第12話もう何なのこの子達……怖い!
フラムが仲間に入り、俺たちはギルドへと再び戻っていた。
時刻も昼となり、ご飯を食べようとなったからだ。
ちなみに、言い出したのはウルだ。
さっきも食べていたから、もう腹減ったのかこいつ? とは思ったが俺も腹が減っていたことだし何も言わずその提案を受け入れた。
そして、俺達の前にはさまざまな料理が並べられる。
異世界に来たときから思っていたが、異世界での料理は俺の元いた世界とあまり違いはないようだ。
まぁ、普通に牛や豚と言った動物もいるので疑問はない。
ただ、魔物を使った料理もあり、それだけは抵抗があった。
しかし、食べてみると意外とこれが美味い!
特にナッツハイートという魔物の肉が美味い。元がどんな魔物か知らないが、外側はコリコリしてて、中身はとろっととろけるような舌触りなのだ。
今俺が食べているものもナッツハイートの肉を使った料理だ。
そして、それを頬張っているとふと思い出すことがあった。
エルザが俺を呼びに来た理由だ。
なんか俺に用があったっぽいが?
そう思い、それをエルザへ聞く。
「そういえばエルザ、俺になんか用事があったんじゃないのか? ダニエルがどうとかって……」
「あ、忘れてたわ! ダニエルが頼みがあるんだって」
あ、エルザも忘れてたのか。頼まれごとをして街に出てきたのに、忘れちゃダメでしょ。
そう思いながらも俺はその頼み事について聞いていく。
「んで、頼みとは?」
「人探しって言ってたわよ。なんかダニエルの古い知人の娘さんがモッサリーナでしばらく暮らすことになっているんだけど、まだ来てないらしいの。本来なら一昨日には来ている予定で心配だから探してきてだって」
「へー、どんな子なの?」
「なんでも、修行中の魔法使いらしいわよ。えっと、見た目は二十歳くらいで…………金髪の……ボブ」
エルザの言った魔法使い、金髪、ボブという特徴に俺は視線を前方に向ける。
そして、エルザも喋っていて途中で気付いたのか、言葉が途切れ途切れになる。
「おい、フラム。お前、今どこに住んでいるんだ?」
俺は目の前で盗人ラビットのシチューを食べている金髪ボブに聞く。
「え、私ですか? 今は適当な場所で野宿していますわ。本当はある宿屋でお世話になる予定なんですけども、私とても方向音痴でまだたどり着けてないのですよ」
「もしかして、その宿屋の名前はモッサリーナ?」
「ええ、そうです! よくわかりましたね!」
フラムは宿の名前を言い当てた俺に舌を巻いている。
そんなフラムを無視し、俺はエルザに無気力に言った。
「……エルザ、バカを見つけたぞ」
「……う、うん。そうね」
それを見て、エルザは苦笑いしていた。
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それから少しして、飯を食べ終えた俺たちはクエストに行くことにした。だが、メンバーは俺とウル、フラムだけでエルザは入っていない。
エルザはというと
「今日は乗り気じゃないし、フラムさんのことをダニエルに伝えとかないと」
と言い、モッサリーナに帰ってしまった。
すると、ウルがこれどうすかー? とクエスト用紙を持ってくる。
こいつまた変なクエスト持ってきたんじゃないだろうな……?
俺はそう思いながら、用紙を受け取り、内容を確認する。
「えっと……難易度が星四で……報酬が十万イアー……討伐はナッツハイートの群れ!?」
「ノラがさっき美味しそうに食べてたすから、好きなんかなと思って選んできたっす。ナッツハイートならそんなに強くないから、楽勝っすよ」
ウルは少し得意げにこのクエストを選んだ理由を説明する。
この子、いい子やで……
ウルの思いやりに少し涙腺が緩みつつも、
「よし! じゃあ、今日はナッツハイート狩って、夕食はナッツハイート祭りと行こう!」
俺はそう意気込んで、ナッツハイートが生息するジャングルへと向かった。
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うっそうと木々が生え渡るジャングル。そして、その隙間から大量に姿を見せるナッツハイート。ナッツハイートの姿は骨ばった猿のような見た目をしており、その手には木で出来たこん棒を持っている。
そして、もう一つ大きな特徴があった。
俺はその特徴に嫌な予感を感じながらもフラムに聞いた。
「な、なぁ、ナッツハイートってどこの部位が食べられてるんだ……? 骨と皮ばっかで身があんまりなさそうなんだが……」
「もちろんアレですわよ」
フラムはナッツハイートの股にある大きな袋を指さしながら言った。
「あれって、まさか……」
「キ〇タマですわ」
フラムははっきりと口に出して言った。
それを聞き、急に吐き気を催してくる。
うそだろ……俺が食ってたのキ〇タマだったのかよ……
「さっきまであんな美味しそうに食べてたじゃないっすか。何を今更」
気持ち悪そうに口を押えている俺を見てウルはバカにしてくる。
「いや、だって今まで知らなかったんだもん……うっ、おえー」
あ、やべ、ついに出ちゃったよ。
俺はあまりの吐き気にさっきまで美味い美味いと言っていたものを吐き出してしまう。
そして、ウルはいつまでもゲロゲロしている俺をじれったいと思ったのか
「まぁ、とにかく先に行くっすよ」
と言って、ナッツハイートの群れに向かって走り出す。
だが、ナッツハイートの数は数えるのが億劫になるほど大量にいる。
恐らく三桁は余裕で超えているだろう。
さすがに単身で行くのは危険すぎる!
