13・光の中から出てきたのは天使でした
結局、あの気まずいお茶会は、どこかふわふわとしたまま終わった。
ローラ様は最後まで落ち着かない様子で、私はますますこの方がわからなくなっただけの時間だったのだけれど……ようやく終わってくれて、ほっとしている自分がいる。
そして今。
私の前には再びお父様とお兄様、そしてセドリックがいる。
気まずいお茶会から解放されたら次はまたあの息苦しい空間に戻るのかと思うと何とも言えないけれど………………あれ?
どうしてかしら。
さっきまでの、あの張り詰めた空気が────ない?
完全に和やか、というわけではもちろんないのだけれど、少なくとも、今にも火花が散りそうな、いや、今にも剣が飛んできそうなあの緊張感は消えている。
一体さっきの間に何を話したのかしら……。
ちらりとセドリックを見るも、相変わらずの無表情で、何も語る気はなさそう。
一方でお父様は──。
「……ふん」
セドリックにはそっぽを向いたまま。
うん、やっぱり不愛想だ。安心した。いつものお父様だったわ。
まあ、そうよね。
自分の娘を妻に迎えておきながら、聖女様と仲睦まじいなんて噂まで立っているのだ。
しかもお父様は、貴族には珍しく何よりも家族を大切にする人。
そんなお父様にとって今の状況は、機嫌がよくなる理由なんて、1つもない。
それでも、先ほどよりは幾分かましになっているあたり────きっと何かしらの“話”はついたのだろう。
そう思った、その時だった。
――ふわり、と目の前の空間が白く光りはじめたではないか。
「……え?」
その淡く白い光は一瞬で視界を覆い尽くし、思わず私は反射的に目を細める。
な、なに!?
いったい何が起こって──っ。
「危ないっ!!」
戸惑う中、低い声とともにぐっと腕を引かれ、そのまま私は、気づけば、セドリックの胸の中に引き寄せられていた。
「え、あ……」
硬い胸板から、熱い程の体温が伝わってくる。
予想だにしていなかったぬくもりに、私の顔も厚く火照って、何と言っていいのかわからない。
だって誰が想像できる?
あのいつも私に素っ気ないセドリックが、私を守るように抱きしめている、だなんて。
だけど、そんなセドリックの奇行に驚いている暇もなく、光はやがてゆっくりと収まり、そこに二つの小さな影が立っていた。
「お母様!!」
聞き覚えのある、幼い高声。
その声のする方に視線を向け、私は大きく目を見開いた。
「アルフレット……?」
そこにいたのは間違いなく、私の息子────アルフレットだった。
そして、その隣には……。
「……ルナマリア?」
見覚えのある愛らしい少女が、同じようにきょろきょろと周囲を見渡していた。
まだ幼いはずの二人が、どうしてここに……。
理解が追いつかない。
「やっぱり!! お母様だぁっ!!」
私をはっきりと認めてから目をキラキラと輝かせるアルフレットに、今のこの現実が一気に押し寄せて、私はすかさずセドリックの腕の中から身を乗り出した。
「アルフレット、それにルナマリアも……。あなたたち、どうしてここに……!?」
いきなり光に包まれて、離れた場所にいるはずの子どもたちが現れるなんて、まるで────。
「……転移?」
その言葉に行きついた瞬間、浮かんできたのはうちの宮廷魔術師の顔。
「クレフか……」
私と同じ顔が浮かんできたのだろう、セドリックが苦々し気につぶやいた。




