俺の人生13
俺は来月に二十歳の誕生日を迎える。慶太郎は七夕の日に二十歳の誕生日を迎えその日だけでかなりの売り上げをあげた。もうすぐ夏も終わりか。俺がいつものように店で仕事をしている時俺達の店トライアンフに中学からの仲間恭一と誠が店に顔を出した。俺は慶太郎が店を買い取り内装工事をしオープンさせた二店舗を回し仕切っていた。慶太郎が最初にオープンさせた店はアルテミスだ。俺はアルテミスを回りキャストに指示を出して二店舗目であるトライアンフに来ていた。そしてまた数時間後にはアルテミスの様子や売り上げ状況を確認しに行ってトライアンフに戻ってくると言う感じで行ったり来たりだ。店名は慶太郎が名づける。1番最初の店アルテミスは月の女神、二店舗目のトライアンフは勝利を意味するらしい。俺は勉強などしてきていないし慶太郎が名づけるには言葉以上の深い意味が含まれ考えたのであろう事はわかっているがあえてどんな思いを持って名づけたのかまでは聞いていない。聞いてはいないがなぜだか何となく感じ取れるものはあるような気がする。あいつがその言葉を深い意味なくつけるはずがないからだ。あいつの想いがこもっている。ただそれだけはわかるんだ。
『よう!大輔!元気?店はどう?』
まあ順調そうだな。お前らすげーな。18歳からすでに外車を乗り回す程になるとはね。高校退学になってお前と慶太郎はどうなっちまうのかと心配したけど。高校を卒業した俺の方がダメじゃん。
『おう!恭一!誠!久しぶりだな!まあまあなんとかやってるよ。慶太郎が会社立ち上げたから店は俺任せだ』
マジ大変だ。慶太郎はどんどん先に進んでいく感じだよ。やっぱ俺らとは元々出来が違うしさらにあいつは努力をするから追いつくより置いていかれないようにするのが俺の努力程度では精一杯だ。あいつが努力をやめないんだからな。俺達が遊んでる頃からいやそれ以前からずっと努力をおそらく続けているんだ。俺がちょっと頑張ったぐらいでは追いつきもしねーよ。
『お前らすげーな!車だって高級車乗ってんじゃん!かなり儲かってんだろう!奢れよ!』
マジお前らヤバイな!恭一が言ってたけど毎年高級車乗りかえてんだろ?まだ二十歳だぞ。二十歳つってもガキじゃん。俺がガキなだけか。大輔と慶太郎はいつも頑張ってるよな。なんでそんなにお前らは頑張れるんだよ。
『たかるなら慶太郎にたかれ!あいつが経営者だ。実際回してるのは俺だけどな。あいつにコキ使われて大変だよ』
とにかく俺は慶太郎が作り上げた店を守り絶対に赤字は出したくない。俺は俺が出来る事をただやるだけだ。
『大輔と慶太郎はそれだけ努力したんだろ。俺なんか親父の会社に籍置いてるぐらいで仕事もあんまり覚えようとしてねーし継げる気もしねーよ。俺が継いだら潰しちまいそうだ。まあ言ってもしょぼい小さな会社だからな。もう二十歳になるっつうのに親のすねかじってる俺とはやっぱ違うよ!』
いやマジでいつまでもフラフラ遊んでる場合じゃねーな。大輔と慶太郎には及ぶはずがねーけど俺も頑張ってみようかな。
『恭一!お前も真面目に仕事覚えて会社潰さねーようにしろよ。俺は努力してきたつもりだけど俺よりもっと慶太郎は努力していたぞ』
だから追いつくどころか離されないようにしがみつくぐらいが精一杯なんだよ。あいつが努力をやめてくれねーんだからな。だから俺も努力し続ける事が出来ている。慶太郎が見せてくれてんだよ。
