23・予想外すぎるわ……
孤児院に到着すると、たくさんの人たちが出迎えをしてくれた。
神官たちがずらりと並び、その後ろには多くの子どもたち。
目をキラキラとさせて小さな手を振る子、興味津々にこちらを見つめる子、不安そうに神官にべったりとくっつく子。
そして気になったのは、その中に混ざる、見慣れない肌の色。
褐色の肌の子どもたちが、思っていたよりずっと多い。
隣国サーシェの子たちだ。
サーシェは現在内乱の真っ最中で、この国が人道的支援として内乱孤児を受け入れることにしたという話は聞いていた。
けれど───こんなに、多いなんて。
心がずんと、少しだけ重くなる。
私が以前ここを訪れたのは、結婚してすぐの頃。
あの時とは、明らかに空気が違っていた。
そんな中、一人の神官が前に進み出る。────神官長だ。
「お忙しい中ご足労頂き、ありがとうございます。国王陛下、魔術師長様、それに────リーゼロッテ様」
……ああ、やっぱりそう来るのね。
一瞬だけ、間があった。
ほんのわずかだけれど、でも、分かる。
”王妃様”ではなく、”リーゼロッテ様”、と彼は言った。
つまり──そういうことだ。
私を王妃だと認めていない、過激聖女様派。
……まあ、いいわ。
今さら傷つくほど、今に始まったことではないもの。
聖女ローラとの結婚を推す者がいることも、私を王妃として認めていない人間がいることも、全部、嫌というほど知っている。
だから、いつも通り微笑めばいい。
そうしたら時間はそのまま流れていく。
そう思った、その時だった。
「リーゼロッテは、今お前が口にした、その国王陛下の妻なのだが?」
静かに放たれた言葉に、空気が凍った。
────セドリックだ。
「この教会の神官は、そんな当たり前のことも知らんのか?」
今、何て?
私は思わず勢いよく隣の夫を見上げた。
そこにはいつもの無表情──だけれど……確実に、怒気を含んでいるのがわかる。
その静かに漏れ出る怒りに、神官長の顔色が一瞬で変わった。
「も、申し訳ございませんっ!! わ、私としたことが、とんだ無礼を……!!」
慌てて頭を下げる神官長の後ろで、神官たちもざわついている。
ぴりりと張りつめた空気に、子ども達も戸惑い視線を彷徨わせる。
……ちょっと待って。
ええと、これは────庇われている?
私が?
あの、セドリックに?
………………え、本当に?
驚きすぎて、思考が追いつかない。
だってこの人、普段は必要最低限しか喋らないし、感情もあまり表に出さないし、夫婦の会話も「一応」レベルなのに。
そんな人が、こんなはっきりと、しかも公の場で……。
……どういう風の吹き回し?
「リーゼロッテ」
「……は、はい!?」
突然名前を呼ばれて、思わず変な声が出た。
「行くぞ」
「あ、は、はいっ」
さっきまでのことなど特に何でもないことのように、特に変わった様子はないセドリック。
……もう、何なのよ……。
少しだけ頬が熱いのは、たぶん、気のせいではない。
……後で、少し後ろに控えてニヤニヤしているクレフに何を言われるか、考えたくないけれど。




