14・THE孫馬鹿
「で…………。クレフの転移だということは分かったが、アルフレット、それにルナマリア嬢、なぜここに?」
セドリックの容赦ない声が幼い二人に向かい、アルフレットはびくりと肩を震わせる。
それでも、その小さな手をぎゅっと握りしめて、きっ、と睨むかのように自分の父親を見上げた。
「だ、だって……お母様が心配だったんだもん……!!」
必死に絞り出したその言葉に、胸がきゅっとなる。
可愛い……っ!!
可愛すぎる……っ!!
何なのこの子!! 今すぐ抱きしめたいっ!! よしよししたいっ!!
思わず悶絶しながら抱きしめたくなるのを、両手で口元を押さえてどうにか堪えた私、えらい。
アルフレットの隣ではルナマリアも表情を変えることなくではあるものの、小さく頷いている。
きっと、アルフレットと同じ気持ちで来てくれたのよね。
あぁ……、もうだめだ。
尊い。
うちの息子とそのお嫁さん(予定)、尊すぎる。
胸の中で完全にメロメロになっている私とは対照的に、「危険なことは慎め」と、セドリックがぴしゃりと言い放つ。
「大体お前たちは、将来の自分達の役割について何も────」
ああ、始まった。
だけどセドリックが容赦ない説教モードに入りかけた、その時。
「アルフレットぉおおおおおお!!」
場の空気を一瞬でぶち壊す勢いの激しい声が響いた。
と同時に、アルフレットの小さな身体は大きな腕に攫われていった。
「お、おじい様……?」
「おぉおっ、覚えていてくれたのかっ!! よく来たアルフレットっ!! おじいちゃまは会いたかったぞぉおおっ!!」
……お父様。
いや、今はもう完全に“祖父”。ううん、おじいちゃまの顔だわ……。
お父様はさっきまでの不機嫌さはどこへやら、今はとろけそうなほどに緩み切った表情で、愛する孫をこれでもかと抱きしめ、頬ずりしそうな勢いで顔を寄せている。
完全に、ただの孫馬鹿だ。……知ってたけど。
思わず頬を引きつらせ隣を見ると、セドリックもわずかに眉をひそめている。
さすがに、この落差には思うところがあるらしい。
あぁでも、アルフレットが前にお父様に会ったのは2歳の時。
もしもの時のためにお父様の絵姿をアルフレットに見せて「これがおじい様よ」と”じじ教育”しておいてよかったわ。
これで「誰?」とか言われたら多分お父様、泣き崩れていたでしょうし……。
「あぁ……もう本当に、大きくなった。私は嬉しいぞ……。……アルフレット、それにルナマリア嬢。またゆっくりここに遊びに来るといい。いや、むしろぜひ来なさい。すぐにでも来なさい。……待っているぞ」
「え、あ、はい……!!」
アルフレットもルナマリアも、驚きながらもそう返事をして頭を下げる。
その様子を見て、さらに頬を緩ませるお父様。
…………完全に餌付けされた未来が見える。
「はは……」
そんな光景に、思わず口から乾いた笑いが零れた。
さっきまでの緊張感が、全てどこかへ吹き飛んでしまったみたい。
でも──うん、まあ、いいか。
アルフレットが楽しそうに笑っている。
ルナマリアも戸惑いながらも微笑んでいる。
その様子を見ていると、なんだか細かいことはどうでもよくなってくる。
……たとえ、隣でセドリックがまだ何か言いたげな顔をしていたとしても。
今日くらいはこのままでもいい、わよね?