『そうだよな。ラクして金なんか得られないよなー!とりあえず二十歳の成人式は絶対に飲みに行こうな!今日は抜けられねーの?』
『今日は無理だな。二店舗あるしいつも駆け回ってるよ。成人式に俺と慶太郎は参加しねーよ。終わってからの飲みぐらいはいいけど』
『はあ?なんで?ユズル達もみんな来るぜ』
なんだよ?なんで成人式に参加しねーんだよ。人生で1度きりの成人式だぞ。
『慶太郎が参加しねーんだ。だから俺もしない。お前らはちゃんと式に出てこいよ!終わったらみんなで飲もう!誠!悪いな。わかってくれ』
俺は慶太郎がなぜ出席しねーか知らねーけどあいつが参加しねーのに俺は参加なんかしたって嬉しくねーんだ。中学の卒業式の時と想いは一緒だよ。仲間の誰か一人が欠けるなら俺はそんな式を楽しめねー。全員揃ってなきゃ何故か俺には意味がない気がするだけだ。
『あー。わかった!別に式出なくても俺達は成人を嫌でも迎えるからな。中学の卒業式を全員で出席出来たしそれだけで充分な想い出だ!あー俺も仕事ちゃんと探そう。恭一じゃねーけどバイトじゃ結局親のスネかじってんのと一緒だしな』
大輔!お前変わらないな!でもお前の想いがわかるからお前が決めた事ならそれが正しいんだと思うぜ。慶太郎が参加しない理由はわからねーけど意味なく参加しねーなんて言うはずがないしな。俺ももっと頑張ろう。
『あー。お前らも頑張れ!』
恭一、誠!お前らで俺と慶太郎の分まで式を楽しんで来い。慶太郎が参加しないと言う理由は俺にはわからねーし聞く気もない。だけどそれなりの理由があってそう言ってる事だけはわかるんだ。あいつ1人だけ残して参加しても俺は全然嬉しくねーんだからよ。あー計算終わった。ねむてー。とりあえず今月も二店舗共に目標達成だ。良かった。いつまでも順調だって保証はどこにもねーんだ。日々全力で頑張るしかない。そろそろ慶太郎が迎えに来るかな?金庫は閉めたし鍵もOKだな。もう5時過ぎだぞ。あいつも現場で倒れるんじゃねーか。喧嘩はつえーけど体は弱いからな。好き嫌いのしすぎだ!なんてたって坊っちゃん育ちだからよ。俺はこの頃免停を食らっていて慶太郎と俺の時間が合えば慶太郎が迎えに来てくれていた。まあ俺だってあいつが免停食らってた時に送り迎えしてやってたからな。そして迎えにきた慶太郎の後部座席に乗っている明らかにお供え用の花に気づいた俺は慶太郎のもう1人の親父の命日が今日である事を聞き挨拶をしたいと思い慶太郎と共に墓参りに向かったんだ。そうあの頃。14歳の夏休みが明けてもしばらく登校せず痩せて無防備でありボロボロになった姿で現れた慶太郎の原因となった人の死がそのもう1人の親父だ。慶太郎の心の支えであり大切な存在だった。その人を失った慶太郎はさらなる闇に落ちていき俺達は本当にどん底なのではないかと思うぐらい落ちたよな。助けてくれる大人などおらず俺達は完全に暗闇にいたんだ。そして慶太郎と共に霊園へ着き墓を見た俺は驚いた。状況が飲み込めず意味がわからないと思ったぐらいだ。墓に刻まれている名前は結城壮一郎。享年36歳。嘘だろ!ふざけんなよ!なんだよ!結城さんこれが神の計らいですか!俺はあなたにどれだけ逢いたかったと思ってるんすか。神の計らいをずっと待ち望んでいたんすよ!でもなんすかこれは!こんな偶然ってあるんですか?慶太郎のもう1人の大切な親父があなただったなんて。あの日水族館に俺を連れて行ってくれた日は本当ならあなたが息子のように大切に毎日想っているという俺と同じ歳のガキを遠くから姿だけでも見ようと予定していた日ですよ。