第9話 マリーはブルー
今日の私はとてもブルーだわ。
何がって? そんなの何でもいいじゃない。
「この前の意外に活気のあった村とは打って変わって、ここは長閑よね。いかにも農村て感じだわ。活気に溢れてないのも重要ポイントよね?」
「本当だな。見事な田園風景だ」
「芽依、こういう景色大好きだよー」
私達がいかにも農道といった感じの道を進んでいくと一人の農民が数名の役人に連れ去られようとしていた。
「お許しください。ほんの出来心だったんです」
「うるさい。さっさと来い」
この状況に小百合が慌てて役人に話しかける。
「どうしたんですか?」
「此奴、自宅でこっそりコーヒーを飲んでおったのだ」
「コーヒーを飲んだらダメなんですか?」
「この地域では贅沢は許されない。ダメに決まっている」
「コーヒーが贅沢?」
「当たり前だ。そんなもの買う金があったら税をもっと払うのが決まりだ」
「マリー、いよいよ出番ね。あなたの大好きなシチュエーションよ」
「別にいいじゃない。決まりを破ったら捕まるのは世の法則よ。私には興味ないわ」
「え?」
お供の3人が私を凝視している。
何? 私何か変なこと言った?
「ちょっとどうしちゃったのよ? あなたが一番燃える場面じゃない」
農民は無情にも私たちの前から連れ去られて行った。
「マリー、何か変じゃない? いつものあなたじゃないわ」
「今日の私はとても落ち込んでるの。ほっといてちょうだい」
「ええーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「どれだけ驚くのよ!」
「だってマリーが落ち込むなんて、ありえないわ!」
「小百合、あなたの処刑方法はあなた自身に選ばせてあげる。それが私にできるせめてもの情けよ」
「どうしたのマリーさん? もしかして恋煩い? この前の村にイケメンのお兄さんもいたし」
「私は四郎一筋よ!」
四郎は何故かそっぽを向く。きっと照れてるのね?
その時、ある農家から大きな声が聞こえてきた。
「それを持っていかれたら、今日食べる物もありません。どうかお許しを」
「マリー、何とかしないと!」
「何を?」
「何をって? この状況に決まってるじゃない! 農家の人が悪政に苦しんでいるわ。助けなきゃ」
小百合が役人を止めるべく声をかけに行った。
「何を騒いでいるのですか?」
「こいつが米を隠し持ってやがったんだ」
「もうこの家には何も食べるものがありません。それを持っていかれると家族全員、飢え死にしてしまいます」
「ええい、ただでさえ税を穫れ高の80パーセントにしてやっているというのに、それが払えないだと?」
「それはちょっと酷すぎませんか? マリーなんか言ってやってよ」
「それは税を払わないの方がいけないわ」
「そんなわけないでしょ!」
「一体何を落ち込んでるわけ?」
「ちょっとしたミスをしちゃったのよ」
「ミスって何よ?」
「この前行った大きな街で」
「あの大都会の街ね」
「異世界らしい光景に『からくり人形』を入れてしまったのよ。からくり人形は異世界っぽくないわよね?」
「そんな下らないことで悩んでたんかーい!」
お供の3人が大声でツッコム中、また一人新たな農民が連れ去られて行くのであった。




