11・気まずい帰省
聖女様による防御壁の修復を終えて、私の父と兄のいる実家──ラフレシス公爵家へ向かった。
門をくぐった瞬間、思わず全身の力がふっと緩んだ。
だって本当に久しぶりなんですもの。
ああ、帰ってきたんだなって、ふとそう思った。
王妃になってからというもの、こうして気兼ねなく戻れる機会なんてほとんどなかったし、王妃がどこか固定の家に入り浸るのはよろしくないものだから……。
「ようこそ王妃さ──いや……。おかえり、リーゼロッテ」
「っ……ただいま、戻りましたわ」
3年ぶりにお父様の声を聞いた瞬間、危うく泣きそうになったのは秘密だ。
隣にお兄様もいて、私に優しく微笑んでくれる。うん、変わらない。
大好きな家族たちそのままだ。
そんな柔らかい空気も束の間、次に私の隣に立つ人物にお父様たちが向けた視線は、明らかに私に向けたそれとは違うものだった。
「陛下、お久しぶりにございます」
「あぁ」
空気がピリッと張りつめるのがわかる。
その原因はきっと、私の隣にいるセドリックと、そのさらに隣にいる聖女────ローラ。
そしてお父様がゆっくり口を開いた。
「ここまでもしっかりと聞き及んでおりますとも。セドリック国王陛下と聖女様は、大変仲睦まじい、と」
ああもう、その言い方。完全に棘がある。
誰が聞いても、その噂についての苦言だというのがわかるほどの鋭い言葉。
だというのに当の本人はというと──。
「言わせておけばいい。噂は噂だ」
うん、……まったく気にしていない。
いつものことだけど、この人は本当にこういう場面でも平然としている。
本当、何を考えているのか……、私にもさっぱりだわ。
その返答を聞いて、お兄様のこめかみがぴくっと動いたのを、私は見逃さなかった。
あぁああああっ、お願いだから、ここで剣を抜いたりしないでね!?
ありがたいけれど、私のことは本当に気にしなくていいから!!
いのち、だいじに!!!!
心の中で必死にそう祈っていると、セドリックがふと真面目な顔になった。
「公爵。少し、三人で話がしたい」
三人――つまり、お父様とお兄様と、セドリック。
え、ちょっと待って。
ってことは────。
「リーゼロッテ、君はここでローラと待っていてくれ」
そうさらっと言われて、私はにっこり笑ったまま固まった。
「………………はい?」
え、これまさか………聖女様と、二人きり?
うそぉ……。




