俺の人生14
俺は二十歳を過ぎ成人のお祝いだと慶太郎から貰った結城壮一郎さんと慶太郎が写った写真を店のデスクに飾っている。そして写真を眺めてはあなたに語りたくなります。もちろん夜空の星を見ていてもですけどね。結城さん!俺達は今年21歳になりますよ。店はなんとか順調です。慶太郎の会社の方もうまくいっているみたいですしね。ただハンパなく俺も慶太郎も忙しいです。ありがたい事なんですけど。慶太郎は本当に努力してきました。俺はあいつの努力には勝てませんよ。あなたが躾そして教えてきて事なんすよね?だからあいつは努力を怠りません。あいつを見て俺も努力が出来ます。頑張れるんす。俺達はまだ生きていけそうです。そんな時事務所で仕事をする俺の元に弟雄輔が顔を出した。
『兄貴!久しぶり!』
『おう!雄輔!今日は休みか?』
俺と同じく荒れた雄輔も18歳になりホストをやりながらようやく落ち着いてきた。お前が1番自由を奪われる世界に長くいたな。悪かった。
『うん!店はどう?俺はまあまあやっと稼げるようになったし兄貴からお小遣いを貰う必要もなくなったよ』
店のナンバー2だ。母ちゃんにだってお小遣いもやれる。迷惑かけたからな。
『そうか。お前ももう今年19歳になるんだからな。そろそろ自立してもらわなきゃ困るよ』
二十歳までは面倒見てやるけどそれまでに自分で稼げるようになれと俺は雄輔に他店を紹介した。俺達の店では甘えが出ると思ったからだ。慶太郎は反対していたけどな。
『兄貴は母ちゃんに会ってる?』
『いや会ってねーよ。まあ会う暇もないからな。金は振り込んでるし生活には困ってねーだろ。お前はたまには帰ってるのか?』
俺は16歳からホストをやり18歳の頃には十分な稼ぎがあったから迷惑をかけた母ちゃんにその頃から金を毎月振り込んでいる。ガキの頃にも言ってただろ。大人になって働くようになったら利子つけて返せってな。振り込み始めた頃はクソ女にこれで世話になった義理が果たせるし何も文句は言わせねーと思いながら振り込んでいたが今は違うぞ母ちゃん。俺を生んでくれた母ちゃんに感謝の想いで振り込ませてもらっている。ようやくあなたに感謝出来るまでになったんだ。それを教えてくれたのが結城壮一郎さんて言う俺が憧れた人なんだよ。ガキの頃に教わった時には全然わからなかったし働き出してもわかっていなかったんだ。そういう意味ではいくら18歳で自立した生活をしていたと言っても所詮ガキだった。やっぱ俺達が変わり始めたのはあの日慶太郎と2人きりで結城さんの墓の前でやった二十歳の成人式だろうな。まだまだ俺はこれからたくさんの事を理解していけるように頑張らなきゃいけない。
『まあたまにね。母ちゃんにも迷惑かけたから。相変わらず元気そうだったよ。男もいるみたいだったし』
『そうか。まあ元気ならいいじゃねーか』
『兄貴!俺にも店の経営を教えてよ。俺はいつまでよその店でホストやるわけ?俺も兄貴みたいに店を回したい』
俺も兄貴みてーになりてーんだよ!
『最低3年はよそで働いて来い。お前はまだ1年目だろ。2回も年少入って出てきたお前を食わしてきたのは俺だ。最近やっと一人暮らし出来るようになったばかりじゃねーか。あと2年やって自分で充分食えていける状態が続けられれば考える。甘い世界じゃない。お前が続くかもまだわからないんだ。もう大人になれ雄輔!二度とバカな事はやめとけ。お前が苦しむだけだ。お前が道をはずれたのは俺にも責任があると思ってるよ。悪いな。でも自分で乗り越えてこい!俺も16歳からのたれ死ぬ覚悟をしながら頑張ってきたんだ』
本当に俺は慶太郎を殺して俺も死のうとまで考えたぐらい暗闇から光りを見つけたんだ。よく生きていられたと今なら我ながら思うよ。
『年少から出てきて兄貴には世話になったからこそ俺も早く店を回せるようになりたいんだよ!ナンバーワンにはまだなれてないけどナンバー2として充分な稼ぎはあるんだ!』
なんでだよ!慶太郎さんは俺に店を任せてくれるって言ってる。だから俺は頑張ってんだよ!兄貴と慶太郎さんはいつも俺を守ってくれたし今だって守られてんだろ?俺だってもう兄貴達に守られてばっかじゃなく役に立ちたいんだよ!
