第四話
第四話
調査は、継続していた。
三週間の時点で得られた情報に加え、さらに詳細なデータが積み上がっていく。
スクリーンには、新たな解析結果が表示されていた。
「追加報告を行います」
セレスの声が響く。
「どうぞ」
椅子に浅く座りながら、レンは軽く応じる。
「言語解析の追加結果を報告」
「まだ何かあるのか?」
「はい。複数地域の言語データを統合解析した結果、本大陸においては、ほぼ共通の言語体系が使用されていることを確認しました」
「……マジか」
少しだけ眉が上がる。
「地域差は存在しますが、日常会話レベルでの意思疎通に支障はありません」
「それは助かるな」
最悪のケース――言葉が通じない状況は避けられそうだった。
「続けます」
セレスがそのまま報告を続ける。
「各地域における社会構造の詳細解析を完了」
「ほう」
「特定の技能や戦闘能力を有する個人群の存在を確認」
スクリーンに映像が出る。
武装した人間たち。
剣、槍、弓。
明らかに、戦うための装備だった。
「……兵士か?」
「一部は該当します。ただし、それとは異なる集団の存在を確認」
「異なる?」
「はい」
わずかな間。
「彼らは、特定の組織に所属し、依頼を受注することで活動しています」
「依頼?」
「魔物の討伐、護衛、資源採取など、多岐にわたります」
さらに映像が切り替わる。
巨大な獣。
戦う人間。
報酬らしき物資の受け渡し。
「……なんだそれ」
思わず口に出る。
「当該組織は、便宜上『ギルド』と分類」
「ギルド、ねえ」
レンは少し身を乗り出す。
「所属個人は“冒険者”と呼称される傾向を確認」
「……冒険者」
その言葉を、軽く繰り返す。
少しだけ、口元が緩んだ。
「いいな、それ」
「加えて、冒険者内部には小規模集団の存在を確認」
「集団?」
「はい。固定メンバーによる行動単位です」
スクリーンに複数人の冒険者たちが映る。
討伐。
探索。
物資運搬。
役割分担をしながら動いていた。
「名称は地域差がありますが、“クラン”と呼称される傾向があります」
「……パーティみたいなもんか」
「近似します」
レンはスクリーンを眺める。
単独行動の限界は、嫌というほど知っていた。
アーク・セレスティアは一人で動かせる。
だが、それはセレスと艦の支援があってこそだ。
現地で動くなら、人手がある方が早い。
「クラン単位で依頼を受注するケースも多数確認」
「へぇ」
「一定規模以上のクランは、街や国家に対する発言力を持つ傾向があります」
「……なるほどな」
レンは椅子の背にもたれた。
戦える人間。
情報。
拠点。
人脈。
この世界で長く動くなら、どれも必要になる。
「……悪くない」
小さく呟く。
「何についてでしょうか」
「クラン」
レンはスクリーンへ視線を向けた。
「この世界で生きていくなら、立場はあった方がいい」
「肯定します」
「一人で動き続けるより、現地に根を張った方が楽だ」
命令されるつもりはない。
だが、孤立する気もなかった。
「なら」
レンは小さく息を吐く。
「まずはギルドに入る」
「情報収集を優先しますか」
「だな」
視線がわずかに細くなる。
「で、最終的には――自分で作る」
「クランを、ですか」
「その方が動きやすいだろ」
スクリーンには、街を行き交う冒険者たちが映っている。
未知の世界。
未知の文明。
だが、その中にも“居場所”を作る方法はあるらしい。
「……せっかくだ」
レンは立ち上がる。
「冒険者ってやつ、やってみるか」




