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第三話

第三話


三週間が経過した。


 ドローンは常時複数が稼働し、地表各地の映像とデータを収集し続けていた。


 スクリーンには、整理された情報が並んでいる。


 地形、集落、移動経路、活動パターン。


 そして――言語。


「艦長、言語解析、完了しました」


 セレスの声が静かに響く。


「発音体系および文法構造の解析を終了。日常会話レベルでの理解および再現が可能です」


「……助かる」


 短く息を吐く。


 スクリーンが切り替わる。


 各地の情報が統合されたデータが表示される。


「観測結果を報告します」


「頼む」


「本大陸には複数の政治単位が存在。王を頂点とする統治形態が多数確認されました」


「……王政か」


「はい。一部地域では分割統治、または軍事力を基盤とした支配構造も確認されています」


「加えて、複数の宗教体系が存在。特定の神格または概念を中心とした信仰が社会構造に影響を及ぼしています」


 スクリーンに映像が流れる。


 祈りを捧げる人々。


 巨大な建造物。


「交易も確認。地域間で物資の流通が行われています」


 断片的だった情報が、少しずつ形になってきている。


「セレス」


「はい」


「この星系から出る手段は」


 わずかな間。


「現時点で、外部への安定航路は確認されていません」


「……確率は?」


「現在までの観測データおよび特異宙域の性質から算出」


 ほんのわずか、処理の間。


「帰還成功確率は――極めて低い値となります」


「具体的に」


「約、数十億分の一未満と推定されます」


「……」


 言葉が出ない。


 その数字に、意味はほとんどない。


 ただ――


 現実だけは、はっきりしている。


「……恒星間量子ロトくじでも、そんな確率ねえぞ」


 小さく息を吐く。


「他の手段は?」


「現時点では存在しません」


 即答だった。


 どうやら俺はこの星に骨を埋める覚悟をしなければならないことを悟ってしまった。


 小さく息を吐く。


 スクリーンには、この世界の映像が流れている。


 人がいて、街があって、生活がある。


「……まあ、何もない場所じゃないだけマシなのか?」


 ぽつりと呟く。


 資源もある。水もある。人もいる。


 最低限、生きる条件は揃っている。


「方針を変更する」


「指示を」


「この世界での生存を前提に動く」


「了解」


 視線を巡らせる。


 街、農地、交易路。


 そして、人の流れ。


「……まずは、場所だな」


 どこに入るか。


 どこなら安全か。


 どこなら――干渉されずに済むか。


「現地に拠点を確保する」


「候補地の選定を開始します」


「それと」


 わずかに間を置く。


「……ある程度の立場も必要だ」


「具体的には」


「まあ、その辺はおいおいだな」


 だが、方向は見えている。


「少なくとも、好きに動けるだけの余裕は欲しい」


「了解」


 ドローンは、静かに空を巡る。


 この世界を、変わらず記録しながら。

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