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俺の人生12

俺と慶太郎は19歳になっていた。慶太郎!俺達なんとかのたれ死ぬ事なく生きていられたな。運良く恵まれていたんだ。そして何よりお前は努力をしていたよな。店を持つまでになって俺達はまた今までより少し広いマンションに引越しも出来た。そして俺と慶太郎はお世話になった水樹さんに御礼を言う為挨拶に行く事にした。


『水樹さん!俺達はもう自分達で充分暮らしていけるようになりました!水樹さんのおかげでのたれ死ぬ事なく生きていられます!ありがとうございます!』


本当にあの時あなたが俺達を拾ってママを紹介してもらえなかったらまだ16歳の世間知らずである俺達は死ぬしかなかったと思います。あの時の俺達はそれ程追い詰められていましたからね。ただ感謝しかありません。


『水樹さん!俺は自分で稼げるようになりましたよ!ちゃん世話になった分借りはしっかり倍にして返します!ありがとうございました!』


俺は借りを作るのが大嫌いなんだ。あなたに十分な程返せるぐらい俺は今自分の力で金を得ている。あなたが俺に言ったんだ。自分で稼げるようになれとね。俺は必ず倍にして返すと言いました。これで約束は果たしましたよね。俺は借りを作ってはいけない。借りが残っているからいつまでも俺は生かされてしまうと思ってるんだ。


『大輔!慶太郎!お前ら本当によく頑張ったじゃねーか。慶太郎!お前は本当に相変わらず生意気だな!お前にはもう借りはねーよ。借りを作るのが嫌いなんだろ。でもなお前はまだまだわかってねー!そうだ!お前ら10代最後だろ。ちゃんと大人になれるようちょっと修行行ってこいよ!たかだか1泊2日だ。気合い入れ直してもらって二十歳迎えて店をこれから上手く回していけるように願かけてこい!俺がお世話になった人だ。厳しいぞ。お前らもそこで少しは精神修行してこいよ!』


『はい!わかりました!』


行きたくねーけど行くしかねーだろ。


『えー?マジ!行くのかよ!大輔!』


バカじゃねーの!大輔!何あっさり返事してんだよ!もう俺らに借りはねーんだから従う必要ねーじゃん!


『慶太郎!お前には1番必要だ!行ってこい。たかだか1泊2日修行した所で強くなるものでもねーけどな。いい経験にはなる』


『わかりましたよ。行きますよ』


もう絶対これで最後だからな。従う義理なんかねーんだ。


『おい!慶太郎行くぞ!起きろ!』


俺達は水樹さんの紹介で指定された日を迎えた。仕事もママに頼んで店を回した事のある助っ人を手配してもらい1日だけ店を頼んだ。修行とやらが終わって戻ってきたら休む間もなく仕事だな。キツいぜ。


『ん?マジで行くのかよ。俺らそんな暇じゃねーじゃん。ねむてー』


マジありえねー。行きたくないんすけど。


『ここだな?なんか完全に隔離された山の中だ。あーあの頃を思い出すわ。自由なき少年院時代』


車で2時間程走らせた山の中に立つ寺にたどり着いたが完全に下界とは違う世界のようだ。民家もほぼなく人っ子一人見当たらないと言うか見なかった。


『大輔!ヤバイ!ここらへんコンビニ1つねーじゃん!俺帰りたい!』


無理!マジ無理だ!まさか過ぎるだろ!


『ここまで来たんだ!やるしかねーだろ!明日の昼過ぎまでの我慢だ。少年院に比べりゃマシだよ。あっ!あの!すいません!今日お世話になります渡部大輔です!よろしくお願いします!』


住職っつうの?よく暮らしてんな。買い物もどんだけ時間かけていくんだよ。


『高見慶太郎です。よろしくお願いします』


本当はお願いしたくないんすけどね。


『よく来たな!中に入りなさい。とりあえず君たちが寝る部屋はここだから荷物を置いて本堂へ来なさい』


『はい!』


あーこれから始まるんだな。自由なき少年院生活リターンズだ。まあたかだか1泊2日だ。半年も入ってた俺らだから余裕だろ。


『はーい。つうかマジ嫌だ!何この狭い部屋?ベッドねーじゃん!』


もうなんなの?俺はなんでこんなとこに来たの?普通に仕事いっぱいあって忙しいんだよ。


『バカ!あるわけねーだろ!寺だぞ!慶太郎!修行にきたんだ!明日の昼までの我慢だ!早く行くぞ!』


『なんで?意味わかんねーよ。なんで俺がこんなとこで修行しなきゃいけないんだよ。コンビニがねーってありえねーだろ!つうか店一軒見当たらなかったぞ。酒も買ってきてねーよ!』


