12・恋敵と二人きりのお茶会とか拷問でしかない
……え、ちょっと待って。本当に?
気がつけば、私は過ごし慣れた応接室で、問題の人物と向かい合うように座っていた。
そう、私の目の前には、聖女様であるローラ様。
だけどさっきまであんなに賑やか(主にお父様とお兄様の圧で)だった空間が嘘みたいに、静まり返っている。
しん、と静まり返った中、私はじっと、用意された湯気の上がるカップを見つめ続けるだけ。
だって仕方がないじゃない。気まずいんだから。ものすごく。
いや、正確に言えば、私はそこまででもない。
多少は落ち着かないけれど、まぁ耐えられないほどではない。
問題は────。
「はわわ……はわわ……」
ローラ様の方。
この方、いったいどうしてあんなにソワソワしていらっしゃるのかしら?
カップに手を伸ばしては引っ込め、不審者の如く視線を泳がせてはまた下を向き、指先をもじもじと絡めるを繰り返している。
落ち着きがない、いや、もはやただの不審者……。
防御壁の修復でセドリックといた時はあんなに自然に会話していたのに──それが嘘のよう。
……ああ、なるほど
と、思わず心の中で乾いた笑いが漏れた。
これはきっと、私と“二人きり”だからだ。
間に心を許した人がいれば話せるのに、それがいない時に何を言えばいいのかわからなくなる────そういう類のものだろう。
加えて私たちの関係と言えば、世間的には恋敵みたいなものでしょうし。
とはいえ、このままでは本当に無言のまま時間が過ぎてしまうし、それはそれでさすがに居心地が悪いわね……。ここは私がしっかりしなければ……。
私はそっとカップを持ち上げ、一口だけ口をつけてから、意を決して口を開いた。
「ローラ様、今日は私の実家の領地のために、ありがとうございました」
そう私がお礼を告げた、その時だった。
「ふへぇっ!?」
変な声を挙げながら大きく跳ね上がるようにして、ローラ様の肩がびくんと跳ねた。
え、何?
私何か変なことを言ったかしら?
「あ、は、はいっ!! ど、どういたしましたっ!!」
妙な反応に首をかしげると、今度は顔を真っ赤にして、ものすごい勢いで返事が返ってきた。
えーっと…………。
どういたしましたって、何?
あまりにも予想外の返しに、私は思わずぱちぱちと瞬きをする。
……ええと……とりあえず、何でかわからないけれどパニックになっていることだけはわかったわ。
じっと見つめると、ローラ様はさらに視線をさまよわせ、耳まで赤くしている。
まるで、何かとんでもないことを言われたみたいな反応だけど、驚くなかれ。
私はただ、感謝を述べただけである。
「あの……ローラ様?」
首を傾げ恐る恐る呼びかけると、彼女はまたびくっと肩を揺らした。
……やっぱり、明らかにおかしい。
さっきまでの様子からは想像もつかないほど、挙動不審で……。
え、この方、本当に……あの“聖女ローラ様”でいらっしゃるのよね?
明るく元気で誰とも仲良くなれてずうずうしいほどにぐいぐいくる、あの。
王宮で見せる姿と、あまりにも違いすぎて、現実みがない。
「きょ………、今日はいい天気ですね!!!!」
「は?」
唐突すぎやしない?
しかも外は────。
視線を窓の外へ向けると、少し天気が崩れてきたのか、どんよりとした曇り空。
「曇ってる、わね」
「ぁ………………」
もう無理。
恋敵との二人きりのお茶会とか、気まずすぎてもはや拷問でしかないわ!!
3人とも~……早く帰って来て~……。




