも思ってなかった胸中が、今は不安でいっぱいなのが分かる。
こんなよくわからない奴がパーティーにいても大丈夫なのか、そもそも信じてもらえたのだろうかと。
俺は仲間であるみんなにとやかく言われることを覚悟した。
だが、
「ウルも異世界行ってみたいっす! むちゃくちゃ面白そうじゃないっすか!」
あれ?
「そういうことでしたのね。なんかおかしいと思いましたわ」
あれれ?
予想以上に二人とも受け入れちゃってるぞ。
「お前らもっと疑うとか、驚くとかないのか!?」
予想外に軽い感じの二人に当惑していると、エルザが席を立ち、俺に近づいてくる。
「ん? どうしたエルザ? あっ、やっぱ信じられないよな。急にこんな話を……って俺の腕があらぬ方向にぃぃぃ!!!!」
喋っている途中にも関わらずエルザは俺にアームロックを仕掛けてくる。
「私に会ったときの話は何だったのよ!! 本当に同情したのに!!」
そして激怒する。
俺は痛みに耐えながらそれに弁解をする。
「あ、あれは信じてもらえないと思って適当な言い訳ををををを!!」
しかし、さらに腕を曲げられる。
「もうちょっとマシな言い訳があったでしょうがあああああ!!」
「あ、ノラさん、ノラさん! 刻印少し光ってますよ! 今なら使えるんじゃないですか?」
バカ! 今それどころじゃない! 確かにちょっと快感感じちゃってるけど、腕が! 腕があああああ!!
この後みんなに聞いてみたところ、異世界転移というのは割かしよくある事だったみたいです。




