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第10話 天空の町

 私達の目の前には断崖絶壁が聳え立っていた。

「さあ、これを登るわよ」

「冗談でしょう? この絶壁ほぼ垂直じゃない。こんなのプロの登山家でも無理よ」

「この崖の上には我が国で一番標高の高い町があるわ。そこが今日の目的地よ」


「何でそんな町に行かなくちゃいけないのよ!」

「誰も行かない町だからよ。管理の目が行き届かない場所ほど危険だわ。密かに下克上を狙ってるかもしれないじゃない」

「こんな不便な所にある町なら攻めてくることはないでしょう」

「つべこべ言わないで登った登った」


 崖の途中まで来ると小百合が根を上げ始めた。情けないわね。

「もうダメ。腕に力が入らなくなってきたわ」

「足元をしっかり見るのよ」

「ひえー!」

「あっ! ごめんなさい。下を見たら恐怖心が増すんだったわ」

「あんたわざとやってるでしょ!」


「ここからが危険な場所よ。崖の勾配ががさらに急になってくるわ」

「落ちたら完全にアウトね」

 ふふふ。小百合が弱音を吐いているわ。いい気味ね。

「そうよ。明日の太陽を拝みたければ必死で登ることね」


 さて、ここらで。

みんなの先頭を登っていた私は突然崖から手を離しわざと落下した。

「マリー!」

小百合が落ちてゆく私を見ながら叫ぶ。

「私は大丈夫よ。黒魔術で空中に浮くことができるから」

私は小百合の背後をわざとらしくゆっくりと旋回した。

「どういうことよ!」


「頑張れ。落っこちたら四郎と結婚できなくてよ」

「まさかわざとこの崖を登らせようとしてないわよね!」

「そんなことするわけないじゃない」

私の口元は思わず緩んでしまう。

「意地でも生き延びてやるわ!」


 ズル。その時四郎が足を踏み外しかけた。

「大丈夫!? あなたが落ちたら大変だわ」

私が四郎の背中めがけて腕を振ると、四郎の背中に天使の羽が生えた。

「これで崖から落ちても大丈夫ね」

「その羽、私達にも生やしなさいよ」

「こめーん。これは一つしかないの」

「嘘つきなさい!」


 鷲の三倍はあろうかという大きな鳥が私達を睨みながらゆっくりと飛んでいる。

「この鳥は肉食よ。襲われたら大変よ」

「キヤー! こっち来ないで!」

大きな鳥が小百合のすぐ近くを飛んで行く。

「私に任せなさい。鳥が来ないお守りを付けてあげるわ」


 小百合と芽依の腰の周りに肉の塊が現れた。

「何を付けてるのよ! こんな物付けたら鳥に襲われるじゃない!」

二匹の大きな鳥が小百合と芽依に急接近したかと思うと2人を鷲掴みにして空高く舞い上がっていった。

「マリー! 絶対に化けて出てやるんだからー!」


 大きな鳥は山の頂上まで飛ぶと小百合と芽依を下ろして、猫のようにスリスリと甘えてきた。

「え? 助かったの? 鳥さんありがとう」

小百合は思わず大きな鳥を抱きしめる。


「何でこうなるのよ!」

「それはこちらの台詞よ。明らかに殺意があったわよね?」

「だって、あなたたちがいなくなれば、四郎と2人でラブラブ世直し旅ができることに気付いちゃったんだから仕方ないじゃない」

小百合は目を閉じて拳を握りしめ、莫大なオーラを発しながら言った。

「あなたが次期国王じゃなかったらこの場で抹殺していたところよ」

「ところで芽依。今回は一言も喋ってないわね。どうしたのよ」

「芽依はね。芽依はね。高所恐怖症なのよー!!!」

芽依の魂の叫びは地球の裏側まで届いたそうな。


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