第11話 国技
「大きなスタジアムね-」
「この街のスタジアムは国内一よ。横にはこれまた国内一の体育館もあるわ。よく全国大会や国際大会が行われるのでも有名よ」
私たちがスタジアムの周りを歩いていると大きな垂れ幕を見つけた。
『ちゃぶ台返し全国大会決勝』
「うわー、ちゃぶ台返しの全国大会決勝があるんだ。見たいわねぇ」
「何よ。ちゃぶ台返しって?」
「ちゃぶ台も知らないの?」
「ちゃぶ台は知ってるわよ。ちゃぶ台返しの決勝って何か聞いてるのよ」
「ちゃぶ台に乗った茶碗や皿をどれだけ広範囲に飛ばせるかを競う競技よ。距離や面積それに散らばり方の芸術点で勝敗が決まるの。ああ、あと『こんな飯が食えるかー!』の声の良さも得点に影響するわ」
「何か社会問題になりそうな競技ね」
「あら? ちゃぶ台ってあなたの国から来た物よ。何で知らないのよ」
「ちゃぶ台の使い道を間違ってるからよ!」
更にもっと凄いポスターを見つけてしまった。
『テイクロ決勝トーナメント本日開催!』
「えー! テイクロもやるんだー。いいなー」
「今度は何よ。また変なスポーツ?」
「変なスポーツとは何よ。テイクロは昔からある黒の国の国技よ」
「一応聞いてあげるけどテイクロってどんな競技なの?」
「通常は八対八で行う団体戦よ。早く敵の大将の服を全て脱がすことができたら勝ちよ」「こちらの方が社会問題になりそうな競技だったわ」
「女子の競技は無観客で行うことが多いわ」
「当たり前じゃない!」
「テレビ放送もあまりされないのよね」
「ていうか、放送されることもあるんかい!」
「もちろんよ。でもクライマックスになるとぼかしが多くてよく見えないのが残念なのよねぇ」
私はスタジアムを見つめてぼそりと言った。
「見たいけど、どう考えても今からじゃチケットが取れないわよね」
「今日は無観客じゃないのね」
小百合が蔑んだ目で私を見ている。
「仕方ないわね。王家の紋章を使うか」
「ダメよ! そんなことに使うなんて信じられないわ」
「そうだよ! それに芽依は見たくないし!」
「四郎は反対しないみたいね。女子の試合もあるみたいだけど」
「も、も、も、もちろん・・・・見たく・・・・ない」
「声が小さいわね」
「四郎君!」
「お兄ちゃん!」
私が諦めて帰ろうとしたとき大事件が起こってしまった。
「ちょっと嘘でしょう?」
男女7人が四郎を見るなり叫んだのだ。
「この人クロッシュにそっくりじゃない?」
「ああ、本当だ。これほど似てる人を見たことないよ」
何やら勝手に盛り上がっているわね。
「私たちはこの大会に参加する予定のチームよ。でも、メンバーの一人が遅刻してまだ来てないの。せっかく全国大会に出場できたというのに、このままでは不戦敗になってしまうわ。ここまで来て戦わずして帰るなんて嫌よ。あなた替え玉で試合に出てくれない?」
「ええー! だ、ダメだ! それって違反行為だろ?」
「もちろんよ。でもこれだけ似ていればきっとばれないわ」
「断る!」
「お願い。ただ立ってるだけでいいから」
四郎が困ってるわ。ここは私が止めてやらないといけないわね?
「ちょっといいかしら? 彼は私のフィアンセよ。勝手に話を進めないでほしいわ」
「もし彼が出てくれたら、あなたたちは特等席で試合が見られるわよ」
「四郎、出なさい」
「マリー!」
小百合が大きな声で怒鳴っている。
こうして四郎は見ず知らずの7人組に連行されていくのであった。
「こら、離せ!」
「私たちの出るのは男女混合戦よ。相手の大将は女性だけどテレビ放送もするみたいだから絶対にニヤけた顔はしないでよね」
「嫌だーーーーー!!!」
これはこれで複雑な心境だわ。