俺が付き合ってやるなんて偉そうな事を言ったのにあなたは姿を見る事は出来ないからと言った。塾に遅くまで通わされていると。あなたが心配していた息子は慶太郎だったんですね。確かにあなたの言う通り遅くまで慶太郎は塾に行かされていたそうです。あなたと逢えない代わりにあなたの大切な息子と俺を逢わせてくれていたんですね。これが神の計らいっすか。俺は受け入れます。慶太郎は俺にとっても大切な存在になりました。あなたの代わりに俺が慶太郎を守ります。結城壮一郎さん!あなたに出逢えて良かったです。俺達来年成人式を迎えます。俺にも優しくしてくれてありがとうございました!あなたの宝を俺が絶対守りますよ!俺はその日慶太郎と結城壮一郎さんの墓の前でもう何年ぶりだよと言う程号泣し慶太郎に泣く姿を見られてしまった。そして俺達は結城壮一郎さんの墓の前で2人きりの成人式を行ったんだ。だって俺達が二十歳になりそして生きている事を伝えたかったのは他の誰でもないあなたでしたからね。
『お疲れ!大輔!』
やっぱ居た。今日はアルテミスに居るんじゃないかと思ってましたよ。
『おう!お疲れ!慶太郎!どうしたんだよ?呼び出してもねーのにお前が店に来るなんて珍しいじゃん』
珍しいと言うより最近は俺に任せっきりでほとんど皆無だよな。店に出て稼いで来いと呼び出す以外顔を出さねー。
『うん。そうっすね。大輔にも成人のプレゼントを渡しておこうと思って。俺もさっき貰ったとこなんだ』
大泣きしたんだけど目腫れてない?
『なんだよ。あー。結城壮一郎さんだ。そうだ。この人だ。ありがとう!慶太郎!店に飾ってていいか?』
慶太郎お前ふざけんなよ!また俺を泣かす気か!
『あぁ。いいよ。おまけの俺が写ってるけどな』
大輔!ごめんな!もっと早くわかっていたらお前に壮ちゃんと逢わせてやれたのに。俺が14歳だった夏休み。お前がバイクに乗ってパクられた日だ。あの日お前も連れて行けば良かったんだよ。そうすればお前はパクられる事もなかったし壮ちゃんとも再会出来たのにな。バイクを乗り回すぐらいだったらお前を誘えば良かったと今はただ後悔しかない。悪かった大輔。
『お前!かわいいな!こんな頃もあったんだな。慶太郎!俺もう一回泣いてもいいか?もうこれで泣かねーから!っく、うっく』
もうマジ無理だ!我慢なんか出来ねーよ!
『あー。俺だって泣いてきたよ。大輔!壮ちゃんが見てるから頑張ろうな!』
壮ちゃんは空の上から見てるんだ。
『っく、うっく、おう!あたりめーじゃん!っく、うっく』
結城壮一郎さん!あなたに逢えた気がしました。慶太郎を通して俺はすでに逢っていたんすよね。ありがとうございました!さようなら!もう星空の下では語れませんが今度は俺が星空に向かって語ります。あなたは俺達を見てるんすよね。見ていて下さい。俺達は頑張ります。生かされるだけ生きていきます。俺はあなたと幼い慶太郎が一緒に写った写真をアルテミスの事務所に飾りまだ12歳である慶太郎が私立中学の制服を着てあなたと一緒に写った写真をトライアンフに飾る事にしました。結城壮一郎さん!本当にずっと俺達を見守って頂きありがとうございました。なぜだかそう思うんです。これからもずっと俺達の生き方を見ていて下さい。けしてあなたに誇れる生き方をしなかった10代です。二十歳からの俺達をまた見ていて下さいよ。少しずつ俺達も大人になっていくはずです。その為に今後も努力を続けいきます。