あーコンビニねーなら先に教えとけよ。買って来たら良かった。


『うるせーよ!早く来い!少年院に入れられたと思え。半年も入ってたんだ。1泊ぐらいどうってことねーだろ』


『マジかよ。なんか罪を犯しましたっけ?諦めがつかねーんだけど』


俺達は水樹さんの紹介で精神修行としてなかば無理やりだが寺で修行した。19歳になってもみじも枯れ落ちたもう冬が近づく秋も終盤を迎えており山の中では朝晩は冷え込むような場所だった。そこで住職の説法と言う名の説教を本堂の床で正座をして聞き滝に打たれるよう言われて俺と慶太郎は逃げ出したい気持ちでいっぱいだったな。水はかなり冷たいと言うより痛いと言う方が正解だ。こりゃ気合い入りますよ水樹先輩。俺達に素晴らしい経験をさせて頂きありがとうございます。10代最後の年今まで甘ったれていた根性を1泊2日で叩き直せるとは思いませんが貴重な体験である事に違いありません。滝に打たれ座禅を組み写経をして住職がお経を読んでいる間俺達も正座をして渡された勤行本に書かれた見慣れない文字をたどたどしく読みあげた。食事は質素な物でありまだまだ食べ盛りの俺達は満たされてはいなかったが食う事に困っていたあの頃を思い出し今どれほど俺達が恵まれた生活をさせてもらえているのか改めて感じる事が出来た。結城壮一郎さん!俺は来年二十歳になります。大人の仲間入りです。今ようやく光りが見えてきて生きる為に始めたホストですが仕事にもやりがいを感じてきています。慶太郎と協力して店を続けていけるだけ続けたいと思います。もうあなたの顔をわからないかも知れないっすね。俺だって随分変わりましたよ。身長だって174センチです。慶太郎の方が数センチ高いですけどたぶんあなたも俺達ぐらいの身長でしたよね?11歳の俺はあなたを見上げていましたが今なら同じぐらいの目線だと思います。ようやく大人になる俺ともう1度星空の下で語り合いましょうよ。今度は飲みながら語れますよ。俺は二十歳になるんだから堂々と飲めます。


『大輔!見て!ちょー星綺麗!さすが山の中だね!』


ここに来て得たのは星が綺麗と感じる心と星を綺麗に見せる自然の偉大さだな。あとはたいした教えはない。坊主の説教もありふれた道徳を語ってるだけじゃねーか。そんなもんで空には繋がらねーよ。


『本当だ。ヤバイな。都会の星空とは比べものにならねーじゃん。慶太郎!いい経験出来たな!』


マジ綺麗だ。結城さん!あなたが語ってくれた方が俺の心にすうっと入ってきたのを強く感じる事が出来ました。俺達より人生経験が豊富で何年も修行を続け俺達より偉いんでしょうけど俺には住職の言葉はまったく心に届きませんでした。でも経験した事は無駄だとは思いません。


『あー。キツイけどね。俺座禅でめっちゃ叩かれたっつうの。俺の集中力はハンパねーはずなんだけどな』


座禅は内観するためだろ?俺は壮ちゃんから尻叩かれて泣かされたあとに毎回反省としてやらされてきたっつうの。わざわざ寺でやる必要はねーよ。自問自答はいつだってどこででも出来る。


『お前が余計な事を考えてるからだろ。無心にならなきゃいけねーのに集中しようとすることがすでに無心から離れてんじゃねーのか?どうせ仕事の事を考えてたんだろ』


『そうっすね。無心って深いね。それにしても綺麗だ。俺青い空に向かっては語ってきたけど夜空には語りかけてこなかったな。こんな星空に語るのも悪くないね』


『あー。お前のもう1人の親父がきっと見てるよ。慶太郎!頑張ろうな』


『うん。そうですね』


綺麗な星空の下で親友慶太郎と語り合った10代最後の年はたくさんの光りが見えてきそうな気がしました。こんな星空をあなたにも見てほしいです。結城壮一郎さん!それでも今俺達が見ている夜空とあなたが見上げているかも知れない夜空は繋がっていますよね。

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