俺はそう感じ、先走るウルを引き留める。
「おい、まて! ウル! ナッツハイートが弱いとはいえ、あの大群に真正面から突っ込むのは――」
しかし、目の前の光景に俺の心配は杞憂だとわかる。
ウルはものすごいスピードでナッツハイートの群れを倒していっているのだ。まるで走り抜けるついでに倒しているかのように、その手際は見事だ。
「す、すげー……。これってナッツハイートがすごい弱いていうわけじゃないんだよな……?」
俺はウルのあまりの討伐スピードに目を点にし、フラムに聞いた。
「そうですわね。己の肉体のみでここまで狩れるなんて正直人間とは思えませんわ」
フラムも驚いているようで、同じく目を点にしていた。
そんな、フラムに俺はウルの素性を説明する。
「ああ、そうか。言ってなかったな。あいつはハーフヴァンパイアなんだよ」
それを聞き納得したのか右手をポンと左手に打ち付けると
「なるほど、それでしたら私の魔法くらい避けれますわね」
と笑顔で言った。
そして、大声でウルに向かって叫ぶ。
「ウルさーん! 私、魔法使うんで避けてくださいねー!!」
それから、フラムは目を閉じ集中する。
「天より下されし、慈愛の鉄槌、我が望みを叶えるため今降りそそげ――」
フラムが杖をかざしながらそう詠唱しているとフラムが居るところを中心として大きな魔法陣が展開される。
それを見て、ナッツハイート達はぎょっとしている。中には逃げだすものもいた。
これ、なんの魔法か知らないけど俺大丈夫だよな……?
俺は少し怖くなって術者であるフラムに寄りそう。
「天使の涙!」
そんな俺の不安をよそにフラムは魔法名を叫んだ。
すると、下にあった魔法陣はグンと遥か上に飛んでいき、見えなくなる。
そして――
…………何も起きない。
「おい、フラム何も起きないぞ?」
「もうそろそろですわ。危ないのであまり動かないでくださいね」
フラムがにこやかにそう言うと同時に上から何やら音が聞こえてくる。風を切るような、何かを切り裂くような、そんな音だ。
そして、俺はその音の原因を探ろうと上を見て、驚愕する。
なんと空から鉄の槍が無数に降ってくるのだ。まるでそれは雨。木も生物も何もかも貫いていく無慈悲な槍の雨だった。
その槍に貫かれ断末魔を上げるナッツハイートと抵抗せずになすがままの木々。
――数十秒後には俺達の周りは荒地と化したジャングルが広がっていた。
「お、おま……おま……お前これやりすぎだろ!! もうジャングル壊滅しちゃってんじゃねーか!」
俺はあまりの悲惨ぶりに体を震わせながらフラムに突っ込んだ。
いや、最強の魔法使い一家とは言ってたけど、これやばすぎんだろ……。しかも、これで半人前とか冗談だろ……
ってかウルは!? あいつは無事なのか!? まさかあいつもこんなものが降ってくる魔法とは思ってなくて、当たってしまったんじゃ――
「あーびっくりしたっす。まさか、あんな魔法とは思わなかったすよ。さすがグラス一家すね」
俺の心配を無下にするかのように、ウルがひょこっと現れる。その体には傷どころか、汚れ一つない。
「いえいえ、ウルさんこそ、素手であんな狩るなんてすごいですわ。結局何匹くらい狩りましたの?」
「んー数えてないすけど、百くらいじゃないすかねー」
ウルとフラムは楽しそうに談笑し始める。
俺はそんな二人にひきつった笑いをしながら
もう、こいつらだけで大抵の奴倒せるんじゃないかな……
と感じた。