『だからあと2年やれたら考えるって言ってるだろ!もう少し頑張ってこい!それにホストじゃなきゃダメって事はないし他にやりたい事が見つかれば俺も協力出来る事はするぞ』
お前もしつこいな。今年が2年目だ。ここでダメならお前はダメだろ。他の道を探せ。その店でナンバーワンぐらいになれ。ナンバーワンにならなきゃナンバーワンになった奴の重圧もわからねーだろ。ただ嬉しいだけじゃねーんだぞ。
『相変わらず俺に厳しいじゃん』
『何事も経験が大事だし3年間お前が続くかどうかなんてお前次第なんだからな。母ちゃんにもう心配かけないよう大人になれ』
『わかったよ!』
雄輔は高校にもいかずと言うより行ける高校もなく16歳でまた少年院へ送られていて17歳になって出てきた雄輔は働く事もなくダラダラと過ごしていた雄輔にホストの仕事を紹介したのは俺だ。18歳になる前にようやくホストとして働きだした。俺は雄輔が食えるようになるまで金の援助をしてきてやったがこいつの為にももっと経験を積み甘くはない世界で生き残れる力をつけてほしかった。俺達は食う事に困っていた時代があるんだ。だから何があっても強く生きろ。お前にロクな見本を見せてこなかった中学時代の俺は本当に悪いと思ってるよ。許せ雄輔。でもあの時の俺達は弱すぎてわけのわからない思春期のパワーに完全に飲み込まれていたんだ。そしてお前も同じだろ。雄輔!でもいつまでも逃げてられねーしそれは単なる甘えなんだよ。
『大輔さん!おはようございます!』
『おう!おはよう!圭太!便所掃除から始めようか。しっかり綺麗に磨けよ』
新人の圭太もまだ18歳だ。お前もこれからだよ。甘くない世界だからな。まあどこの世界も生きるのに甘いところなんてねーんだろうと俺は思う。自分次第なんだよ。何事もな。
『はい!』
今月はたいしたイベントもねーしきついかもな。詩音の誕生日ぐらいか。まあ来月は慶太郎の誕生日だからしっかり稼いでもらうぞ慶太郎。お前のお人好しで無駄に人件費かかってるんだからな。結城さん!慶太郎はどうしてあんなに誕生日を嫌がるんですか?あいつに何があったんですか?俺もホストの仕事をするようになり大事な稼ぎ時だって事を知りました。だから慶太郎の誕生日を知ったのは17歳の誕生日を迎える時に初めてあいつの誕生日を知ったんです。男同士っすからね。誕生日がいつだとか祝うとか興味なかったわけです。17歳の誕生日が来た日に俺は初めておめでとうと言ったことがあります。でも慶太郎は鑑別所から出てきた頃の鋭い目つきで俺におめでとうなんて二度と言うな!お前からそんな言葉を聞きたくないと今にも殴りかかってきそうな勢いでとても慶太郎にとって喜ばしい事ではないと言う事だけは強く伝わってきました。俺らも別にたいして嬉しいとかって気持ちはないですけど哀しく苦しい事でもないしムキになる事でもないただの誕生日があいつにとっては苦痛であると言う事だけはわかったんです。それから俺があいつにおめでとうと言う事はありません。17歳の誕生日に1度言ったきりです。それからはただの仕事であると言う割り切りで稼ぎ時だぞと言うだけですよ。俺達と出逢う14歳までに何かがあったんですよね?結城さん!あなたは知っているんでしょ?俺は今年もあいつにおめでとうは言いません。あなたと星空の下で語れたならばあいつの苦しみの原因を知る事が出来るんでしょうけどあなたが居れば慶太郎はあそこまで苦しんでいないでしょうから俺の出番はないっすよね。まだ俺にはあいつを救う力は二十歳を過ぎてもありません。いつか慶太郎が笑う日が来るんですか?俺本当にあいつが心底笑う所なんて見た事がないっすよ。もうあいつと共に過ごして今年7年目になるんすけどね。あなたと慶太郎が写っている写真にも笑顔はないですね。どうしてですか?結城さん!俺にはわかりませんよ。
『おはようございます!大輔さん!』
『おう!詩音おはよう!今日もしっかり稼いでくれよ』
トライアンフのナンバーワンホストは詩音だ。でもお前ちょっとヤバイぞ。そろそろ抜かれるかも知れねーよ。傲慢になりすぎだ。
『はい!頑張りますよ!』
『大輔さん!便所掃除終わりました。チェックお願いします!』
『圭太!もう一回やり直せ。どこがダメなのか自分で考えろ』
店のトイレって大事なんだよ。トイレが汚ねー店はだいたい潰れてる。それ程重要だよ。まぁーお前にはまだわかんねーだろうけどな。とにかく磨きまくれ。トイレを磨くのは自分を磨く作業に似ているんだよ。
『はい!すいません!』
えー!どこがダメかわかんねーんすけど。
『詩音!今日新しい子が入るから見本みせてくれよ!』
『はい!わかりました!大輔さん!俺今日ネクタイちょっとヤバイっすか?女から貰ったんすけどダサくないっす?ちょっと俺に合ってないような感じっすよね?』
あーやっぱぜってーダセーよ。テンション上がんねーわ。
『まあいいんじゃねーの。それよりユキヤの指導もしっかりしてくれよ!接客が粗いぞ』
『はい!そうっすね。ちゃんと言っときます!』
後輩の指導もちゃんとやってくれよ。それより慶太郎の彼女である千佳は大丈夫かな?最近すっかり自信を無くしてしまってるようなんだけど。恋人でありながら恋人の誕生日も祝えないんだもんな。祝うどころかおめでとうの一言も言えない。なんだかお互い気を遣いすぎているような感じだ。悪いな千佳。俺は力になれそうにないよ。俺だってあいつの過去はわからねーんだからな。ただ言える事は慶太郎が本気になり大事にしている女はお前だけだよ。慶太郎がここまで本気になった事は1度もない。特定の女は作らないなんて生意気な事を言ってた中学時代から千佳と付き合うまでは本当にその日限りか長くてもひと月持つか持たないかだったし冷たく接して女が離れていくのを待っていた。そりゃ本気じゃないからめんどくせーんだろう。でもお前には違う顔を見せるよな。それに傷つけたくない女だって言ってるぜ。千佳!慶太郎には時間が必要なのかもしれねーよ。時間が解決してくれるものなのかそんなことで解決できるものなのかなんて確証はねーけどそれなりに俺達もこれからどんどん大人になっていくだけなんだからあいつも不安定な10代の心とは違ってくるだろう。そう思いたいんだ。だから千佳にとっても今が試練てやつか?逃げても一緒なんだと思うぜ。また同じ壁にぶつかるだけだ。頑張れよ。




